ＲＩＶＥ５－出撃、ヴァルディオン！

アオイのいるマジカルステーションでいきなりけたたましい警戒音が鳴り響き始めた。
『非常事態～、非常事態～』
「・・なっ、何なの、これは！？・・とにかく、グラディオン達と連絡とらないと・・」
アオイは、コンソールを取り出し、慌てた手つきでキーボードを叩き出した。

「―き、君は・・・」
ケントは、何だか胸の中がドキドキし始めたのを感じていた。
・・なんか、顔が熱い・・・。
「――貴方」
少女がゆっくりと唇を動かし、じっとケントを見た。
「貴方、誰なの？なぜ、こんな所で眠っていたの？」
「・・え、オレ？オレですか？」
「ええ・・」
「・・ゆっ、結城ケントと言います！！」
「――声大きい・・」
「・・あ」
――・・何、緊張してるんだろう、オレ。
あっ、そうだ・・。早く、グラディオン達に連絡取らないと・・！
ケントは右手に装着された腕時計型通信機でグラディオンに連絡しようとカチャカチャと操作し始めた。
「あれ？あれれ？」
「どうしたの？」
「・・・通じない」
一方、ウイルスモンスターが作った迷路の近くでは呆然となっているグラディオン、ナオキとショウの姿があった。
「・・ケント君」
「――ケント・・」
そこへ、アオイからの通信が入った。
「ショウさん、ナオキ君！」
「「アオイ（ちゃん）！？」」
「そっちでなんかあったの！？ケント君とグラディオンのデータが切り離されてるんだけど」
「・・・それは」
「ショウさん？」
そこへ、ネットポリスと英語で書かれた白い羽を生やした巨大なドラゴン型のウェブナイトが飛び込んできた。
「！？え？」

沈んだ表情で紙袋を持って街中を歩くジャンは、周りの騒がしさに目もくれず、ただ歩いていた。
「・・ガリュ―ン」
「ジャン・ジャック・ジャガールさん？」
コツン、と足音を立て黒いコートを着た同じ年くらいの少年と一つ下くらいの背が低い少年がジャンの前に立ちはだかった。顔はよく見えなかった。
「？・・君達は？」
「――オレ達は「ネメシア」だ。ガリュ―ンを探してるんだろ？お前のウェブナイトを攫った奴らから奪い返してやるよ」
「！！何で、君達がガリュ―ンを・・！？」
でも、ガリュ―ンを奪い返してくれるって言ったよな。
「それは返答できない。ただし、条件がある」
「条件？」
「・・お前、結城ケントの敵となって、お前達の力で倒せるか？」
ジャンの心臓がドクンとうなった。
「・・何で、僕が」
「―まあ、無理だろうね。兄ちゃん、友情とかにこだわって、結城ケントに負けてるからな。能力的にも精神的にも利用されるしか能がないもんな」
「Ｘ－Ｂ！」
「・・何だよ、Ｂ－スリー」
・・僕がケントに負けてる？
「・・・・あの」
「何だ？」
「君達の話、もうちょっと聞きたいんだけどいいかな？」
くしゅん！
ケントは思いっきりくしゃみをした。
螺旋階段の最後の段を下りようとする少女は、少し驚いた様子で口を僅かに動かした。
「あ、ごめん」
「・・・何で、謝るの？」
「いや、だってさ・・」
ケントは恥ずかしそうに頬を赤くして、笑いながら顔をかいた。
「―・・早く、出口探しましょう、ケントさん」
少女はケントの手をぎゅっと掴むと、スタスタと迷路の中に入っていった。
「え？今、何て・・」
「・・ケントさんって、呼びましたけど・・。―もしかして、名字の方が良かったですか？なら、変えますけど」
「いいです！！どうぞ名前で呼んでください！」
ケントは顔を真っ赤にしながら、きっぱりと嬉しそうに言った。
「・・そうですか」
「・・・・そういえば、オレ、まだ君の名前知らないや。・・何て、言うんですか？」
「・・・アンジェリクリュウ・エリュ―テーラ・ヴァニア」
「・・それが名前？アンジェリクリュウ・・、エリュテ・・、？？？、何か覚えにくいな。そうだ、呼び名つけていいか？アンジェリクとか！」
「・・・・」
あれ、もしかして、はずした・・？
アンジェリクは静かに涙をこぼすと、「・・初めてです、そんな事言われたの・・。私、大変嬉しく感じます・・」と嬉しそうに笑いながら言った。
「・・そりゃ、どうも」
「じゃあ、行きましょう。ウイルスを早く見つけないとこのまま私達も飲み込まれてしまいます」
「あ、うん・・！」
アンジェリクは、白と赤のリボンがついた球体の水晶がついているバトンを取り出すと、ケントの手を取って、思いっきり迷路の壁をそのバトンで破壊した！
「・・・・・え？」
「いちいち、探し回るのは時間を無駄にするので、この迷路を破壊してウイルスの所まで行きます！いいですね、ケントさん！」

