第7章


第7章―雪原の出逢い
「・・あっちぃ」
汗だくのユニフォームを勇牙がパタパタと仰いで、真っ青な青空を眺め芝生の上を座っている。
「―こんな朝早くから朝練なんて・・・、面倒くせえな」
「こらっ、サボるな!草薙!」
「キャプテン」
秋生サッカー部キャプテン・対馬祥平が厳しい雰囲気をかもし出しながら、ずかずかと勇牙の元に歩いてきた。
日が焼けた小麦色の肌にスポーツ刈りの頭に黒い瞳。誰がどう見ても活発なスポーツ少年という事を示している。
「草薙、一周サボった罰として校庭10周だ!!」
「・・げっ!!」
ちょっとさぼっただけなのに!?
「うそだろ~!?」
「草薙、ドジだな~・・、アハハッ」
「オレ達はもう終わってるけどな。先にキック練習やっててやるからがんばれよ~」
「うっせ―!!」
勇牙が野次馬的な仲間に思いっきり叫んだ。
そのサッカー部の練習を木陰から見つめる1人の少女の姿があった。
「――怪しい・・・」
じと―ッとした、疑うような眼差しで・・。
「すごく怪しい・・」
・・最近、事あるごとに早退したり、何か嘘ついても教えてくれないし、なんか態度変だし。
「・・きっと、なんかすごい秘密があるんだ」
ミサキがキッと瞳をとがらせ、拳を力強く握った。
「何やってるの?ミサキ」
「!・・六奈」
「誰か、見てたの?私は三波君を見に来たんだけどvv」
ポッと頬を赤くして、いやーんと言って身体を揺らせた。
「・・・そ、そう」
―バカップル。
「もしかして、勇牙君、見てたの?」
六奈がにやっと含みのある笑みを浮かべた。
「!!・・なっ、何言ってるのよ!?バカ!あたしがあんな奴見るわけないでしょ!」
ミサキの頬がドンドン赤く上昇していった。
―と、そこで。
「―何してんの、2人とも?」
「!!・・ス、スバル君!」
ミサキの顔が別の意味で赤くなった。
「小笠原さん、顔赤いよ。熱でもあんの?」と、スバルがひょいと軽くミサキに顔を近づけた。
その瞬間、ミサキの心臓が一気に跳ね上がった。
「・・え、え・・。そ、その・・」
「?」
「私、先に行くね!じゃあね、六奈」
そう六奈に言い放つと昇降口に向かってミサキが突進していった。
「??・・何、どうしたんだ?」
スバルはその時隣の六奈の視線を感じ、
「何?」
「皇君、気付いてないんだ」
「へ?何を?」
スバルは完全にはてな顔だ。
「いや、こっちのこと・・」

そのころ――
遥か彼方にあるシベリア高原の凍てつく大地の上空を、2機のクレンペラ―が東方に向かって飛行していた。
目的は、リーノア王妃と同じ能力(力)を持つディーン皇子の許婚、ラフィーナが占ったコスモ・シードの位置の確認と捕縛、そしてヴァルディアの排除にある。
今こうして自らコスモ・シード探索の任務につき、シベリアの上空を東方に急ぎながらなお・・・偵察機の隊長・フレイアはまだ少なからずの疑問を抱いていた。
――我がセリュ―ジョンのデビルが・・・それも、地球人側についた裏切り者の勇者と野蛮人に成す術もなくやられるとは・・・。
――フレイア・マルス・ディオン。
彼女は、セリュ―ジョンの治安と秩序を守る3代聖騎士の1人で治安維持部隊の若きリーダーでもある。短期間で治安維持部隊の隊長にまでのぼりつめた彼女は、かなりのエリートとしてしれわたっていた。
背中にまで伸びる緩やかな漆黒のロングヘア、紫電の瞳。
凛々しさと妖艶な美しさ、整った顔立ちとナイスバディな身体。彼女はエリートしての風格を現していた。
実際の戦闘技術も、フレイアは類い希なきセンスを生まれながら持っていた。
ネオ人の半数が持っていると言われるEX遺伝子を彼女は人工的に生まれる以前に植えつけられ、少々の超能力を持っている。
彼女の家系は代々皇室に仕え守護してきた優秀な騎士の一族である。
だが、血筋だけでは入隊の資格が得られるほど生易しいものではない。
エリートして慕われるフレイアさえ、実は裏では厳しい訓練を繰り返し、たまらぬ努力を続けてきた。
だからこそ――

