第3章



 夕日で赤く染まる街並みをスバルはバスの中からなんとなく、みつめていた。
 この時間帯には、珍しくほとんど人が乗っていない。
「・・・・ちょっと、言いすぎかな」
 そう言いながら、G-ヴァイスを見つめる。
「ダークヴァルフ、いるか?」
クゥン・・。
 スバルの目の前に、手持ちサイズになったコスモ・シードの一体、ダークヴァルフがひょこりと現れた。
 子狼の姿になっている。
「―大丈夫だよ、心配しなくても」
 スバルの瞳が優しげになる。


オーストラリアマイクロソフト技術研究所」
 ここでは、世界中の様々な情報のデータやいろんな事に役立つパーソナル・コンピューターの製作などを授かっている。
 他の国々ともたまに共同でソフトを作ることがある。
 膨大な資料に囲まれた研究員の一人が、徹夜明けのせいか眠そうな目をして、
「・・うーん・・」
「お、マイケル、眠そうだな。コーヒーでも飲むか?」
 いかにも人のよさそうな印象を与える、ここの研究所で唯一の日本人の男性、皇 大祐はポンと軽くオランダ人のマイケルの肩を叩いた。
 皇 大祐はスバルの父親である。
「・・ああ、頼む」
「じゃあ、いれてくるな。ブラックでもいいよな」
「そういえば、君、再婚したんだって?しかも、年が離れた相手と」
「そうだけど、君に教えたっけ?」
「サイが教えてくれた」
 ・・・口が軽い・・。


「―勇牙、スバルはいつもあんな感じなのか?」
 と、ヴァルディアがG-ヴァイスを通して勇牙に気遣うように聞いてきた。
「・・いや、いつも、ぼーっとしてるよ。たまに毒舌だけど」
「・・・」
「あんな風にどなられたのは、初めてだな。あいつ、普段からあんまり自分の感情見せないし」
「高原君、サイダー、はい」
「あ、ああ。ありがとう、水瀬川」
「リュウトでいいよ。僕も勇牙って呼ぶし」
 リュウトが穏やかに安心させるような笑みを浮かべた。


 何とも、無駄に非計画に作られた都市だ・・。
 レッカーは、最初に前線基地の旗艦の艦長室から地球を見下ろした時、まず口についたのはそんな言葉だった。
 彼が最初に見た地球の風景は、オーストラリア大陸だった。
 日本と違うのは、スケールの大きさと、淀みのない澄みきった空気、そして四季がまるで逆であることだろう。
 無秩序に広がった水と、土。この星の連中はほうっておいているのだ。
 自然に合わせるようにして、残った土地に都市を切り開き、押し込むように住んでいる。
 レッカー達、ネオ人は、船の中で生まれ、人工的な町や自然の中で育ってきた。
 母星は、ある事により2度と帰ることが出来なくなってしまった。
 目に見えるものは全て何者かによって計画的に作られたものであり、意味のないものはなかった。
「―レッカー」
 背後の扉が開いて、3人聖騎士の一人ーアルテナが現れた。
 仮面をつけてるが、鋭い眼光。髪もツンツンと尖がっていて、身のこなし一つとっても決して警戒心を解か ず、周りにいる者に緊迫感を与える。
 どうみても、少年にしか見えないが・・。
 海賊の帽子をかぶり、セリュ―ジョンの軍服もきっちりときこなしている。
「アルテナ様!」
「コスモ・シードが見つかった。私の機体を出撃用意させろ。これから、出撃する」
「はっ」
 彼の機体の名は、セルシオ。
 汎用型で優れた機体で、勇者システムを兼用したものである。
「―・・アルテナ様、どうなされましたか?」
 アルテナの腕に取り付けられた腕時計型のG-ヴァイスからアルテナの勇者「セルシオ」の立体映像が現れ、主人に敬礼するような口調で慎みながら聞いた。
 ヴァルディアによく似たタイプだが、ヴァルディアより曲線が多くシャープなフォルム。右手には、敵に打ち込む武器がそなえつけられている。
「ヴァルディアが見つかったらしい」
「!ということは!!?」
「ああ、そうだ。あいつが見つかったと言うことは他の2機も目覚めている可能性があるということだ。エンディミオンのアレスと同じようにナ」
 アルテナがにやりと笑った。
「だが、その前にあの御方のためにコスモ・シードを集めなくては・・」
「グレン、シー、カルロス」
 彼が静かにその名を呼ぶと、三体のデビルがすっと現れた。
「何でしょうか?」
 意思をどうやらある程度もたらせているらしい。
「シーとカルロスはヴァルディアを私のとこに引きつけて来い。グレンは私と一緒に「オーストラリアシンクロソフトキ技術開発研究所」にいってコスモ・シードを捕らえに行く」
「ははは!我らにお任せ下さい!」
 三体とも敬礼のポーズを取り、さっそく行動に移った。
「・・・・・」
「ヴァルディアのパイロットか・・」
 彼は小さくそう言うと、転移してセルシオに搭乗した。


