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奏山シリーズ1[多目的ホール殺人事件]
名探偵奏山シリーズ1[多目的ホール殺人事件]
都内の某所にあるHG学園は、昔は植木の名所として知られた、由緒ある進学校である。
この日、朝に生徒朝礼があり、生徒会長である奏山(かなでやま)は、司会を務め、何百人もの生徒を整列させていた。
そして朝礼終了後、3年生のみ1時間目のロングホームルームで学年集会を開くため、多目的ホールに移動した。校長である蛸箸先生による話が淡々と進んで行くのを、奏山は横から見ていた。
蛸箸校長はうるさいG組を迷惑そうに見ていた。それに気を利かせた迅藤(じんどう)学年主任が、
「こらァそこさっきから下向いて何やってんだァ!!!」と怒鳴った。迅藤は、よくキレる国語科教師で、生徒から『ボブ』というあだ名で呼ばれ親しまれていた。
そして、集会が終了した時、(相変わらず)態度の悪かったG組だけが残された。奏山もG組の生徒である。
G組担任の犬田は数学教師で、真面目なのか変人なのかよくわからない風格で、生徒から『マスター』と呼ばれていた。
「お前らなぁ、今度態度悪かったらなぁ、えーと・・・その・・・な、なんかするぞ!!」なんだそれ、という感じで生徒はしらけた。
「まぁいい。お前ら教室に戻れ。」犬田が言うと、G組の生徒はぞろぞろと教室に戻っていった。
G組の2時間目は古典で、担当教師は迅藤だった。
「そぉーい出席とるぞぉー!浅田ァ!池上ィ!・・・」淡々と出席をとっていく。「・・・吉凶ゥ!与根波ィ!・・・与根波ィ!!休みか~?」
「朝礼の時はいましたよ。」奏山が言った。
「学年集会の時もいたよ。俺、隣に並んでたから。」与根波の次に背の低い日尾が言った。
「そうか、トイレでも行ってんのかな。まぁいい。授業するぞー!まず、源氏物語について…」
その頃、隣のF組は体育だった。この日はいつものバスケではなく多目的ホールで体力測定だったため、皆文句を言っていた。蛸宮は、体育係だったので、測定道具を出す為に、早く多目的ホールの鍵を開けに行った。そして中に入ると、与根波が血を流して倒れていた。「うわあああああああああああああ!!!!!!!」蛸宮の悲鳴が学校中に轟いた。
「どうした蛸宮~?」体育教師、南澤が近寄ってきた。
「こ、これ・・・し、死んでるんですかね・・・・・?」蛸宮が与根波に近づいた。
「触るなッ!!!!」南澤が言った。「待ってろ。俺が皆に伝えてくる」
すぐさまこのことは学校中の教師に伝えられた。混乱するといけないので、教員と、生徒会長の奏山、第一発見者の蛸宮だけが現場に集まった。与根波は仰向けに倒れ、広がった真っ赤な血は乾いていた。
「・・・今すぐ、警察を!!」
犬田が言った。しかし、HG学園の徳川理事長は、このことが公になり、学園の印象が悪くなることを恐れ、「待て。落ち着いて行動しよう。生徒同士の悪ふざけだったとしたら、警察に伝わったら、おおごとだ。」と言った。
「なら、救急車を呼んできます。」犬田はそう言うと、多目的ホールを出て行った。
「しかし、1時間目のロングホームルームで多目的ホールは使った。学年集会が終わったのが9時15分頃ですから、それ以降に彼の身になにかあったんだな。」「一体誰がこんなことを・・・・」先生が口々に言った。
その時、犬田が駆け込んできた。
「大変です!今朝集めた3年生の修学旅行費が職員室の金庫から無くなっています!!」
「な、なんだと!!??」一体犯人は誰なのか・・・・
「本当に死んでるんでしょうか・・・?」迅藤が与根波に触ろうとした。
「待て。こういうのは我々がすることじゃない。救急車が来るのを待とう。私はここにいるから、君たちは教室に戻り、生徒を落ち着かせなさい。」徳川が言った。こうして教師たちと奏山らは教室に戻らされた。奏山は考えていた。(妙だ・・・血液っていうのは、なかなか乾くものじゃないし、乾くと黒く変色して、ひび割れるはず。でも、あの血は乾いてるのに鮮やかな赤色だった。なぜだ・・・)
その頃徳川は一人多目的ホールに立っていた。(一体、何がおきたんだ・・・我が校もこれまでなのか・・・?)
