第4章




「私と戦え」
 奴は今はっきり言い放った。
 鋭くて冷たい瞳でオレ達を見据えながら――・・。
 勇牙の手の中に汗が滲み出る。
「何、緊張してるんだよ、勇牙」
勇牙のモニターに小さくスバルが映し出された。
「―スバル・・・ッ」
「どうした、戦うのか戦わないのかはっきりしろ。戦わないなら、私がコスモ・シードをもらう」
「それはだめだ!セルシオ、貴様・・・っ」
「だまれ、裏切り者」
「裏切り者?」
 リュウトはそんなヴァルディアとセルシオの会話を聞いて考えていた。
 ここで戦うのは、無理があるな・・。
 あっちは、武器が多いみたいだし、こっちは今の所エネルギーソードとかくらいしかないし・・。
「でも、ここで逃げたらオーストラリアの人達がまた攻撃されるかもしれないし・・。どうするか・・」
 その瞬間、セルシオが行動に移り、ヴァルディアの隙を突いて至近距離に近づき、ヴァルディアを左手のアンカーで殴った。
「・・くっ」
 勇牙のとっさの反応で、格闘技によくある防御の型でその衝撃から免れた。
「・・い、いきなりの攻撃はや、やめろよな・・」
「さすが、道場の跡取なだけあるな」
「お、おう・・っ」
「顔がひきつってるよ・・」
「――ふーん・・」
 アルテナがその動きに僅かに眉を細めた。
「アルテナ様?」
「・・ひるむな・・!」
「はっ」
 ヴァルディアのエネルギーソードとセルシオの刃がぶつかり合い、摩擦が起こりキィィィィィィィィン!!と、金属がぶつかったような音が奏でる。


「―あれが、セルシオか・・。セレスが言っていた・・」
 と、レイ副官が送られてきた映像を真剣な眼差しで見つめる。
 先程の軽い態度とは一変して、冷徹な雰囲気さえ漂っている。
――私があの頃見たものとよく姿がにているな、セルシオっていう勇者は。
「セレスと青山は引き続きそのまま監視を続けてくれ。ヴァルディアのスピリットが少なくなったらあれをヴァルディアに・・」
「はい!」


「――くっ」
 リュウトがヴァルディアと共にセルシオに押さえられている状況に少なからず焦りみたいなものを感じていた。
 勇牙が皆と調子合わせてセルシオの腹部に連打のパンチをくわらせようとしたが、目に見えない動きでとらえられずはずしてしまっている。
「――父さん・・」
早く、早く行かないと・・・・っ。
 と、スバルまでいらいらしていた。


 遠くに見える2つの勇者の戦いに近くに避難していた住民たちが呆然と見惚れていた。
「おお・・」
「な、なんか、すげえ・・・・」
 自衛隊にすらどうすることも出来なかった敵の兵器とまともに渡り合っている。
 あいつならもしかして・・・・・!
 わずかな希望が住民達の心に芽生える。
 が・・・。
 急にヴァルディアの動きが鈍くなり、セルシオの一撃にその身体ごと吹き飛ばされる。
 その衝撃が乗っている勇牙たちにまで諸に伝わっていく。
「!?な、何だ?」
「・・・うっ」
「――いてて、どうしたんだよ?ヴァルディア?」
「ス、スピリットポイントが急に・・・・」
「スピリット・・・?」


「!!セレス、青山、今こそ君達の出番だ!ヴァルディアにテーラクリスタルを注入するんだ!」
「はい!!」
 テーラクリスタルとは、勇者にとっての「バッテリー」みたいなものであり、それなしの場合数時間の戦闘しかできないのである。もちろん、セルシオも同様である。
「ヴァルディア、行くわよ!」
「行くぞ、勇牙君達!!今からスピリットポイントを満タンにするからな」
「・・えっ、あ、はい!」

―ウォォォォォン!!

 その瞬間、ダークヴァルフがセルシオとヴァルディアの前に巨大化して現れ、威風堂々とした態度でセルシオを威嚇し、ヴァルディアの頭部にいるスバルのG-ヴァイスにインストールされた。
「!?ダークヴァルフ?何で・・?」
「何!?」
 これには、アルテナも少しながら驚きを隠せなかった。
 そのうちに、2機の戦闘機からテーラクリスタルが発射され、ヴァルディアの背中に投入された!!


