ねこっぽ雑記

ねこっぽ雑記

2004年01月10日
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 2日の第1部に引き続き今日は第2部を観てきました。第1部と第2部は同一演目で役替わりなので、第1部との比較を楽しみに観劇しました。
 まずはじめは「三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)」。勘太郎さんのお嬢吉三、獅童さんのお坊吉三、男女蔵さんの和尚吉三です。この作品は「月も朧に白魚の篝も霞む春の空…」という台詞が有名で、勘太郎さんは著書『歌舞伎の名セリフ 粋で鯔背なニッポン語』(光文社 2002)の中で「いつか僕も(中略)このセリフをしゃべってみたいと願っている。」と書かれていたのですが、今回とうとうそれが実現しました。そのせいか勘太郎さん、「月も朧に…」と言いながらどこか嬉しそうなんですよ(笑)。お嬢吉三というのは女装をして盗みを働く男で悪い奴なんだけど勘太郎さんがやると「お嬢を演れた…」という素直な喜びがひしひしと伝わってくるお嬢なんです。だから悪者らしさはちょっと薄かったかな…と。あとは念願の役だったせいか、台詞回しが普段よりずいぶん乗りに乗っていました。とにかく勘太郎さんは役への思いが感じられました。なんか結局嬉しそうな勘太郎さんを見ていたら終わっちゃいましたね。獅童さん、男女蔵さん、ごめんなさい。
 次が「毛抜」。粂寺弾正は獅童さん、巻絹は亀治郎さん、小野春風は勘太郎さん、秀太郎は七之助さん、秦民部は男女蔵さん、そして坂東新悟君が錦の前で登場しました。男女蔵さん主演の第一部では高島屋型の上演だったのに対し、今回は成田屋型の上演。獅童さんは團十郎さんから指導してもらったのだそうです。だから台詞の言い回しがすごく團十郎さん似なんですよ。聞いていて「そうそう、團十郎さんってそうやって息継ぎする癖がある!」などと思ったりして。ただその分台詞が獅童さんのものになっていないなという気はしました。
 それにしても第一部「三人吉三巴白浪」の男女蔵さんに第二部「毛抜」の獅童さんと、お二人とも非常によく團十郎さんの台詞回しの特徴をつかんでいらっしゃいました。それで思い出したのが以前市川猿弥さんから聞いたお話。猿弥さんは声色の名人で、師匠の猿之助さんはもちろん勘九郎さん、吉右衛門さんなどいろんな方の真似が本当にお上手なのですが、猿弥さん曰く、「團十郎さんの真似は簡単。誰でもできる。」んだそうです。役者仲間でも結構な人が團十郎さんの真似をマスターしていて、猿弥さんたちはたまに「3人團十郎」とか言ってみんなで團十郎さんの真似をしているらしい(笑)。ちなみに役者さんって結構他の役者さんの真似をしたりするらしくて、猿弥さんは「玉三郎さんが芝翫さんの真似をしたのを見たことがある」と言っていました。物真似する玉三郎さんなんて…想像つかない。
 話は元に戻って「毛抜」の感想。巻絹は亀治郎さん。勘太郎さんとは全然違った印象を与える巻絹で、しっかり芯の通った女性という感じ。ある雑誌で亀治郎さんが「巻絹って今で言えば野際陽子さんみたいなイメージ」とおっしゃっていましたが、まさにそんな感じの巻絹でした。だからセクハラされても「キャー、助けてー!」と動揺するのではなく「なんなのよ、このスケベ男」とあしらってしまっているような感じ。そして第一部の秀太郎に続き巻絹の「ビビビビビ~」の台詞もすごくうまかった!最初の4つの「ビ」は軽く言っておいて最後の「ビ~」を歯茎も見えんばかりに言い放つんです。それでも品が悪くならない。うまいなぁと思いました。
 春風の勘太郎さんは化粧をしたら勘九郎さんそっくり。うつむいているところはどこか七之助さんを髣髴とさせて「ああ、家族なんだなぁ…」と。七之助さんは若衆の秀太郎でしたが、ちょっと女形になりすぎなように感じました。あとは錦の前の新悟君を見ていて、「錦の前って本来はこれくらいの年なんだろうな」と思いました(新悟君は13歳)。そしてお父さん役の門之助さんと並ぶとすごくいい感じなんですよ。面白かったです。
 ちなみに成田屋型ですが、一般的に上演される高島屋型と比べて話の進み方がくどい印象を受けました。あとは観客とつながりを持とうとする傾向が強かったです。私としては高島屋型の方がいいなと感じました。
 最後が「吉野山」。亀治郎さんの狐忠信、七之助さんの静、男女蔵さんの藤太で、澤瀉屋型の上演(音楽は清元+義太夫)でした。私は一昨年の7月に猿之助さんが歌舞伎座で演じられた「吉野山」が結構お気に入りで、亀治郎さんも猿之助さんに習うとのことだったのでどんな「吉野山」が見られるのか楽しみにしていたのですが、亀治郎さんがあまりに猿之助さんにそっくりな忠信を演じたのでびっくりしました。いくら教えてもらったからといってあそこまで似せられるものではありません。台詞の言い方はもちろん化粧・目の表情・動きまで本当にそっくり。猿之助さんの癖をそのまま亀治郎さんがもらってしまったという感じでした。特に目の表情まで一緒なのは驚かされました。亀治郎さんは猿之助さんの本質的な部分までも受け継いでいるのかなと感じました。確かに亀治郎さんって普段からすごく猿之助さんに似ているんですよ。話し方や話す内容もそっくり(同じ?)だし、なんでも星座と血液型まで一緒らしい。そこまでそっくりだと舞台も似るものなんでしょうか。猿之助さんに似ているといってもやはり体の動きが亀治郎さんのほうが活発であるとか猿之助さんのほうが感情の込め方がうまいとかいろいろありますが、それにしても凄かったです。「芸の伝承」ということと同時に「精神の伝承」ということを考えさせられました。
 まだまだ書き足りないくらいですが十分すぎるくらい書いてしまったのでこの辺で。