「信じられない・・・地上攻略部隊はほとんどが優秀なる我が治安維持部隊で構成されているというのに」
そう、たとえ相手が勇者であっても!
その思いが今の彼女を動かしていた。
最強と信じて疑わない我らに敵を回してもなお立ち向かってくる三体の勇者達!
本当にそんな物が実在するなら確かめたい・・・っ。
フレイアに与えられた地上での任務は、セリュ―ジョンの部隊が本拠地に置くヨーロッパ周辺の制圧と統治にあった。
レーダーを監視するオペレーター兵士の1人が声をあげた!
「東南東、約26キロの地点に未確認飛行物体確認!数は3機の小さめの戦闘機のようです!」
ピクッ
フレイアの頬が僅かに動いた。

「――勇牙、今日という今日は白状してもらうわよ」
ミサキが勇牙の机を強く叩いて、ハッキリした言葉と睨みつけるような強い思いを秘めた瞳を目の前の勇牙にそう言い放った。
「・・なっ、何が?」
「何がじゃないわよ。あんた、ここんとこ友達とのサッカーや部活も途中で抜けてさぼってるんですって。それに、おじさまがかってきたレッドウイングズのチケットも・・。何かと疲れて帰ってるし」
レッドウイングズとは、勇牙が大好きな日本を代表するプロサッカーチームである。
「それがなんだよ・・」
「おかしいって言ってるのよ。あんた、レッドウイングズの大ファンじゃない。それを断るなんて・・」
ミサキが勇牙に詰め寄り、至近距離でじと―ッとした目つきで勇牙を見た。
「―そ、それは・・」
実は、ここずっと最近勇牙はスバル達と一緒にコスモ・シード捜索に何かと駆り出されていた。P―キャロットの事件以来、レイ副官の命により急に忙しくなっているのである。
小学生の生活にしてはややハードだ。
・・い、言いにくい。まさか、オレがヴァルディアのパイロットって事黙ってなきゃいけないし。
言っちゃだめってきつーく言われてるし・・。
勇牙の頬に冷や汗がゆっくりと流れた。
「・・言いなさい、何を黙ってるかを」
「・・う。ミ、ミサキに関係ないだろっ!!何で、ミサキなんかに言わなきゃいけないんだよ!」
いきなり声を上げた勇牙にクラスメイトがざわめいた。
「何よ、心配してるのに!!」
「・・大体なあ、ミサキ、お前オレの母親でも何でもないじゃんよっ。いちいち、オレの事に突っ込むなよ!」
「!」
その何気ないはずの勇牙の喧嘩腰の一言にカッとミサキが頬を赤くした。

パン!
勇牙の頬に軽く冷たい音が鳴り響いた。
「!?」
―その時、叩かれた本人は何が起こったかわからなかった。
突然のそれに周りのクラスメイト達に思わず沈黙が走った。
「勇牙のバカッ!もう構ってあげないから!」
叫ぶように勇牙に強い口調で突き刺すように言い放つと、ミサキがランドセルを持って教室から出ていった。
「・・ミ、ミサキ?」
ピー、ピー・・・・。
勇牙のG-ヴァイスがその途端静かに鳴り響いた!

