第11章


『ヴァルディアをこちらに引き渡す事を要求する。そちらの答えが否である場合全世界の中枢都市への攻撃を開始する』
         ――――ピッ――――
そこで映像が切られた。
送られてきたセリュ―ジョンからのメールはこちらに会わせたように日本語で書かれていた。
「・・・・ッ」
当のヴァルディアはそのメールを見て黙ってしまった。
勇牙、スバル、リュウトは驚きを隠せないでいた。
「・・そんな・・何だよ、これは」
「・・・ヴァルディア・・」
「・・・」
「―皆・・・」と、セレスも声をかけようとしたが何を言えば言いのかわからず3人から視線をそらした。
―ヴァルディア1人を奴らに差し出してもきっと襲撃をやめないだろう・・・でも、渡さなかったら本当にセリュ―ジョンは全世界に向けて攻撃するのだろうか・・。
リュウトは背筋が凍るような感覚に襲われた。
「・・くそっ」
リュウトが思いっきり壁を叩いた。
傍にいたアークぺガシアドリルも思わずびくついた。
「だ、大丈夫だよな?ヴァルディア・・。お前、強いもんな」
「それについては返答が難しいな・・私もどう受け答えしてればいいのか・・。それに・・アレスの事だしナ」
「ヴァルディア~~・・」
スバルはそんな勇牙とヴァルディアのやり取りを見ながら、冷たい表情のまま、何かを考えたまま腕を組んでいた。
「・・・」
―カポーン・・。
静かに水が滴り落ちる音が翠のいる部屋に障子越しに静かに鳴り響いた。
「・・え、本当ですか?」
自宅にある純和風の部屋でスーツケースから荷物を取り出していた翠の元にセリュ―ジョンからのメールがきたことが電話で知らされた。
翠の表情が少し驚いたような表情となった。
「はい・・そうですか。じゃ・・」
翠は一連の事を饗古から聞かされた後、静かに電話を置いた。
「・・・」
・・卑怯な・・。
ヴァルディアを引き換えに渡せだなんて・・。
翠はぎゅっと唇をかんだ。
「どないしたの?翠はん。久しぶりに家帰ったのにまた戦関係ですか?」
「あ、母さん」
―再び、ゼウス日本支部―
ヴァルディアはメンテナンスの為、W-5に収納された。
「菊地さん、入っていい?」
勇者の身体をチェックし、整備班に指示を出すコンテナンスの通称・Dr凱にスバルが尋ねてきた。ドクターというには均整のとれたガタイのいい体格をしている。
「・・ヴァルディアと話したいんだけどいい?」
「・・まだ、チェック中だが20分くらいなら開けても良いだろ。入れ」
「ありがとう」
スバルがニッコリと微笑んだ。
Dr凱は電話を取って、「作業をいったん中断しろ」と作業班と整備班に命令した。そして、Dr凱が2つのマスターキーを取り出してW-5の扉にある鍵口に指しこんで扉を開かせた。
「―ヴァルディア?」
「!・・スバル!」
ヴァルディアの近くには、整備班の姿があった。

スバルは、ヴァルディアと2人きりにしてもらう事にした。
「・・・・」
「・・・・」
―何か、急に2人きりにされると緊張するな。そういえば、スバルとこーゆう風に一緒は初めてだな。
「・・ヴァルディアは」
「え?」
「ヴァルディアはどうしたいんだ?」
スバルが沈黙を破るように口を開いた。
「どうしたいって?・・もちろん、私だけですむなら私はセリュ―ジョンへと行くさ・・」
それを聞いたスバルはなぜか不機嫌そうに眉を曲げた。
「・・・・。ヴァルディアってやっぱり機械なんだな・・そーゆうとこ」
「どういう意味だ?」
「ヴァルディアはさ皆を守る為に作られた勇者なんだなって・・」
何が言いたいんだ?スバルは?
スバルは一端また黙ると、数分経って、ヴァルディアの方に顔を上げるとポツリと呟くようにこう言った。
「――最近なんだけど、オレの「母さん」に赤ちゃんが出来たんだよ・・」
「は?何をいきなり」
なぜ、いきなりそんな事を言い出すのかヴァルディアは余計にわからなくなった。
「それでさ、それを父さんから聞いた時何だか・・」
スバルがぎゅと身体を抱え、ヴァルディアに背を向けた時ちょうど勇牙が入ってきた。多分、スバルと似たようなことを考えてここに来たのだろう。
「―・・何だかスゴクその子が生まれてくるのが怖かったんだ」
ヴァルディアはハッとなり、スバルを見た。
スバルは眉をひそめ、苦々しい表情で顔を歪めていた。
「怖い?喜ばしい事じゃないのか?」
「・・うん・・でも、なんか正直言って喜べないんだ・・。でも、ヴァルディアがあいつらの所に言っても多分良くはならないと思う・・。だからさ、行くなよ、ヴァルディア」
ヴァルディアを見るスバルの瞳は何故か居場所を無くしたような小さな子供のように見えた。
「「・・スバル!!」」
あ、と勇牙が口を押さえた時はもう遅かった。
「―勇牙・・!」
まさか、今の聞かれたんじゃ・・・。