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最終更新日  2004年01月14日 00時01分13秒
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Re:新春浅草歌舞伎第二部感想(1/10)  
 こんばんは、佐藤と申します。この度は、佐藤の設定したテーマを使ってくださってありがとうございました。ご専門も近世なのですか?
 大学院は、文学だとこのご時世、就職が大変なのですが、そもそも大学で勉強・研究することと就職とを直接結びつける風潮がよくないですね。
 院生の期間は舞台も学生割引で見られますし、その間に目を肥やしておくことも大事です。特に都内の大学であれば、ホント、チャンスです!佐藤の勤務先は日本語日本文学科が廃止、それに代わる学科の再編もないまま来てしまい、学生を舞台鑑賞に引率する機会もなくなってしまい、ねこっぽさんのような方を拝見すると、世の中まだまだ捨てたもんじゃないと思います。当HPにも遊びに来てくださいね。 (2004年01月12日 00時52分39秒)

Re:Re:新春浅草歌舞伎第二部感想(1/10)  
ねこの散歩  さん
報告者@佐藤研さんの書き込みなのですが・・・

> 大学院は、文学だとこのご時世、就職が大変なのですが、そもそも大学で勉強・研究することと就職とを直接結びつける風潮がよくないですね。

私もそう思います。
かつて私も学生だった頃、うちの大学は確か、文学系と経済系かなんかに分かれました。
私は文学系だったのですが、文学派の教授陣は、実践的なことは会社に入ってから覚えられるけど、文学を感性でもって観賞するのは、今、このときしかできないことだ、といってました。それに呼応するかのように、「今をいきる」の映画の中でも、ロビン・ウイリアムスが言ってました。かなりうろ覚えですが、エリート高校生に向かって彼は、医者になりたい者、企業家になりたい者は、詩の授業なんてなんになるだろうと思ってるだろう。けれども、愛・美・文学(詩だったかな)は、これこそ生きるために必要なことなのでだ!、と。高々と宣言しています。
私も本当にそう思ったし、その通りだったと思います。
今、このようなご時世ですので、悠長なことを言ってる場合ではないかもしれませんが、でもでも、そういうのがあっていいと思うし、あってほしいと思います。なので、ねこっぽさんはとってもいい位置にいらっしゃるなあ、と私は思います。
(2004年01月12日 07時56分27秒)