「・・・・・シー、カルロス、グレン。あれをやるぞ」
「はっ、はい・・・!」
 三体のデビル達は少なからず怯えるような瞳になった。
「―三体のデビルのスピリットの力をセルシオにインストールせよ!ノヴァヴィア!」
 アルテナがそう叫び、目の前の機器に素早い手つきでコマンド入力すると、セルシオの後ろにただずんでいたデビル達があっという間に身体が小さくなっていき、ダーククリスタルとなってセルシオと霊気融合した!!
「!!!なっ・・・」
 その凄い光景に思わず勇牙達も絶句してしまう。
「コスモ・シードがどんなものか試させてもらう」
「・・・っ、何なんだよ!?お前!そいつら、お前の仲間じゃないのかよ!」
「仲間?変なことを言うな。こいつらは私のただの下僕だ」
 それを言った時のアルテナの瞳は凍りつくほど冷えたものだった。
 勇牙も思わず背筋が冷たくなった。
「・・では、行くぞ。ヴァルディアのパイロット」


ピーピー・・。

「あれ――?携帯が圏外になってる――・・。どこにいるのよ、あいつら」
 と、家に帰宅したミサキが自分の携帯を眺めながらそんなことを呟いた。
「・・もしかして、まだ帰ってないとか?」
 その時、着メロが鳴り響いた。
「あっ、ミサキちゃん?」
「あれ、勇牙のおじさま?どうしたんですか、こんな時間に」
「そっちに勇牙来てるか?なんか、まだ帰ってないみたいで。百合も心配しまくってて」
「えー、まだ帰ってないんですか」
 それにしても、酔ってるな、この人・・。
「スバルのとこにでも泊まりにいってるんじゃないですか?」
「オレもそう思うんだけど・・。ひっく・・・」
「それならそれで連絡くらいいれろって感じだよな。じゃあ、そういうことだからバッハハ―イ!」
「・・・・・」
 だめな大人の代表って感じ・・・。これで、29歳とは・・・。


「――・・?」
 ダークヴァルフがスバルのG-ヴァイスにセーブされたその瞬間、スバルの心に何かが覚醒した。

ドクン・・ドクン・・。

「―皇君?」
「皆、目を閉じて心を静かにして・・。今から、ダークヴァルフの「イリュージョン」能力を発動させるから」
「おい、スバル、何言って・・」
「・・・・。わかった・・、やろう・・」
「えっ・・、お、おい」
 その時、セルシオが作り出した自らの幻影がヴァルディアの真横を通り過ぎ、アンカーを引きぬいて素早く避けようとしたヴァルディアの動きを捕え、ヴァルディアの身体を捕えた!
「くそっ!!」
「ヴァルディア!」
 セルシオが右手のアンカーから血のような深紅の色の鋭い刃を出した。
「勇者王もかわいそうだな・・、そんな素人をパイロットに選んで・・」
 アルテナの皮肉った軽い冗談にヴァルディアがピクッと反応した。
「―そんなことはない・・。私は勇牙たちを信じてるからな・・」
「――信じている?」
「そうだ、私は勇牙達がきっとこの世界を救ってくれることと信じている・・」
 ヴァルディアがアルテナとセルシオに向かってにっととびきりの笑顔を見せた。
「「「ヴァルディア・・」」」
 その言葉に3人そろってジーンときた。
「――じゃあ、やるぞ・・!2人とも。こんなとこで負けたくないもんな」
「勇牙君・・」
「・・・・そのバカ正直さがうらやましいよ・・、ほんと・・」
「じゃ・・、やるか・・・」