地球防衛組織ゼウス内にけたたましい非常警報が鳴った。
その瞬間、一気に基地内に緊張が走った。
「―レイ副官!!」
「ああっ」
レイ副官が、軍章が襟元につけられた黒コートをバッと豪快になびかせ、手を広げて、全ゼウス隊員達の前にたった。
「ヴァルディア出動を開始する!皆、場に素早く着け!今回はシベリア高原だ!!」
「「「「はい!!」」」
「セレス少尉、並びに青山少尉はいつも通り通常の任につけ!」
「「はっ!」」

「「「――ヴァルディアス!!メタモルフォーメーション!!!」」」
3人が息ピッタシにG-ヴァイスを危機に装着した!
その瞬間、眩い閃光に包まれ、ヴァルディアが身体を三つに分離させた!
3機の戦闘メカへと変形し、大空へと飛び立った!
それぞれのコクピットには、勇牙、リュウト、スバルが1人ずつ搭乗している!
「うわあああああああああっ!?何だ、こりゃあああああああっ!」
「・・・飛んでる?勇牙君、僕達飛んでるよ!」
「こ、これって、まさか・・・・!」
・・今回が初めての変形のようである。
そう、ヴァルディアは、3機の飛行メカが変形合体して誕生する形態だったのである!
が、ごく普通に育ってきたものにとつては理解できないものである。同じように、ごく普通の生活、ごく普通にそだったもので冷静に受け止める者、変わり者がいた。
「ぎゃああああああああああっ!なんでなんで!?何でオレ飛んでんだ!?ヴァルディア、壊れたのか!?」
――・・勇牙だった。
キ―ン・・・。
「―――う、うるせえ・・」
あまりのうるささにスバルは耳をふさいだ。
「!!だってだって、いきなりヴァルディアがぁぁぁぁ!!」
・・勇者を目指している割にはちゃちい・・。
「ど、どうしよう~!スバル~」

「くそぉぉぉぉぉぉ~~!今日は何なんだよ!!!ヴァルディアは壊れるし!ミサキには叩かれるし――!」
勇牙がまるで雄叫びのように空中戦に優れた飛行タイプの「ガルバヴァルノ」のなかで大声で叫んだ。ちなみに、スバルが乗る「ハーデス」は地上戦に優れる機体で、ハ―デスの前面には2つの大砲が備え付けられている。リュウトが乗る「マーキュリー」は水中戦に優れた機体で、メガキャノンが備え付けられている。
正に、ロボット物という感じが一応醸し出してくる。
「――勇牙、落ち着け!!」
ヴァルディアの声が一気に3機の機体に流れた。
「「ヴァルディア!?」」
リュウトとスバルの声がぴったりと合い、お互いに顔を見合した。
「!」
「ヴァ、ヴァルディア!?お前、壊れたんじゃ?」
「このくらいで私が壊れるわけないだろっ!!」
ヴァルディアの声の迫力に逆に勇牙にひとまずの安心を与えた!
「・・お、おおっ!」
そして、一行はフレイアがいる方角へと何も知らずに向かった。