その頃――。
エンディミオンはジャスティスレオパズーカをセーブしたG-ヴァイスをアレス内にあるコクピットに装着された機器に一気に装着した。
コクピットのモニターにアレスとエンディミオンの管理を任されている女性型アンドロイドのアルテミスが宙に舞って現れた。
「マスター、第3段階の最終チェック終わりました。次は精神シンクロに入りますのでリラックスして下さい」
「・・わかった」
エンディミオンのその言葉を聞くとアルテミスは頷き、下で話し合いをしているオーナー達の元へと舞い降りた。
アルテミス・・・私のために「存在」する人に似ていて人ではないもの。
逆らう意思を持たぬ物。
「――・・・っ」
エンディミオンの脳裏にある光景がフラッシュバックした。
銃弾の音が鳴り響き、赤い炎と血痕があちらこちら見える。一人の少女がまっすぐ見据えた瞳で少年のエンディミオンを見る。
手にした銃をまっすぐエンディミオンに向ける。
「セレス、なぜこんな事を・・・!?なぜ、皇帝を裏切った?」
エンディミオンはとても信じられないといった表情を浮かべた。
「―貴方までそんな事を言うのね・・。私の言葉より他人の言葉を信じるのね、エンディミオン」
可愛らしく、澄んだ瞳を持つ美しい少女はもっとも仲良かった幼馴染みの彼に哀しげな表情を見せながら銃を向けていた。
「どういう意味だ?」
「本当の真実がどうなのかも知らずに」
ハッ
我に返るとジャスティスレオパズーカがエンディミオンの顔を覗きこんでいた。
「・・・・」
少し考え事してるすきに出てきたのか・・。

「勇牙、今オレが言ってたの聞いてたのか・・?」
スバルがじろっと勇牙を見た。
・・うっ。・・さっき言ってたお母さんと赤ん坊の事は触れない方がいいよな・・人のプライベートだし。
「・・うん。スバルがヴァルディアはあいつらの方に行かない方がいいって言ってた所かな・・」
「・・・本当に?」
「ああっ!!オレもそのスバルの意見に賛成だぜ!」
「・・・何か、勇牙、声あがってない?」
「気のせい、気のせいっ」
「―・・僕もさ、ヴァルディアが行くのは賛成できないな」
いつのまにか、リュウトが壁によりかかって腕を組んでそこに立っていた。
「「「リュウト!!」」」
勇牙、スバル、ヴァルディアが一気に言ったので思わずリュウトは圧倒された。
「・・・ッ」
「・・だ、だが私が行かないと、皆の命が・・」
「僕はヴァルディアを犠牲にした未来なんていらない」
リュウトはヴァルディアを見ながらハッキリそう言い切った。ヴァルディアにもひしひしと3人の子供達の心が伝わってきた。
「リュウト!よく言った!やっぱ、お前はオレの仲間だな!!」
勇牙は嬉しそうにスバルとリュウトの首根っこを捕まえて乱暴に抱え込んだ。
「!?ちょっ、勇牙君?」
「いててっ、こらっ、勇牙、首しめるなよ!」
「・・勇牙、リュウト、スバル・・」
「じゃあ・・、こんなのはどうかしら」と、突如セレスが現れつかつかと勇牙達に歩み寄ってきた。
「セレス・・・!」
「「「セレスさん!」」」
セレスが静かににっと、微笑んだ。
―どうやら、セレスには何か作戦があるようだ。

「―エンディミオン様、地球からこんな暗号文が送られてきました」
「・・・暗号文?」
エンディミオンは不可不思議な表情を浮かべ、送られてきた暗号文のコピーをモニターに映し出した。
「!!この文は!」
エンディミオンの表情が驚愕へと変わり、胸の中が高く鳴った!
―その暗号文は、地球人は知らないはずのネオ語で書かれていた。
しかも、これは・・・ッ。
「エンディミオン様?」
アレスが不思議そうにエンディミオンに声をかけた。
ドクン・・・
エンディミオンの心臓が静かにまた、脈打った。
この暗号文のタイプは私とセレス、女王陛下くらいしか知らない者だ。
「そんな・・バカな」
だが、しかし・・。まさかとは思うが・・・。
まさか・・あいつが・・。
・・あいつが生きている!?
「―・・アレス、クリストファー様に言う事がある。通信をそっちに回してくれ」
「はっ」

ヒュウウウウ――、ザザザ・・・。
アメリカ・メキシコ、7月13日早朝4時15分。
赤茶の土にあちこちに雄大にそびえる岩山、太陽がうっすらと見えるその大地にヴァルディアがセレスの戦闘機を岩陰に控えさせ、緊迫した面持ちで待っていた。
勇牙達も大変緊張して、真剣な態度でいた。
「――来たぞ」
その声に、セレスが空から来るアレスを見た。
―あれに・・、エンディミオンが・・。
アレスがヴァルディアの前に颯爽と降り立った。
「久しいな、ヴァルディア」
「・・アレス!!」
ヴァルディアがキッとアレスを睨んだ。
「・・待て、ヴァルディア。貴様と戦ってやる前に我が主君がお前らに用があるらしい・・。しばし、待て」
「?・・何だと?」
エンディミオンがコクピットを開いて、銃を勇牙達に向けた。
「―あいつがエンディミオン?」
すげえ威圧感みたいなのが身体にビリビリ感じてくる。
「―私の名はエンディミオン。貴様らに質問する。そちらに、セレスという女はいるか?いたら、何の武器も持たせずに私の前に出せ」
「!?何で、お前がセレスさんの名前知ってるんだよ!」
「・・・バカ」
「何だよ、スバル」
―この声は・・・。
「・・・エンディミオン・・!」
セレスが戦闘機を地上に下ろして、戦闘機から降りて、仮面を外してエンディミオンの前に進み出た。
「―セレス・・!」
セレスの姿を見た途端、エンディミオンの表情が少し変化した。
「久しぶりね・・・!」
「・・生きていたのだな」

「―あの顔は・・」
リュウトはセレスのその顔を見て呆然となった。



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