ナラティヴ ひとり語り

ナラティヴ ひとり語り

娘と読んだ『かさ』



 本屋で絵本を見ていると,1,2才の女の子を抱いた若い父親と母親らしい二人がやってきた。そうして,「どうして赤ちゃんの絵本ってこんな派手な色で単純な絵のものが多いんだろうねぇ」等と話しながら相談している。私は横で「この絵本,良いですよ」と言いたいのを、余計なお世話だと思いながら,ぐっとがまんして聞いていたのだった。すると二人は「うんち系も一つ入れて」と言って、購入する絵本を決めてレジの方へ行ってしまった。私が勧めたかった絵本を私の目の前に残したまま・・。
 その時の絵本を紹介しよう。松野正子作『かさ』。この絵本はいわゆる赤ちゃん絵本ではない。1985年に,福音館書店から“年少版こどものとも”として出たものだ。
 「あかいかさ あたしのかさ」で始まるこの絵本は,淡いグレーや水色を背景に赤や黄色や青の傘がくっきりと描かれている。生まれたばかりの赤ちゃんの目には,こんな鮮やかな色と単純な形の絵がとらえやすいのではないだろうか。また,「きいろいかさ きみのかさ」「あおいかさ あなたのかさ」と続く韻をふんだリズム感のある言葉もここちよく聞けると思う。
 娘が9ヶ月の頃から、この絵本の読み聞かせをし始めたが,1才を過ぎて初めて話した言葉は「あか」だった。何を見ても「あかっ!」。聞いた言葉を真似て、自分でも発してみる。自分も同じように言えることが嬉しくてしょうがないというように・・。そうやって言葉を覚えていくのだと思う。その頃はまだ,色の区別も言葉の意味も分かっていなかったと思うけれど,寝言でまで「あかっ,あかっ」と言っていたのを今でもはっきりと覚えている。

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