にのねぬな

にのねぬな

イクット・クンダン



 直訳すると、クンダンに従う、とかクンダンについて行く。
 ガムランは、クンダン(太鼓)奏者が踊り手の動きを読み取って(踊りの曲の場合)
演奏のテンポを変えたり、音の大きさを変えたり、また、アンセルに入る合図を
音で出します(時に表情やアクションも追加されます)。その合図に従い、他の
演奏者は、テンポや音量を変えたり、アンセルに入るためにストップしたりします。
この、合図を見逃すと、みんなからおいてけぼりを食ってしまうことになり、又、
クンダン奏者が無理な合図や、あやふやな合図を出すと、みんながそれについて
来られなくなります。

 クンダンは、皆が分かりやすいように、他のパートよりも少し先走って合図を
出します。たとえば、ここからガンサとレヨンの音を大きく・又は小さくしたいという場合
そこよりも少し前の時点で、クンダンの音を大きく・又は小さくします。どれ位前の
時点かは、パターンや場合によりけりで、かなり前の時もあれば、反射神経がよく
ないと反応できないくらい直前の場合もあるようです。(もちろん、例外もたくさんあり
クンダンと同時に音を大きくしたり、クンダンは小さいのにガンサは大きい、もしくは
クンダンは大きいのにガンサは小さい、ことなどもあります)

 また、テンポについても同じで、クンダン以外のパートは、クンダンのテンポの
変化についていかなくてはなりません。ただし、”音の大きさ”と違って、”テンポ”
はクンダンだけがかなり前の時点から速くなるor遅くなる、ということはありません。
(そんなこと、やれって言ったって、できないよね~。)じゃあ、クンダンとぴったり一緒に
(同時に)テンポを変えればいいのか、というと、そうでもないんです。(と私は
考えています。)

 以前、マヌク・ラワという曲を演奏したことがあります。先生がクンダンをたたき
私がカジャールを担当していました。曲の中で、テンポがだんだん速くなったり
だんだん遅くなったりする部分があるのですが、だんだん速くなる部分がどうも
うまくいきません。先生は”カジャールが速すぎる。”と言うのですが、私としては
クンダンとぴったり合わせているつもりです。先生は、”カジャールは、クンダンが
最初のンカパで示したテンポでキープする役目と、クンダンがテンポの変化の
合図を出した時にそれをみんなに伝える役目がある。テンポの変化は、クンダンが
出した、音二つ目で反応するといい。一つ目の音で反応してしまうと、テンポが
安定しないから。”と言います。私は、”??いったいどうゆうこと??”とその時は
よく分からなかったのですが、自分がクンダンをたたくようになってから、謎がすこし
だけ解けました。

 カジャールは、通常16ビートのうち、4ビートか8ビートに一回たたきます。
この、カジャールとクンダンを比較して・・・だと、説明がしにくいので、ここからは、
ガンサとクンダンの関係で説明していきます。ガンサの音4つか8つに対して
カジャールが1つたたく、と考えてください。 
 例えば曲の中で、だんだん速くしていく部分を想像してください。クンダンは、
ンカパカパで始まり、少しづつテンポを上げていくとします。

          クンダンの音  ン  カ   パ   カ  パ
クンダンの音と音の間の時間    10  9    8   7
 ガンサの音と音の間の時間    10  10   9   8
   カジャールの入る位置    ○              ○

クンダンよりも、ガンサのテンポの上げ方が、ひとつ遅れていることを極端な例で
上の表に表してみたつもりですが・・・よく意味が分からないかもしれません。
つまり、クンダンは、常に、ガンサよりも一音先に”次はこのテンポでたたいてね。”
ということを示すつもりで音を並べていきます。逆にいえば、ガンサは、常に1つ
前のクンダンの音が示すテンポで1つ遅れでついていけばいい、ということになり
ます。クンダンが、今まで10の間隔で音を並べていたのに9にしたら、あわてて、
”あ、速くなった、9の次は、8にしてクンダンとぴったりあわせなくちゃ。”とあせって
先を読むことはなく、クンダンが9を示した次の音の時に、ガンサは9でたたけばいい
のです。そのために、クンダンはガンサよりも一歩先に変化の合図の音をだしている
はずですから。

 こんな風にミクロ(?)の世界に迷い込むと、頭が痛くなりそうで、いけませんね。
実際に演奏している時には、何十分の1秒の話になってしまうので、そんなに細かく
カウントする事は不可能だし、テンポも、めまぐるしく変わっていくので、考えていると、
たたけなくなってしまいます。クンダンも二人で演奏する以上、そんなに機械が演奏
するみたいに、正確にはできません。ただ、心づもりとして、”クンダンと同時に”では
なくて、”クンダンについていく”という感じでたたけば、いいとおもいます。
これは、無意識のうちに出来る人も、たくさんいるので、出来る人は、こん
なこと考えなくて
いいのですが、私の場合、意識した方がうまくいくみたいです。
でも、あまり考えすぎると、今度は、遅れてしまったり、クンダンと全くずれてしまいます。

 この方法は、テンポをゆっくりにしていく時にもあてはまります。私の感覚では、
テンポを速くしていく部分よりも、ゆっくりにしていく部分の方が、この、クンダンに
”ついていく”感じをつかみやすいように思います。
 曲の中で、テンポが速くなったり遅くなったりする部分を演奏する場合に、クンダン
以外のパートがクンダンとぴったり同時にテンポをあげたり下げたりしてくれようと
すると、クンダン奏者は、”あ、追い越されてる。(テンポの変化の度合いがクンダン
よりも先にいっている)”という感じがします。これが、1つ遅れでついてきてくれている場合は、
”ちょうど合っている。”という感じがします。ほ~んの何十分の1秒のことなんですが
・・・ふしぎですね。

 ここでは、曲の中で、テンポや音の大きさが変わる場合のことを書きましたが、別の
章(”心の中のカジャール”)で、テンポをキープする場合のことも書きます。

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