第13章


――ねえ、お母様、今年の誕生日はお父様は帰ってくるかしら?
幼い姿のエリカが母に買ってもらったテディベアを抱えながら可愛い笑顔で目の前の上品そうな美しい女性・ジョセフィ―ヌ・ヴァレンタインに聞いてみた。
――そうね、エリカは練習を頑張っているものね・・。だから、来るかもしれないわね・・。
――えへへっ。
それを聞いたエリカが嬉しそうな子供らしい笑顔を見せた。
・・でも、結局来なかった・・。
「―エリカお嬢様、朝でございます」
爽やかな朝の光が天蓋付きベッドで寝そべるエリカの目に飛び込んできた。
カーテンをひいているのは、メイドのリーリア嬢だった。
「・・リーリア」
朝か・・・。
エリカはうっすらと目を開け、彼女の姿を見た。
そんなエリカの隣には、巨大な白いテディベアが横たわっていた。

佐東長官とレイ副官の前には、勇牙の両親とスバルの両親、別居状態に入っているリュウトの両親の姿があった。
いずれも落ち着かないというか沈んだ表情を浮かべている。
佐東長官は、これまでの事をすべて両親達に話したのである。
「・・・まさか、スバル君があの勇者のパイロットになんて・・」
「綾香・・」
スバルの父、大祐がそっと綾香の肩を抱いた。
「―勇者のパイロットを降りる事は出来ませんの?」と、リュウトの母、美耶子がそっと口を開いた。
「・・あ、それはその・・」
「まさか、出来ないとかは言いませんよね?あの子は家の大切な跡取り息子ですからね」と、今度はリュウトの父親が重い腰をイスに下ろして口を開いた。
「――他にも代わりはいないんですの?何もうちの勇牙はんじゃなくても」
「出来ることならそうしたいんですが・・」
「でも、自分の子供を危ない目にあわすわけにもいかないしな~。実際、うちの子もケガをしたしな」
「うっ」
それを言われて佐東長官は頭を上げることが出来なくなった。
ヒュウウ――・・・
冷たい海の風を感じながらリュウトとセレス―梨紗は目の前の海を眺めていた。
「・・セレスさんって、梨紗さんだったんですね」
「ええ」
「何で、何で会った時言ってくれなかったんですか?」
リュウトが顔を上げて梨紗を見つめながら言った。
「・・言っても君が信じるかなぁと思って」
「―・・そうですね」

「あ」
「え」
スバルがスナック菓子を取ろうと手を伸ばした瞬間、同じ商品に手をかけた高校生くらいの少年と視線を合わした。
貧弱なイメージを与え、線が細い感じの少年だった。
「あ、ごめん、君が取ろうとしてたのか。はい」
「・・どうも」
「じゃ、オレはこれで・・」
そう言って、その少年はさろうとしたが何も無い所でこけた。
「・・・」
―退屈しなそうな人だなぁ・・。
そして、スバルはそのスナック菓子を手にとってレジへと向かった。
「スバルさん、決めたの?」
ひょことリュウトの弟、神威とリュウトがスバルの前に現れた。
――草薙家。
「あんた、階段から落ちたんですって?ドジねえ」
ミサキが勇牙のイスに腰掛けながらしょうがなさそうにマンガを見ながら言った。
「うっせーな、ミサキは。スバルの奴おっせえな」と、機嫌悪そうにベッドで寝ている勇牙が横にごろんと身体を回した。
「ってゆうか、人のマンガ勝手に見るなよ!」
「いいじゃない!幼なじみなんだから!」
「・・進歩しないね」
「うん」
勇牙のクラスメイトの水原雄介と浅羽武が顔を見合わせながらそんな会話をしていた。
「ただいま~」
「あっ、おかえり」
帰ってきたスバルの前にマンガを取り合っている勇牙とミサキの姿が入ってきた。
「・・・」
スバルの視線を感じ、顔を上げたミサキはカァッと頬を赤くして、慌てて勇牙から離れ、スバルの前へ進み出て、
「やぁだ、恥ずかしいv私ったら」と、軽く笑いながらもじもじし始めた。
「小笠原さん?」
その変わり身の早さにスバルは呆然となった。
いや、勇牙達もだ。

「空いてますの?」
と、訓練室の扉の方へと近づいてくるエリカがパイロットスーツを着てサブルームのメイド達に言った。
「エリカお嬢様、いつものお部屋で待っててください。今、訓練室はユーリ様がお使いになっています。もうすぐ、終了するかもと思うので」
「わかったわ」
エリカはスタスタと訓練室の隣にあるモニタールームに入った。
一時の迷いもなく画面は動き回り、現れた敵は1秒としない内に倒されていく。
敵の攻撃は、まるで無駄のない動きで交わし、タイミングぴったりでカウンターの攻撃を仕掛けて行く。
完璧だ。素人から見てもその凄さはハッキリと分かる。
ふぅ・・、とユーリは息を吐いて、クリアの文字と共に終了すると、ユーリはモニタールームに戻ってきた。
彼のカバンの中からひょことユーリのコスモ・シード―シュナイダーホーンとストライクモンキーがエリカのコスモ・シード・テレ-ゼロップと一緒に顔を出した。
「あ、エリカ、いたんだ」
「―まだまだ動きが甘いですわよ」
エリカがいかにも爽やかな笑顔で言った。
「うっせ―・・」
「じゃ、交代ですわね。ユーリ、あなたに基本を見させてあげますわ」
「そりゃ、どうも・・」
「エリカお嬢様、2時からのお勉強までには終わらせて下さいね」
「そんなの言われなくてもわかってるわよっ」
エリカが訓練室に入りながらサブルームにいるメイド達に言い放った。
「・・それでは始めます!」
エリカは画面に向かって、キッと睨んだ。

