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第5章
――リシフェル様ぁ!
少女の目の前には、見渡す限りの水平線が広がり、そこに映えるように彫刻のように整った顔立ちの男性が立っている。
「・・セレス」
穏やかな表情を浮かべて――・・。
波打つ水面が太陽の日差しを受けて、まるでダイヤモンドのように輝いている。
―そこは、地球より遥か遠くにある銀河系にあるマジックアース。美しい緑に囲まれ、科学と魔法が共存した世界で、マジックアース全土を治める皇国・セリュ―ジョン。
セレスの故郷である。
そう、つまり、セレスはセリュ―ジョン出身であり、ネオ人である。セレスは、皇帝・リシフェルの父―狂皇と呼ばれたハデスの兄の娘である。
・・・だが・・。
あの日を境に変わってしまった
そう、あの日から・・。
――セリュ―ジョンの民の古くから禁忌とされた黒い機体の勇者ラグナ。
マジックアースの真なる支配者を名乗るラグナが誰かによって封印を解かれ、セリュ―ジョン皇国をたった3日で崩壊され、彼に着く半機械人によってセリュ―ジョンの民は半数を失い、恐怖に怯え、行く当てもなくテーラで宇宙へと逃げ延びた。
そして、その戦いでセレスは両親を失い、家族は妹だけとなった。おさなじみのエンディミオンは目の前で、一瞬のうちに3代聖騎士だった父を殺された。
リーノア王妃は封印され、2人の皇子はテーラ内で起きたある出来事で無理やり1歳のころ引き離され、逢うことが出来ない状態となった。
「・・・う」
―父上・・。
「・・アルテナ」
セレス―梨紗があられもない巨大なベッドで身じろいだ。
―一筋の涙を頬に流して――・・。
朝日が窓から優しく包み込んだ。
「梨紗?」
1つの人影が彼女を覆った。
「・・あ、あなた」
「どうした具合悪いのか?」
「・・ううん、何でもない」
優しい微笑みに彼女は静かな安らぎを感じていた。
「――勇牙、どうしたのよ。2日前からずっとそんな感じじゃない」
ミサキから見てもあきらかに不機嫌そうで、それでいて落ち込んでいるのである。
「なっとらん!!」
そんな勇牙に対して祖父の明史が木刀を振りかざした。
「うわっ、何するんだよ!じっちゃん!」
「朝からぼーっとしおって!それでも、草薙流剣道の跡取りか!」
「・・なっ、別にオレ、継がないけど」
「わしの息子どもは皆して腑抜け揃いだから孫のお前に期待するのは当たり前じゃろ!」
「・・・・」
「親父―、ネクタイしらね―?」
勇牙の父、草薙凌駕がだらしないスーツ姿でひょっこりと現れた。
茶ぱつのロン毛に、結構整った顔立ち。
学生気分がいまいち抜けない29歳の構成作家である。
「あ、父さん、おはよ」
「貴様、しゃっきとせんか!!そんな格好ででおって!恥ずかしくないのか!」
「勇牙、おはよ・・・。ふぁ・・」
スバルが大あくびしながら藍那と共に勇牙の前に来た。
「・・・あ、スバル君。おはよう・・」
急にミサキがもじもじし始めた。頬も赤らせめて・・。
「おはよう、小笠原さん」
ニッコリ。
「リュウトお坊ちゃま、今日は麗華様と一緒にバイオリンのお稽古が2時からでございます。覚えてらしゃいますね」
高級車の中に装着されたテレビ電話でリュウトはブルジョワ制の制服姿で執事長と会話をしていた。
「・・ああ、わかってるよ。1週間前からの予約だからね。明日は、経済学と哲学の授業だっけ」
「はい、そうでございます・・。では・・」
「ふぅ・・」
リュウトは思わずため息をついた。
―毎日、こうだと疲れるな・・・。
その時、弟の藍川神威の姿がテレビ電話に映し出された。
「お兄ちゃん」
「!神威!」
と、ガバッと身を起こした。
「今日の夕方、そっちに遊びに行っていい?」
「・・も、もちろん」
「よかった、お兄ちゃんにあげたいものが合ったんだ。じゃあね」
「あっ、待って!」
そこでプツッと切れた。