「―・・キラ、降下するぞ」
ボリュームのある薄い黄色の髪の少年は、そのウェブナイトに備え付けられたブリッジの中でそう言うと、カチッとスイッチを入れた。ウェブナイト・鳴滝の口がゆっくり開き、ゲートが開き、勢いよく新幹線が飛び出した！！
「ファイターモード！！ヴァルディオン！！」
その新幹線は、あっという間にグラディオンと同じ剣闘士型ウェブナイトの姿になった。白い翼に蒼と白ののフィルムスーツのヴァルディオンの、　その姿は何処か気品と神秘性を感じられた。
刹那のウェブナイトとは随分対照的な雰囲気である。
「・・なっ」
ショウ達は驚いて、ただ呆然とするばかりだった。
「――グラディオン、ダイタリオン、ドラグオン、それにそのウェブダイバー、聞こえるか？今からウェブダイバー、結城ケント救出とこの空間の破壊の為、私達、ウェブポリスの指示に従ってもらう」
ウェブポリスの制服にサングラスをかけた吉良は、冷静な口調で淡々と言った。
「ウェブポリス？・・・君達、警察なのか？」
「・・・直、君達には拒否する権利はない。ぜひにでも、協力してもらう」
「なっ、何だよ、突然来て偉そうな事言いやがって！！てめえ、何様のつもりだよ！」
「―・・もう一度言う、君達には拒否する権利はない。文句を言う気なら、其れなりの処罰を与える」
ヴァルディオンは、素早くドラグオンに近づくとその喉元に銃を突きたてた。
「・・・くっ、・・わかった」
「なら、いい・・。では、これより、作戦内容を君達に伝える。一度しか言わないので、よく聞いとくように」

アンジェリクがドカドカと壁をぶち壊していくうちにケントとアンジェリクは逃げ回っているウイルスモンスターに遭遇した。
ウイルスモンスターは牙をむき、ケント達に襲いかかってきた！
「・・わっ！危ない！」
ケントは慌ててアンジェリクを自分の後ろに隠そうとした！
「――今だ！！」
ケントの頭上に吉良の声が飛びこんできた。
「！？」
その瞬間、ドラグオンの胸のエンブレムから発射される「スターダストレイザー！！」がその迷路の結界の隙間から飛びこみ、一気に結界を吹き飛ばされた！
「これは、ドラグオンの・・、じゃあ！！」
ケントの視線の先にグラディオン、ヴァルディオンとドラグオンの姿が飛びこんできた！
「？・・誰！？」
「ケント！」
「グラディオン！」
ヴァルディオンは、ウイルスモンスターの周りに「危険回避」と英語で描かれた細長いシートを投げ込み、ウイルスモンスターの身体を拘束した！
その瞬間、迷路が消えうせ、ケントとアンジェリクは空間に投げ出された！
「うわああああああ！！」
その瞬間、落ちていくケントの体はすぐさまグラディオンの中へと運ばれた！
「大丈夫か、ケント」
「・・ああ。って、そうだ、アンジェリクは！？」
ケントがバッと身を乗り出すと、アンジェリクは胸にある赤い石から現れたコウモリのような可愛い目つきのウェブペットに抱えられ、あっという間にどこかへ消え去ってしまった。
「・・アンジェリク！？」
「―・・結城ケント、グラディオン、奴の弱点は目だ。目を狙ってみろ」
ヴァルディオンは、ウイルスモンスターの身体をきつく締めさせながらグラディオンの横についてそう言った。
「・・君達は一体・・」
「―・・早く！！」
吉良は鋭い口調でケント達を促した。
「グランブラスター！！」
次の瞬間、グラディオンの腕が変化した砲口から、閃光が走り、ウイルスモンスターの身体を吹き飛ばさせた！！
ウイルスモンスターの心臓部、通称・コアが残った。
ヴァルディオンはそれをひょいと拾い上げると、「ご協力有難う！！君達の協力、ウェブポリスとして、大変感謝する！証拠物件としてこれは押収させてもらう！」と敬礼のポーズを取って、爽やかに微笑んだ。
「・・あ、ああ」
・・なんか、苦手だな、こいつの雰囲気・・。
ヴァルディオンはお辞儀すると、白い翼を広げ、鳴滝の元へと戻っていった。
「何か、僕達利用されたって感じだね」
「・・ああ」

「よかった！ケント君！」
マジカルステーションにつくなり、ケントはアオイの熱い抱擁で迎えられた。ショウとナオキはお互いの顔を見ながら、安心したような笑みを浮かべていた。
「・・ごめん、心配した？」
「当たり前でしょ、仲間なんだから！」
「よかったカロ！」
「カロン！」

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