ビー、ビー、ビー!!

「!!佐東司令!レイ副官!オーストラリア支部から通信!デビルと未確認物体がオーストラリアシンクロソフト技術開発研究所に現れました!」
「それと、コスモ・シードの反応があります!おそらくそれが狙いです!」
「よしっ!セレスと青山にはヴァルディアのサポートに回ってもらう!今すぐ、あの3人を呼び給え!!」
 レイ副官がバッと手をかざし、次々と命令していく!
「長官はオーストラリア支部に今すぐ連絡してください!」
「隣の南岡地区にデビルが登場!しかも、2匹です!」
「何だって!?」


「―勇牙、リュウト、スバル!!」
「!?何だよ、いきなり大声あげて!」
 勇牙は帰り道に突然G-ヴァイスがなったので思わずびっくりした。
「ヴァルディア?」
 リュウトは、自宅用の高級車の中だった。
「急いで、3人で戻ってきてくれ!また、デビルが現れた!!」
「デビルが・・?」
「奴ラ、隣の南岡地区とオーストラリアを襲う気だ!」
 ・・え。
「オーストラリア・・?」
 そこって、父さんがいるとこじゃん・・。
 ――今、オーストラリアで今日みたいなことがあったら・・。
 綾香さんや愛那が悲しむことに・・・?
「それはだめだ・・・。絶対に・・・」
 スバルは決意したような眼差しでどこかに電話した後、「すみません!降ります!」と言って、大変急いだ様子でバスを降りて勇牙たちがまいる場所に向かって走り出した。
「走ってたら間に合わないな・・・!」
 その時、たまたま近くを通りかかった自転車を見つけて、乗っている少女にスバルがいきなり、
「自転車、貸して!!後で返すから!」
「・・え?・・あ、あの・・」
 少女はなぜか顔を赤くした。
「急いでるんだ!早く!」
「・・あっ、はい!わかりました!」
 スバルの勢いに圧倒された少女は思わずそう答えてしまった。
「じゃ、借りるからな!」
 と言い残すと、スバルは全速力で自転車を走らせた!
「ヴァルディア!勇牙たち、まださっきの場所にいるか?」
「・・あ、ああ」
「今すぐ行くから待っててって言っといて!」
「わかった・・」
 ―いきなり、協力的になったな。なんか、熱くなってるし・・。
「それより、どっちのデビルを先に相手をすればいいか考えなければな。今のところ、どっちも動きを見せていないが・・」
 ヴァルディアが考えるようなポーズをとった。
「父さん・・・!」
 今、行くから・・・!


「―アルテナ様、まだ動かないんですか?」
「まあ、待て・・。この程度の戦力なら奴が来るまで動く必要もない」
 アルテナの乗るセルシオの周りには撃沈された軍隊や自衛隊があちらこちらにある。
「アルテナ様、お楽しそうですね」
「そうか・・・?」


「勇牙!水瀬川!」
「スバル!」
「あ、皇君!」
 二人がいたのは、ドリームランドのすぐ隣にある小さな海浜公園だった。
「―・・戻ってきたのか」
「勇牙、ごめんな・・」
 スバルが急に素直に謝り出した。
「え」
「オレさ、突然のことが大きすぎて混乱してたんだ・・」
「スバル・・」
「―ってことで、行くぞ。勇牙、リュウト」
 切り替え、はや・・!!!
 いつのまにかスバルがリュウトを呼び捨てにしていた。
「・・ああ」
 リュウトもちょっと嬉しそうな顔をした。
「では、3人そろってあの時と同じようにジェスティスコールと叫んで私を呼んでくれ!!」
「おおっ!!」

―ジェスティスコール!!ヴァルディア!