「・・・神威」
セリュ―ジョン「テーラ」内、軍本部――。
勇者を「置いておく」場所、セリュ―ジョンの戦士達が敵地へと飛び立つ場所ー通称ジェイディー。
セルシオから降り、浮遊中のアルテナの前にアルテナの整備士のセレンが現れた。
意志を持った、人間に似た姿を持つアンドロイドだ。見かけは、11歳くらいの少年に見える。
「お疲れさまです」
「・・ああ」
「コスモ・シードを手に入れたようですね。さすがは、アルテナ様」
アルテナの傍らには、ジェスティスレオパズーカが可愛らしい姿となって、楽しそうに飛び回っている・
「・・・お前、いつも、同じことしか言わないな」
「そう、設定されてますから」
「・・・・・」
「そうそう、司令官様が次の任務をもう考えているそうですよ」
「そうか」
アルテナの周りには、クレンペラ―などの戦闘機も配備され、整備士達は忙しそうだった。
アルテナがふっと後ろを振り返ると、ハッチがもう閉じようとしていた。
「地球か・・・」
一瞬、アルテナの瞳に儚げなものが見えた。誰も気付かなかったが―。
「―では、降下を開始する・・・!作戦を速やかに実行するように」
レッカーは3機のクレンペラ―に乗ったパイロット3人組にピシッとした姿勢でビシッと決め手言った。
「ハッ!」
パイロット3人組も上官に応えるように敬礼のポーズをとった。
その中には、勇牙達と同い年くらいの少年も混ざっていた。少々、不機嫌そうであるが。
彼の名前は、アルク・ラグナロク・ノクターン。長い冷凍睡眠から醒めた、天才的なパイロットである。たぶん、11歳くらいだ。尖った碧色の髪、鋭い紫電の瞳、尖った耳というやんちゃな外見である。
―くそっ、何でオレがあんな奴の下につかなきゃならないんだよ・・・!
と、心のなかで強くそう思っていた。
「セリュ―ジョンのために!」
「セリュ―ジョンのために!」
「セリュ―ジョンのために!」
パイロット全員声をそろえて慣れ親しんだその言葉をレッカーに言い聞かせた。
―そして、3機のクレンペラ―は地球に降り立った。
美しい調べを奏でるバイオリンの音がその豪華な部屋に優雅な時を与える。そこにいる者達も思わずその弾いている者の姿に見惚れてしまう。
クラシックの、重々しくも優しく切ないサウンドがリュウトの背中の後ろから流れ、弾いているバイオリンの音とマッチする。
「・・また、腕をあげましたわね、リュウトは」
「そうですわね、先生」
そして、サウンドが終わり、リュウトも演奏を終える。
「・・・ふぅ。どうですか?先生」
パチパチ。
先生と呼ばれたフランス人女性が拍手し、穏やかな笑みを浮かべる。
「今日のは合格です」
「・・ありがとうございます」
リュウトも応えるようににこっと子供らしい笑顔を見せる。
ビーッ、ビ―ッ。
その時、G-ヴァイスが鳴り響いた。
「!・・・また?」
「リュウト様、何ですの?その音。ちょっと耳障りですわよ」
「・・あっ、すみません。先生、ちょっと僕席を外させてもらいます」
リュウトはそう言ってそそくさとその部屋から出ていった。
いきなりかかってくるのはちょっと困るな~・・。
「―ヴァルディア?」
・・・いや、違う。
「これは?」
Gーヴァイスが何かに反応してる?
「・・・。コスモ・シードとか?」
「どうしたの?リュウト君」
と、リュウトの伯母の織原梨紗がリュウトに声をかけてきた。リュウトの父の弟の新しい妻である。
しかも、セレスと同じ24才なのである。
「・・い、いえ、何でもありません」
「そう。なら、いいんだけど」
ニッコリ。
梨紗はリュウトに穏やかな笑みを浮かべ、その場を去っていった。
ビー、ビー、ビー・・。
だんだん音が小さくなっていく。反応してるものに近づいてるって事かな?
リュウトはG-ヴァイスが指し示すデータをもとに水瀬川邸の広大な庭園の中を歩き回っていた。
「―いつも思うけど、無駄に広いよな」と、ぽつりと呟いていた。
ビー―!!