その時、与根波の体が、僅かに動いた。(!!!??)そう思った瞬間、突然、頭がクラっと来て、その場に倒れこんでしまった。
救急車が到着した。しかし、そこには倒れている理事長が居ただけで、与根波の姿はなかった。
「どぉーなってんの!!?」迅藤はイラついていた。謎が謎を呼ぶこの事件。もはや我々の手には負えない・・・。
その時、奏山が現れ、「ちょっといいですか?」と言うと、与根波の血痕の元へ近づいていった。
「奏山!!しゃしゃり出るな!!」迅藤が怒鳴った。
「わかりました・・・・」奏山は言った。「与根波は、まだ生きています」
「またしゃしゃり出てきとるよぉ~~!!!抗議する!!生きてるとは、どういうことだ!!!こんなに血痕も残っているじゃないか!!!」迅藤は混乱しているようだ。
「いえ、これは血ではありません。塗料か何かでしょう。犯人は、これで与根波が死んでいるように見せかけたんです」奏山が言った。
「しかし、何故犯人はそんなことをする必要があったんだ?」犬田が聞いた。
「恐らくその混乱に乗じて、職員室から修学旅行費を盗み出すのが目的だったのでしょう。」奏山が言った。
犬「じゃあ、何故与根波がいないんだ・・・?」
奏「それが謎ですね・・・」
そういったきり、奏山はそのまま深く考え込んだ。(なぜ、そんな姉歯な偽装工作をしたのだろう…?)
その後、蛸箸校長と徳川理事長とトップとする緊急職員会議が開かれた。無論、生徒たちの安全を第一に考えて、集団での下校となった。しかし、生徒会長奏山は先程の推理を先生たちに誉められて、残ってよい事になった。さらに、これ以上の混乱を防ぐ為、事件関係者全員に箝口令が敷かれた。
奏山は学校のトイレで事件について考えていた。(一体誰が、何の為に、どのような方法で盗み出したのだろうか…?)
1時間後、ようやく考えがまとまったところで、迅藤に呼び出され、職員室に連れてこられた。
「さあ、奏山。そろそろ君の意見を聞かせてもらおうかな?」迅藤他先生方が見守る中、奏山は推理した事を伝えた。
「現段階でわかっていることだけを述べます。推測や先入観は事件を霧に包んでしまいます。」と前置きして始めた。
「まず動機ですが、これは修学旅行の代金を盗み出す事であるのは明白です。次に、与根波ですが、奴は今頃逃亡しているでしょう。さらにわかっているのはこの事件には共犯者が存在します。ですから…」こういったところで、迅藤に遮られた。
「ちょっと待った!異議あり!『共犯者がいる』という証拠は何だ?」迅藤が叫んだ。
「先生、とあるゲームのパクリは構いませんが、誰であるかはまだ不明ですが、証拠はあります。なぜなら、『与根波には犯行は不可能です。』証人は蛸宮、南澤先生です。実際、盗まれたのとほぼ同時刻に与根波は死んだふりをして多目的ホールにいます。徳川理事長もはっきり見ていますよ。」そう奏山は切り替えした。他の先生方も口々に事件を推測した。
「はぁぁぁぁぁぁ~~~。」その熱い討論の合間に、大きなため息が聞こえてきた。「俺のクラスの与根波が金を盗んで逃げているなんて…。はぁぁぁぁぁぁ~~~。俺なんてダメな男だ…。」と犬田。やはり相当ショックのようで、目には涙がにじんでいた。
「心配しないでください、犬田先生。きっと、与根波は誰かに利用されたんですよ。」奏山が慰めた。
「そうだよ、犬田。心配性は昔からだが、そんなに心配しすぎても何も始まらん。今は、この事件の解決をさせようぜ!」迅藤もそう言ってくれた。他の先生も口々に慰めの言葉をかける。
「ありがとう。奏山…。迅藤…。皆さん…。」が血の気がひいてしまって青褪めている様に奏山には見えた。
その後、徳川理事長が、堰をきったように咳払いをしたため、職員室には嫌な空気が流れていた。蛸箸校長が、
「みなさん。今日はゆっくり休んでください。明日、教員全員協力して犯人を捕まえましょう!それまでは、学校閉鎖にしておきます。」といい、ひとまず解散になった。
この事件に直接関係のある、迅藤、南澤、犬田の3人、さらに奏山は学校に残って、捜査を続けていた。今は、午後5:00である。
「ああ、手掛かりは何も無いし、与根波はどっか行っちまうし、最低だな。」迅藤が言う。南澤も犬田もその意見に賛成のようだ。しかし、奏山は違ったようだ。