「―ヴァルディアス!!!ダークヴァルフ!能力発動!」
 3人が心を一つにして言い放ち、ヴァルディアとダークヴァルフを融合させ、ヴァルディアの身体が蒼い光に包まれ、そのダークヴァルフの能力―イリュージョン(数体の幻影を作り、相手を油断させる)を発動させた。
「・・・・!」
 ダークヴァルフとの融合により、セルシオにも捕えられない速さでセルシオから離れ、今度は逆にセルシオの周りにヴァルディアはどれが本物かわからないほどの幻影を作りだし、自らをその中に隠した。
「アルテナ様、こ、これは・・・」
「―お前と同じ能力のコスモ・シードらしいな・・。・・だが」
 アルテナはすっと目を閉じ、
「まだまだ甘い・・」
 と言って、アルテナはある一点において意識を集中させ、研ぎ澄まされた。
 そして―
「草薙流武術、挫散櫻舞!!」
 勇牙が、ヴァルディアが高速移動で連続キックを繰り出す蹴り技を動きを止めたセルシオにかまそうとした。
 その時、その瞬間、アルテナがカッと目を見開き、ヴァルディアの動きを読み取り、軽く受けながら逆にヴァルディアをものすごい殺気と剣圧で吹き飛ばした。
「・・・え・・・?」
 勇牙はその瞬間、何が起こったのかわからなかった。
 そして、次の瞬間さっきの衝撃よりも強い衝撃が心と身体を貫いた。
「・・う、うわあああああああああああッ!!!」
 勇牙が、リュウトが、スバルがヴァルディアが吹き飛ばされる衝撃に思わずそう叫んでしまっていた。
 それに、セルシオが衝撃で出来たクレーターに倒れこむヴァルディアががっと胸を足で押さえ、上からヴァルディアを見下ろした。
「ぐは・・・っ」
「―お前の負けだ」
「!?オレが負けた?」
 勇牙がどうしようもない恐怖に心が包まれているのを感じながら、その言葉に鋭く反応した。
「・・オレが、・・・ヴァルディアが・・?・・そんな」
 その瞬間、ふっと脳裏にスバルの言葉が浮かんだ。

―ヒーローごっこしたいなら他でやれよ!そんな奴に・・・。
 そんないーかげんな奴に誰も護れない!!

「・・あ」
「・・嫌だ、僕はこんなとこで死ぬのは嫌だ・・・。――神威・・」
 リュウトが切なそうな表情を見せた。
「・・父さん」
 スバルがぼんやりとした口調で小さくそう言った。
「これで終わりだ・・」
 セルシオがさっきの刃を再びヴァルディアの喉元の上にピタッと置いた。
「・・・・っ、セルシオ・・・」
「はい・・・」
「貴様ら、命拾いしたようだな」
ハァ・・、ハァ・・・。
「?」
 セルシオの前に第2のコスモ・シード―ジャスティスレオパズーカが現れた。
「―コール、ジャスティスレオパズーカ・・・!」
 アルテナが心に声に強くそう叫ぶと、アルテナのG-ヴァイスに反応してジャスティスレオパズーカが「・・・ォォォ・・」と小さくうめき、赤紫の光に包まれながらアルテナのG-ヴァイスにセーブされた。

「・・・!・・そんな!!」
「コスモ・シードか・・・。まあ、いいだろう・・・」
 ―クリスタル、解除・・・。
「だぎゃ・・」
「だわ・・」
「ん・・?」
「帰るぞ・・・・」
 セルシオがヴァルディアにすっと離れ、宙に舞った。
「え、あ、はい・・」
「―せいぜい、その短い命を慈しむがいい」
 そう冷たい口調の言葉を言い残しながら、アルテナは去っていった。
「・・・あ」
と、勇牙が緊張をほぐすようにぽつりと呟いた。
「――負けたな」と、スバルが冷静な瞳を宙に浮かばせながら静かに言った。


「――アルテナ、なんで・・・」
セレスが朝日が昇る寸前の山をバックに疑問が入った声で消えていくセルシオを見ながらそんなことを言った。
何で、あのこがあんな事を・・・・!?それに、なぜ勇者にアルテナが乗っているの!?
私の「妹」が・・・・・・・・・?
セレスの心のなかでいろんな思いが今、この瞬間駆け巡った。
「セレスさん?」
青山はそんなセレスの思いをわからなかった。


「あーあ、研究所はぎりぎり無事だけど、中がなぁ・・。これじゃ、しばらく帰れないな」
 と、他の研究員と共にスバルの父ー皇 大祐がそんなことを同時刻、呟いていた。
「日本にいる彩達に連絡もしないとな」
ゆっくりとため息をついた。





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