「神威、おいしいか?」
すぐ隣でおいしそうにキャンディーをなめている弟にリュウトが優しく微笑みながら聞いた。
「うんっ」
「よかったな」
「――剣崎君て、神威君が本当に大切なのね」
「う、うん・・。まあね」
神威の目の前にいきなり、アークペガシアドリルが物ほしそうな、甘えた表情でいきなり現れた。
「「「うわあああああ!!何だ、それ!!!」」」
ミサキ、雄介と武がアークペガシアドリルの出現に驚いて、あっという間に後さずった。
「な、何で、アークペガシアがここに・・」
「かっ、可愛い!お兄ちゃん、何これ~」
神威がアークペガシアドリルを手に乗せながら可愛い笑顔で聞いてきた。
「・・えっと、それはアークペガシアドリルだよ」
「アークペガシア、菓子食べたいって言ってるぞ」と、スバルが言った。
「えっ、そうなの?じゃ、僕あげてみる~」
「スバルって、コスモ・シードの言葉わかるのか?」
「うん、まぁ」

球体の鋼の身体を持つデビルが分裂しながらエリカ達が操縦するベルタンディーの機体に数秒間ずつ跳ねながら衝突してきていた。
『がはははは・・・』
「・・くっ」
テーラクリスタルを搭載し、冷たい蒼の翼パーツを背中につけた穏和な性格の勇者ベルタンディーは守りの体勢に入っていた。
「エリカ、ユーリ、翠、次の行動指示をお願いします」
「―スリプーサーベルの能力「スリープソング」で敵の攻撃を一時的に中止させ、ストライクモンキーとテレ-ゼロップは一定以上のダメージ貯まったからもう攻撃力とスピードがアップしてるから敵の本体に向かって分裂した2体を投げてくれないか。・・これでいいか?」
「OK!ユーリ」
「わかりました」
「では、ミッション開始!!ヴァルディアス、トリプルモード!!」
ベルタンディーが三つの光に一気に包まれ、輝き、デビルが何かと動きを一瞬止めた。次の瞬間、巨大化したスリプーサーベルが特殊な電磁波を出して謡い出した!
スリプーサーベルの心地いい音楽を聴いたデビルの本体は身体から力が抜け、攻撃を止め、ぼーっとした夢見がちな表情になり動かなくなった。
分裂したデビルの2体は、それぞれストライクモンキーとテレ―ゼロップにバックをとられ、その2体が振り向いた時には2体のコスモ・シードは攻撃体勢に入っていた。
『何ぃ!?』
「―テレ―ゼロップ、能力発動、ワンステージ「バックビットアッパー」!!」
「―ストライクモンキー、能力発動、ワンステージ「ヴァルアソーサー」!!」

カァカァ・・
勇牙達の頭上でカラスが赤い夕焼に向かって泣きながら飛んでいた。
「じゃあな、勇牙」
と、皆は勇牙にそう言い残すように言うと去っていった。残っているのは勇牙の父としゃべっているミサキやスバルくらいだった。
バラバラ・・
その時、頭上からヘリコプターの音がサイレンのように鳴り響いた。
耳がツ―ンといたくなるほどその音は近かった。恐らくすぐ近くを飛んでいるのだろう。
「・・な、何だ?」
耳を押さえながら空を見ると紋章入りのヘリコプターが数枚のチラシを勇牙の家に向かって散らばるように落としていった。
「・・あ、誰か出てきた」
出てきたのはマイクを持ったヴァレンタイン家のメイドだった。
「―草薙勇牙様、皇 スバル様、水瀬川リュウト様。お嬢様より伝言です。「8月4日の明朝までにイギリスにある私の家に来なさい。貴方達を偉大なる私の誕生日パーティーにお招きしますわ」とのことです」
「お、お誕生日パーティー!?何で、オレ達が行かなきゃ・・」
「あ、チラシに場所が指示されてる・・」
「なお、来れない場合は貴方達の他人に知られたくない秘密をばらすそうです」
「「!!」」
2人の顔が真っ青になった。
「それでは。お待ちしています」
ニッコリと微笑んでそのメイドはその場から去っていった。
「・・ねえ、今の何なの?・・って、2人とも・・」
2人ともガタガタと身体を震えさせていた。



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