「先生!しっかり探して楽しく修学旅行に行きましょうよ!」奏山はなぜかハイテンションである。
「お前、何でそんなに元気なんだ…?俺は疲れた。与根波の奴、覚えとけよ…。」南澤がやけになりながら呟く。
「なら、迅藤先生と南澤先生、奏山は先に帰ってください。後は私1人でやります。」と犬田が言ったので、その日は犬田を残して解散となった。
帰宅後も、奏山は事件の事しか頭に無かった。ちなみに数学の(冬休みの)宿題が100問ほど残っていたが、そんなものはどうでもよかったらしい。「どうせ明日は緊急の休みだし♪」とも考えていたようだ。
翌日、奏山は勝手に登校した。無論、迅藤にこってり絞られたが、何とか言い訳をして残留できる事になった。
早速、奏山は自己流推理を開始した。まず、容疑者を洗い出すことに。今のところアリバイが確認できるのは蛸箸校長。徳川理事長。用務員のおじさん・おばさん達、他の理事たち。蛸箸校長は、犯行時間に大勢の生徒の前で講話をしていたので絶対に不可能。徳川理事長は何者かに殴られてぶっ倒れていたので不可能。これは介抱した保健室のおばさん達の証言によるもの。用務員は校門の下で雑談していたので不可能。ちょうど上にある防犯カメラがしっかりと捉えている。他の理事や来客は誰も登校していなかったことが事務員によって確認された。つまり、アリバイが無いのは生徒と先生全員、ということになる。
次に盗まれた修学旅行のお金が入っていた金庫。こちらは中学職員室の端においてある指紋認証で開けるタイプのもの。登録されている指紋は、徳川理事長と蛸箸校長の2人のみ。新たに登録するには業者を呼ばなければ絶対に出来ない。ドリルやバールによってこじ開けられた形跡も無かったので、『正規の方法』で開けられたものと判断した。つまり、徳川理事長と蛸箸校長のいずれかの指紋で開けられた、と。
奏山は悩んでいた。『どのようにしてロックを解除したか?』これさえわかってしまえば、それで犯人が割り出せるとも考えていたので余計頭が痛かった。そこで気分転換、リフレッシュをしに近くのエトアs…じゃなくて梅よしに行った。そこで梅よしのおばちゃんとトークを楽しんでいた。
「みっちゃん、そこのガムテープを取ってちょうだいな。」
「はいはい。てか、何の為に使うの?」
「ポスターを貼った後の糊が残っちゃったから。こうして、粘着には粘着で対抗するの。なんだか気持ち悪いでしょ?」
「テープ…はがす…のり…!そうか!わかった。どうやって金庫を開けたのか!おばちゃんありがと!早く迅藤先生に知らせないと…!」奏山は一気にテンションが上がり、ダッシュで職員室に向かった。
「ティーチャーズ。アテンションプリーズ!」なぜか英語で叫んだ。
「What’s happen?」負けじと犬田が聞き返した。
「もう英語は辛いのでやめますが、トリックがわかりました。」
「な、、、なんだってー!」MMR風に全員がリアクションした。奏山はちょっと笑ってしまったが構わず続けた。
「トリックはいたって簡単です。」そういってゆっくり話し始めた。額には汗がにじんでいた。
「たとえば蛸箸先生がセロハンテープに触り、それを人差し指にでも巻きつけます。それで、指紋認証機にかざすとどうなりますか?」ここで一旦話をやめて実演する事になった。奏山は蛸箸校長の指紋の付着したセロハンテープを指に巻いて、指紋認証機にかざす。
「ピピピ。認証を完了しました。ロックは解除されました。」機械の自動音声が鳴り響いた。静かな職員室にはよく聞こえた。
「以上がこの事件の重要なトリックの一部始終です。どうです、面白いでしょう?犬田先生。」突然振られた犬田はぎょっとしていた。
「ははは…面白いトリックだな奏山。こんな子供騙しで開いてしまうような機械は要らないじゃないですか?」
「その通り、この金庫は必要ない、じゃなくて単なる脅しです。鍵は今の方法を使えば誰でも開けられます。しかし、どうやって指紋を入手するか?ですよ。おそらく犯人も同じトリックを使ったでしょう。ねぇ犬田先生!」
一瞬職員室が凍りついた。名指しされた犬田はおろおろしていた。
「か、、奏山。証拠はあるのか?証拠は?名誉毀損で訴えるぞォォォ!」その目は明らかに動揺していた。
