クレドのにっき

クレドのにっき

零~天倉 澪 肆~


巫女の宿命よ、
あきらめよ。
あきらめよ。
後にうまれし我らは、
神へとおくらなければならん。
あきらめよ。
あきらめよ!八重!!

「――澪?」
はっ、とした時にはおねえちゃんが私の顔を覗きこんでいた。きょとん、としたしぐさで。昏い家屋の中は埃っぽいけれど、どこかこぎれいでもある。
…今の声は何だったんだろう…。
 澪は思いながら、ふと姉を見やる、すると――
「おねえちゃん?!」
かたかたと小さな地震がそこにだけ来たかのように小刻みに姉は震えていた。
「おねえちゃんっ何が見えて――」
目線の先、するりと『何か』が滑った。このうす暗がりの中――亡、と闇に明るい燐の灯り。
「あれ、は…」
云い終わらない内に、それは消えた。
…先に何があるっていうの…?澪は走ろうとして、その腕を引き止められた。
「駄目!澪!」
訴えてくる黒目は潤んでさえいた。「追っちゃ駄目!…連れて行かれる!」
澪は姉に向き直り、「連れて行かれる――?じゃあ、あれはやっぱり、もう…」
そう、と姉が言葉を紡いだ。先刻震えていたのが嘘のように、前を見て。
「そうよ。あれは既に魂の残り香。ここにあるべきものじゃないの。…追ったら駄目よ。連れて行かれる…」
ツレテイカレル、と彼女は言った。何処と無く喜色を帯びてさえいる声音で。
また、何かに…憑かれた…?
「…何処に、連れて行かれるの?」
澪の問いに、彼女は答えた。
「ウツロ」

 家屋の中を探し回ってから、二階の部屋への鍵を見つけた私達は、二階へと進んだ。茗荷(みょうが)の鍵は、この何十年と使われていないにも関わらず、カチリと綺麗な音を立てて、鍵を外した。

「ミテハイケナイ」


「…おねえちゃん、何か云った?」
後ろにいた姉は二階から下を眺めていたらしく、こちらを振り返った。
「?云ってないよ」
やがて扉は開いた。私達を、虚ろへと導く魔の扉は、この時将に、
私が、ひらいたのだ。


To be CONTINUED…零~天倉 繭 伍~


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