その瞬間、鳥達がざわめくほどG-ヴァイスの音が大きくなった。リュウトも思わず耳をふせぐほどだ。
噴水がザァッと高く跳ね上がった。
「!」
リュウトの前に、木の影に隠れたアークペガシアドリルが現れた。ゆらめくロウソクの炎のような儚げな影をちらりと見せて。
アークぺガシアドリルは、ヴァルディアの手足から鋭く敵を引き裂く「剣」と攻撃を受け止めるバリア「セイントガ―ディア」作成という能力を持つ。
「―こ、こんにちは」
リュウトも真近でみるコスモ・シードにちょぴり緊張して笑顔がぎこちなかった。
アークぺガシアドリルも自分に近づいてくる人間におどおどとしていた。
それを見て、リュウトは・・。
ニコッ
「・・・怖がらなくていいよ。僕は君の敵じゃないんだから」
心のそこから慈愛に満ちた笑顔だ。
・・ヒ―ン。
アークぺガシアドリルもその笑顔にほっとしたのかおずおずと出てきた。
リュウトが第3のコスモ・シードと遭遇してるころ、勇牙達は午後の授業を受けている最中だった。5時間目あたりのようだ。
5時間目の授業は、勇牙の大嫌いな国語の時間のようだ。
「―では、このような文体を・・・・」
担任でもある星野詩織先生(25)・独身が綺麗な声で開かれているページについてキチンと説明している。結構美人だが、あまりモテナイらしい。
生徒達もまじめにそんな先生を見て尊敬の眼差しで見つめている。
――が、現実は。
「―三波君・・」
「―六奈ちゃん・・」
5年2組名物バカップル2人がいちゃついていた。
詩織先生が砂吐くほど甘~い雰囲気だ。
男の子の方を三波純一、女の子の方を立花六奈という。三波君は、勇牙と同じサッカー部でクラスメイトで友人の一人だ。
「・・貴方達ねえ・・」
詩織先生がプルプルと身体を震えさせた。
勇牙はというと空を眺めて上の空状態だった。
スーッ、スーッ・・・。
向かいの5年3組から景気のいい寝息が聞こえてきた。
「私の授業に寝るとはいつもながら度胸がいいな」
算数担当・金田一先生が指揮棒を持って、青筋を立てて寝ているスバルの席の前に立っていた。
「先生、皇君、今日は見逃してあげてください」
スバルのななめ後ろの席に座るサラ・マクドゥ―ガルがすっと立ちあがり、スバルをかばうように言った。先日、スバルが自転車を借りた少女だ。
フランスからの転校生で、白いリボンをつけた金色のロングヘアに碧色の瞳という、お人形のような可愛らしい少女だ。
ちなみに、スバルはいまだに彼女の事を知らない。特に関わってないので、記憶にいれられていないのである。
「何だ、またお前か」
「今日、凄く疲れているようですし」
「あのなあ・・」
その時、G-ヴァイスが音を立てた。
ピー、ピー―・・・
、と。
デビルが出撃した時の、ヴァルディアからの合図だ。
勇牙がそれに反応したかのようにはっきりとした表情となって、目を見開いた。
「先生!!」
「な、何?草薙君、珍しいわね。質問?」
「・・・。身体の調子が悪いんで早退させてもらいますっ」
「・・え、ええ。わ、わかったわ。じゃあどうぞ」
突然の勇牙の行動に詩織先生はついていけないようだ。
ピクッ
スバルが何かに反応するようにゆっくりと目を見開いた。
ピー、ピー・・。
「どうした?皇」
金田一先生を見上げた状態で見たスバルは、
「・・・うっ」
急に気持ち悪そうに倒れこんだ。
「!?どっ、どうした?」
「―いえ、急に眩暈がして・・。たぶん、塾のテスト勉強のやりすぎだと・・」
スバルが息をたどたどしく漏らしながら、言葉を切らして言った。
「―保健室でも行ってくるか?」
金田一先生もさすがに心配そうな表情になった。
「・・は、はい。ありがとうございます」
と、スバルはすまなそうに先生に一礼をすると、教室を出ていった。
「ふっ、あいかわらずちょろいな」
スバルが小さく呟くように言った。
「じゃあ、寝に行くか」
そこへ、勇牙がちょうど教室から出てきた。
「―スバル、ヴァルディアから連絡きただろ。行くぞ!」
「・・・は?何で、オレが?」
どうやら、スバルはヴァルディアを無視する気らしい。
「当然、勇者として悪い奴らを倒すためだろ。お前とリュウトが行かなきゃ戦えないじゃん」
硬直するスバルの肩を、勇牙が当然のごとくポンポンと叩いた。
「よっしゃあ!行くぜ!再出撃だ――!」
勇牙がアルテナとの戦いを無視するように自分に勇気づけて叫んだ。
「いや、だって、オレは・・」
勇牙がスバルを有無を言わせず、無理やり掴んで校門へと走り出した。
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