「あります。G組の事件前日の時間割です。5時間目が理科Aです。担当は蛸箸校長です。、彼は怒ると黒板をバンバン叩く癖があります。その事は犬田・迅藤・南澤の先生方が中学生の頃から変わっていないんです。そして、相変わらず態度が悪いG組のことですから黒板は校長の指紋だらけです。つまり、蛸箸先生の指紋は黒板から採取されたんです!」
「ハッ。それが何の証拠になるってんだ?」犬田は開き直っていた。
「無論、時間割がそれを物語っています。事件前日の6時間目は何でしたっけ?数学A、そう犬田先生の授業です!βクラスを担当する犬田先生でしたら、毎週火曜日5時間目黒板が指紋でベトベトなのを知らないはずは無い!そして、その時間生徒達には問題演習をさせて黒板をそのままにした。そして、だらしないG組掃除当番が黒板を掃除しない事も知っている。この2つが何よりの証拠!」奏山はすっかり興奮して我を忘れて犬田に攻撃した。
しかし、犬田も往生際が悪く、
「こういう状況証拠だけでは、意味が無い。偽装だって出来るし。じゃあ、私がやったというカンペキな証拠は無いのか?」と持ち直した。今度はハッタリで攻めてきた奏山が窮地に追いやられた。
「まだ証拠はあり…ません。」ついに諦めてしまった。しかし、その時奏山に遠い先祖の魂が舞い降りてきたのだ。
「ピカーン。」OCEANやパトリキの頭よりも眩しい光が職員室を包んだ。その先祖とは明智小五郎だったのだ!
「まだ。証拠はあるぞ犬田君。君に質問しよう。君は犯行時間にどこにいた?」
「体育館で蛸箸先生のお話を聞いていましたよ。」
「それなら、蛸箸先生の『講話の内容』、覚えていますよね?この場できちんと話してください。」
最初は順調に詳しく話し始めた。一字一句間違えずカンペキに。しかし、犯行時間に近くなると段々内容が薄くなり、ついにでたらめを話し出した。このアドリブを他の先生方に突っ込まれて遂に堪忍したようだ。
その時、隠れていた与根波が姿を現した。
「先生方、ご迷惑をおかけしました。僕と、犬田先生が共謀してやりました。僕はパチスロをやるお小遣い。先生は家賃を払う為に盗んだんです。これが修学旅行の費用です。」そういって無事に全額を迅藤に渡した。迅藤は奏山を驚いた目つきで凝視していた。
奏山は事件を解決した悦びでニヤニヤしていた。その横で、迅藤は「君を信じていたのに…」と言いながら、遂に爆発して、犬田に左ストレートを3発食らわせた。「ぐはっ!!!」完全なKOだった。犬田は口から血を吐きながらその場に倒れ込んだ。迅藤は泣いていた。人前では滅多に泣かない鬼教師迅藤が泣いていた。「信じていたのに・・・。俺は奴に利用されたんだ…。」その後、迅藤は自分自身を有らん限りのパワーで殴りつけ、その場に倒れ込んだ。
「迅藤ォオオ!犬田ァアア!」南澤先生は叫び、救急車を呼んだ。
―――数日後。
犬田先生は窃盗幇助の罪で逮捕され、禁固刑になり、無論、学園も懲戒免職になった。左アゴにくっきりと青あざを残しながら。(ただでさえ持病の顎関節症で痛いと言うのに。右アゴだけど。←犬田)また与根波は窃盗で少年院に入れられることになり、学校から去っていった。そして、迅藤はと言うと・・・
その後、打撲と骨折、出血多量で緊急入院し、生死の境を彷徨ったのだが、奇跡的に一命を取り留めた。後遺症もほとんど残らず、奇跡といえば奇跡だった。無事に、あの事件から2ヵ月後に職場復帰をした。以前にも増して威勢よく振舞ってはいたが、南澤先生の必死の説得で何とか復帰したのが現状で、実際は未だにあのときのショックからは立ち直れて居ない。
残った後遺症は、『人を信頼する心』だろう、と学園の誰もが思っているのであった…。
※この物語はフィクションです。実際の人物・団体等とは一切関係ありません。モデルになった我が校の先生も実際はこんな人ではありません。穏やかで、優しい人ばかりです。この物語は所詮フィクションです。
現実世界では先生に敬意を持って接しましょう。またこれは
自作小説
です。名探偵奏山シリーズは副社長BΘBとSonaが交互に書いていきます。スタートは副社長BΘBでございます。
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