Re:Re:新春浅草歌舞伎第二部感想(1/10)  
ねこっぽ  さん
報告者@佐藤研さん、はじめまして。カキコ、どうもありがとうございます。今まで佐藤さんが設定されたテーマの存在を知らず、「最近観た舞台」というテーマを使用することが多かったのですが、この間偶然「こんな舞台を見た(古典芸能編)」のテーマを見つけて「私の日記はまさしくこれじゃないか!」と大喜び。さっそく使わせていただきました。これからもお世話になることと思います。どうぞよろしくお願いします。
 さて佐藤さんのカキコ、改めて大学院進学を考えるよいきっかけとなりました。私自身大学院に進んで勉強したいと思う一方就職が気になるのも事実です。でも以前も書きましたが大学を卒業してそのまま就職、ではなんだか一生後悔しそうな気がしたんです。勉強ってもっと楽しいものなのではないか、自分はそれを知らないまま大学を卒業しようとしているのではないか、と思って。そんな気持ちが先に立っているので、大学院を出た後のことは「なるようになるさ」くらいにしか考えていないかも…。でも佐藤さんの仰る通り大学院に入ることができたらいろんな意味でチャンスが広がると思いますし、是非行けたらいいなと考えています。
 ちなみに私の専攻ですが、一応近世なんですけど実際は中世と近世のハーフといった感じです。

(2004年01月12日 20時08分32秒)

Re:新春浅草歌舞伎第二部感想(1/10)  
ねこっぽ  さん
ねこの散歩さん、こんばんは。
私が大学院に行きたい理由として、勉強をより面白く感じられる自分になりたいというのと同時に、文学や舞台など様々な素晴らしいものにもっと触れることで自分自身を高めていきたいというのがあります。時々「世間知らずだからこんな呑気なことを言っていられるのかも。」と思うこともありますが、でもやはり自分を高めていくことって大事だと思うんです。自分自身がどんな人間であるかによって同じことに対する考え方も変わってくると思いますし…。かなり生意気なことを言ってしまいましたが、私は今そんな風に考えています。
そんなところへ今回のねこの散歩さんのカキコ。私の大学院へ行きたいという気持ちがぐいぐい後押しされました。

(2004年01月12日 20時10分02秒)

あらためましてお邪魔します  
ねこっぽさん、こんばんは

>ちなみに私の専攻ですが、一応近世なんですけど実際は中世と近世のハーフといった感じです。

 ほほぉ~、近世の堂上和歌とか?……なんてつまらぬ詮索はよしましょう。とりあえずは院試に向けて頑張ってくださいね。近世芸能も嫌いではないので、今後ともよろしくお願いいたします(オフラインでも知り合いであることを判明した多門さんとは、何度か歌舞伎の舞台で偶然一緒になっています)。
(2004年01月13日 01時47分44秒)

Re:あらためましてお邪魔します  
ねこっぽ  さん
 報告者@佐藤研さん、こんばんは。
 「中世と近世のハーフ」なんて格好つけてみましたが、早い話が中世と近世のゼミに同じくらい顔を出しているという意味なのです。中世では「平家物語」が好きで、近世ではご覧の通り歌舞伎が好きです。
 和歌は……疎いですね(泣)。来年度他大に移られる教授が向こうの大学で「詩歌論」の講義をされると聞いたので聴講に行こうかなと考えているところです。
(2004年01月14日 00時01分13秒)

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