ドッゴォォォォォォォォォォォォォォン!
広大なシベリア高原に突然の凄まじい爆音がとどろいた。
天には、黒い煙が立ちこめる。
立ちこめる黒煙のなかからキュルキュルとキリモミ状態で落ちてきたのはなんと勇牙の乗る「ガルバヴァルノ」だった!
フレイアは、真正面から突っ込んでくるガルバヴァルノに威嚇の一撃を放っただけだった。
ガルバヴァルノはその一撃をするりと回避。
左右に避ければ同じく第2のクレンペラーと、そしてフレイアの乗るフレイア機自身が本格的な第2派攻撃を仕掛けるーはずだった。
しかし、フレイアの予想に反して、コントロールがままならないガルバヴァルノはそのまま真っ直ぐにフレイア機に突進してきた。
結果、ガルバヴァルノはフレイア機の放った威嚇の攻撃をまともにくらい、あえなく地上へと落下していくこととなったのである。
「そ、そんなバカな!?」
―何の防御もなしに相手が突っ込んでくるとは――!
厳しい訓練と努力をしてきた戦闘エリートには信じられないことだった。
「―勇牙!!」
スバルが驚きの表情を浮かべ、落下していくガルバヴァルノに向かって駆けつけようと思わずコンソールのスイッチを押していた!
「スバル!そっ、そこは!」
―が、その時、何かを間違って押したのか、同時にハ―デスの前面に備え付けられた2つの大砲がドーンと火を噴く!
そして――ドッガァァァァァァン!
第2クレンペラーが爆撃で飛行バランスを崩し、例によってスバルも困惑でコントロールを誤り、頭突きするように渾身の一撃を炸裂させた!
面食らった第2クレンペラーはものの見事に押しつぶされるしかなかった!
―しまった!ガルバヴァルノは囮だ!我らに一瞬でも隙を与え、ハ―デスのパイロットはガルバヴァルノを追うように我らに錯覚させ体勢を立て直し反撃に移る。
フレイアは今の光景を見て瞬時にそう感じ取った。
それだけの判断力を敵は持っているならば、我々が打つべき最良の手立ては何だ!?
万に1つの可能性が、優秀かつ冷静だったはずのエリートのコンピューターを狂わせている。
フレイアはその瞬間、
「!!皆、左右に避けろ!!」
「は?」
「早く!」
「はいっ!」
クレンペラー達の間にセレスの戦闘機の主砲が強力なエネルギー波が切り裂いた!
「・・ちっ!」
セレスが外れた主砲にあてがはずれたように声をもらした。
「あれをくらったらひとたまりもないな・・」
――体勢を整える・・、皆、この場を引くぞ!
フレイアがテレパス能力で全クレンペラーに指示を出した。
――はっ!

スバル達と離れ、敵の攻撃を受けてシベリア高原にたった1人突き出されて数10キロの位置する場所に勇牙はガルバヴァルノの中にいた。
―というか、今だ衝撃のせいで気絶をしていてうつむいていた。
「・・う・・ん・・」
永久凍土に覆われたシベリア高原にも人の住む町は点在している。しかし、少なくとも今、勇牙のいる位置からは肉眼で確認できないのが現状だ。
遠くに見える黒い塊は針葉樹林帯―年間通しての平均気温が0度というタイガ地帯だ。
これが旅行で友達と見に来てたら、この広大な景観に感動を覚えただろう、・・おそらく。
「――頭いて・・・」
と、ポツリと小さく呟いて勇牙がそっと目を開けた。
・・真っ白な景色・・・。
「・・ここは?」
・・ガガ・・ガガ・・・。
凍るような寒さのせいで電波の状態も通常通りにはいかない様子だ。
・・ゆ、・・ゆう・・・。
「―ヴァルディア?」
ヴァルディアの声が微かに聞こえ、勇牙が見を起こすとそこでぷっつりと切れた。
カァァァ・・・!
その時だった、一瞬だが勇牙の目の前のスクリーンに赤い炎が人魂みたいなものが通りすぎたのは・・・!
「・・え?」
一瞬、ギクッとなり、勇牙は豪快に目を見開いたっ。
ごしごしと目を洗い、もう1回見直すとそこには何も無かった。ただ、広大な大地が広がってるだけだった。
「気のせいかな・・?」
・・誰もいない、そんでここにいるのはオレ1人。
ま、まさか・・・。
勇牙の表情がサーッと血が引いていくように青くなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、遭難・・・・・、で、ですか?」
あまり信じたくない現実で勇牙は疑問形な口調に変わっていた。
「――あの、どちら様ですか?」
その時、何処からか、か細い少女の声が勇牙の耳に入ってきた。
「・・・え?」
ピンク色の長い髪が冷たい風になびき、その愛らしい顔が不安に包まれ、蒼い瞳がゆっくりと勇牙を眺めるように見た。
額には、セリュ―ジョンの王族の1人の証である宝石がついていた。
「だ、誰?」














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