 3人が息をそろえて熱く空に向かって叫んだ。
 すると、迸るプラズマの中に勇者・ヴァルディアがその勇姿を見せた!
「うおおおお・・・」
 そして、勇牙たちをあの光に包み込んでいって、自分の身体に勇牙たちをいれた。
 そして、例のようにそれぞれのコクピットに勇牙たちを運んでいった。
 その瞬間、勇牙たちの身体がオレンジ色の光に包まれ、あっというまにパイロットスーツを着せられた。
「!?何だ?」
「ヴァルディア、これは・・?」
 深い蒼のパイロットスーツを着たリュウトが自分の体を見ながらヴァルディアに聞いた。
「パイロットスーツだ。これからは私に乗る時はその格好でいてもらう」
「どうした?スバル」
 赤いパイロットスーツ姿の勇牙がもぞもぞしているスバルの様子に気がついた。
「・・勇牙、なんかこれ、ぴったりしてて変な感じがするんだけど。それに恥ずかしいし」
 深緑のパイロットスーツをスバルも見ていた。
「そうかぁ?オレは格好いいと思うけど」
「・・・・・」
「行くわよ、2人とも!!」
 突如、ヴァルディアの前に2機の最新の戦闘機が現れた。
「セレスさん?!」
「オレもいるぞ!」
「青山さん?」
「私達がナビするからついてきて、ヴァルディア!!」
「わかった!」
 ヴァルディア達はまず南岡地区にいるデビルの方に行くこととなった。
「え、オーストラリアに行かないの?」
「大丈夫、そのデビルがおそらく私達をナビゲートしてくれるはずだから」
「!・・じゃあ、そのデビルは最初から南岡地区を襲う気はないんですね」
「そうだ。おそらく、敵がこっちに差し向けた案内役ということだ。実際に何もしないでじっとしてるしね」
「随分、丁寧だな、勇牙」

ニッコリ。

「・・あ、ああ」
 怖い・・・・・。


「やっと、来たぎゃ。ついて来いだぎゃ」
 頑強な肉体を持つデビル―カルロスがガハハハと下品な笑いをしてやってきたヴァルディアとセレス達を迎えた。
「アルテナさまがお待ちぎゃ」
「――アルテナ!?」
 その名にセレスが僅かに反応した。

 赤く激しい炎がそこら中に吹き荒れる巨大な山の上にセルシオはいた。
「―やっと、来たようだな、ヴァルディア」
 セルシオが静かで落ち着いた厳しい声でヴァルディアに声を向ける。
「・・セ、・・セルシオ・・?」
 周りには、戦闘機が何機も巨大な鉄の塊となってセルシオの周りのあっちこっちにごみのように落ちている。
「・・お前、まさか・・・」
 この中には、生きている者が入ってたはず・・。まさか、それを承知で・・。
「・・・・」
 勇牙、リュウト、スバルのモニターにアルテナの映像が映し出される。
「貴様らがヴァルディアのパイロットか・・」
「―お前は・・」
「私の名は、アルテナ。偉大なる陛下に仕えるセリュ―ジョンの騎士だ」
「・・貴様らに挨拶に来た」
「挨拶?」
「そうだ、我らに立ちはばかるにはそれなりの実力があるだろう・・・」
と、言葉を続けようとしたアルテナがスバルに偶然目に入れると、
「―・・皇子!?」
「!?」
「アルテナ様・・」
「セルシオ・・」
「・・・・・・」
「ヴァルディア、そしてヴァルディアのパイロット・・。私と戦ってみないか?コスモ・シードをかけて・・!」
 冷徹な瞳で、鋭い声でアルテナが勇牙達に言い放った。
「!!」




© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: