今日も良いネタ入ってるよ!

実話調査編第三話





下りのエレベーターの中でカツヤの番号が登録してある短縮ボタンを押し、「そろそろ渋滞が始まるな」なんて少し苛立ちながらポケットから煙草を出し口に運ぶ。

エレベーターの扉が開くと同時に、右手ではジッポの火を、左手では携帯の発信ボタンを押す。ほぼ同時にこの作業をしたため「手が二本あるのは便利だなぁ~」なんてくだらない事を思いながら、そんな僕の足はお気に入りの真っ黒なインフィニティへと向かっていた。


{PM4:47}
インフィニティのドアロックを空ける「パピュ」っという音と同時にカツヤが電話口に出る。

「お疲れです。どうなりました?」

久しぶりに会うのが楽しいのか、それとも仕事への好奇心なのか声は明るい。

「いや。まだこれから先方に会いに行くとこなんだが、今からお前一緒に来れないか?」

流石に今さっき電話したばかりでこの注文は予想できまいと、カツヤの読みの鋭さの上を行く展開だと勝ち誇ったように言う僕に、

「そんな事もあろうかと、うちのに連絡入れておきましたよ。僕はまだ抜けられないんで夜にでも隼人さんの家に行きますよ。」


・ ・ ・ ・ ・ こいつの読みは恐ろしい ・ ・ ・ ・


近くの物影で僕の行動を見てるんじゃないかと思わず辺りを見回してしまい、少し無言になってしまった僕にカツヤが問いかける。

「?? なにか?」


「あぁ、いやなんでもない。じゃぁあけみちゃんに電話してみるよ。」


「??? なんだかなぁ~。まぁいっか。5分前に今から家に帰るって言ってましたんで家にいると思います。電話の向こうで隼人さんの名前を連呼して喜んでましたよ。先方の所に連れて行くんでしたらテンション上がり過ぎないように抑えてやってください。」


ハハ。心を読まれているのは僕だけではなかった。

「分かった。今から向かうよ。お前も後で家に来てくれ。」

そう言って電話を切り、なんかゾクッとして辺りを見回し「いるわけないか。」なんて呟きながら愛車のイグニッションキーを回した。




{PM5:05}
カツヤの家の前でクラクションを鳴らす。テンションが高いと聞いていたのであけみにはあえて電話はしなかった。少しするといつもの決まった扉が開き、大きく手を振りながら駆け寄ってくるあけみが見えた。一目でハイテンションなのが分かるほど奇妙な踊りをしながら駆け寄って来るあけみ。

こっちが仕事を頼む立場なのに、これだけ喜んでくれるのだから、まぁ悪い気はしない。っていうかむしろ非常に嬉しい。僕にとっては可愛い妹みたいなものなのだ。あまり書くと調子に乗るので控えてはおくが、実際に顔も可愛けりゃスタイルもかなりいい。実はあけみはチラシの類ではあるが洋服のモデルをやっていた時期もあった。性格は明るくてボーイッシュな感じ。ハッキリし過ぎていて初対面の異性にはちょっと牽制されがち。だけど話してみると思いやりがあって凄く優しい人気者タイプ。((これだけ書いておけばこの先の仕事も頑張ってくれるだろう。))

そんなあけみが運転席側の窓に奇妙な踊りをしながら突っ込んでくる。

・ ・ ・ 怖い 怖い。

「きゃぁ~~~。久しぶりじゃないですか~。電話くると思って携帯握り締めて待ってたのに~~。」

このカップルは本当に憎めない。

「分かった 分かった。 ちょっと時間無いから取り合えず乗って。話は中でしよう。」

「はぁ~い。」

無邪気な返事で助手席へと周り、滑り込むようにシートにチョコンと座った。




たった2ヶ月位のもんだが懐かしいだなんだって挨拶を交わし、あけみが持参してくれた僕の愛飲のエメラルドマウンテンを差し出す。あけみはプルタブを空けてくれ、僕にドリンクホルダーに置くか今飲むかと目で合図をしながら僕の話す今回の依頼の内容を聞く。

「今回はストーカーですか。大仕事になりそうですね。」

仕事になるとキリットした表情に変わるあけみ。この子はちゃんとプライドを持ち仕事をしている。

「実は詳しい話は今からなんだ。受けるかどうかは決めていないが依頼人の状態と過去と今の状況を把握してから判断しようと思う。実際、込み合うようだと費用の面でも依頼人に負担がかかるし、ましてや情だけで受けられるような依頼じゃない。まぁ受ける方に6割ってのが今の心境かな。」

そう言うとあけみは肘で僕の左腕をクイクイっと押した。

「隼人さんの6割って受けるって事じゃん。」


・ ・ ・ ・この子もカツヤに似てきた ・ ・ ・




{PM5:55}
依頼人であるあやさんの自宅付近に差し掛かり電話を入れる。
10分ほどで着く旨を伝え、念のために車を少し離れた場所に駐車した。

あけみと二人であやさんの住むマンションの周りを歩いてみると、オートロックのマンションではあるものの、正面以外のどの方向からもこのマンションに入れてしまうなんとも不思議な敷地の囲いが気になった。



{PM6:02}
マンションの正面玄関のインターホンからあやさんの部屋のナンバーを押す。
受話器を上げる音はしたものの返答の声がない。

訪問者を警戒しているのか・・・

先に僕から「涼風です。」っと伝えると、やっと声を聞かせてくれた。

「あぁ・・すいません・・今空けます。」

思わずあけみと顔を見合してしまった。

っと言うのも彼女の声は泣いている様に聞こえたからだ。

ロックの解除された自動ドアをくぐりながらあけみが大きく深呼吸をした。


つづく

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