クレドのにっき

クレドのにっき

賛美歌の歌い方

賛美歌の歌い方


てゆーか、悪質なんだよ、あいつ。
何様だっつーの、尊大だし。とりあえず礼くらいは云ったらどうなの、ねえ?
まあオレも?拾った犬みたいなもんだから、そうそう目くじら立てないけどさ。犬だからさ。でも、犬なら三日飼えばナントカってゆうじゃん。あいつはそれすらも無いから、犬でもねーな。
兄貴はお節介な所があるし、拾い癖もあるから、ついつい色々拾って来ちゃうけど――コインから人間から機械まで――今回ばっかりは人生に関わる景観を疑うね!
「…いい加減、外してくれ」
シーツの上に丁寧にビニール紐、ゴム紐、ガムテープ、ベルト、鎖で梱包してやったヒイロの馬鹿が云う。
たん!と乾いた音を立てて、その顔の横にナイフが刺さる。見れば、既にヒイロの立てられた壁の周りは彼を囲むようにナイフだらけだった。まるでサーカスだ。
「うるさい。お前は梱包物なんだから、喋るな」
「任務に行けない」
デューはテイクアウトしてきたアイスをほおばりながら、またナイフの山に手を伸ばした。左手の人差し指と中指と薬指に挟んで、ぽい。
たたん!
二本のナイフは見事にヒイロの顔の右と左に刺さった。
「自爆なんて可愛いことさせねーぞ。オレを犯ったんだから、そうそういい死に方出来ると思うな?」
とりあえず、任務が完了した事は報告しておこう。但し、ヒイロの場合は…まあ、梱包されていたわけで、…あれから何日だっけ?三日?いや、二日。飲まず食わずだけど、まあ人間…いや梱包物…はそう簡単に死にゃしない。
「兄貴も、とうとうおかしくなっちったか?全く。全く全く全く!こんなやつの何処が、…うん?」
ぶつぶつ愚痴を云いながらキーを叩いていたデューは、ぴよん!という可愛らしい着信音と共にパソコン画面にメールが着信した事を知った。
「…………」
TO deu
FROME duo
SUBJECT so...
「……………………」
ああほらね、やっぱり。気まずい時はまずどっちかが折れる。
デューは嘆息しながらメールを開いた。
「……………………………」
メールの行をスクロールする度に、デューの顔はどんどん険しくなっていく。
つと、ヒイロの方を向いた。
その形相があまりにも無表情だったので、思わずヒイロは顔に出せないけれど、びくりとした。
次の瞬間。
「 こんの、超卑劣強姦魔ァ――――ッッッ!! 」
100本以上あったナイフの全てが飛んできた。
「この!げき!れつ!卑劣漢!最低!最低!ゴミ!屑!樹脂で!固めて!一生!梱包!して!やろーかッッ!」
間に、全てナイフの着弾(?)する音が入っています。想像してお読み下さい。
ナイフの山が机の上に無くなると、今度は後ろにあったトランクを乱暴に開ける、ざらざらっとナイフが更に出てきた。
一体どんだけナイフ持ってんですか。
それをまた瞬速で投げつつ、デューの罵声は止まらない。
「兄貴のッ好意を!無視!して!パーツ!ギる!だけでも!許せないのに!あまつさえ!その好意につけこんで!半年前には!今の関係だと!?てめぇ、死神!デュオ!マックス!ウェル!を!ナメて!んのかッッ!」
流石に、そろそろナイフの刺さる場所が無くなってきて、前のナイフの柄尻を押して壁にめり込む次のナイフを横目にし、ヒイロも段々顔色が悪くなってきた。
「い、いい加減…」
「 黙れ強姦魔!!! 」
今のは、寮中に響いたと思う。冷静に考えながら、ヒイロは気を失った。

 多分、悪いのはオレなんだろうけど。
デューへとりあえずメールを送信して、パソコンの前でため息をついた。
「…でも、そんな風に思ってるなら、…いっそ」
それは一昨日のこと――
いつものように、いきなりキスをされた。
「ね…なんで、任務の前になると、いつも…」
「五月蝿い」
押し倒されて、服を脱がされる。大人しくしていたけれど、何だか釈然としない。それは、否それも、いつものことで、そんなことを云えばこの行為自体だって、釈然としない。別にどっちかが好きだって云ったわけじゃないし、もし自分がそう云っても、ヒイロは「それが?」みたいなことを返すだろう。
だから、余計訊きたかった。
「…やだ。今日は、やだ。」
うなじを舐める舌を止めて、ヒイロはこちらを見た。けれど、何も云わずに再開する。
何それ。と思った。
「ねえ、やだよ、今日はやだ、今はやだ。……やめてくれって」
ぎゅい、とネクタイが引き抜かれた。両手が拘束される予感。
途端、記憶の隅に埋まっていたものが引きずり出された。
「――あ、や」
あの日の記憶、それは閉じ込めていた一番辛い記憶。
「やだあああっ!縛らないでっ」
ヒイロは顔色も変えず、きつく縛った、「なんで、やめてくれって云ってんのに!…お前にとって、オレってなんなんだよぉ!」
「――だ」
意識が凍った。
イマ、ナンテ?
いい玩具だ

ああそうだね、玩具なら大切には扱わない。替えもあるんだし。結構頑丈だからなかなか壊れないしね。
ああ、そういう…こと…。
知りたくなかった。訊くんじゃなかった!
自然と涙が零れていた。力の限り、暴れていた。
それは、あの日の再来。
「…そんなんで任務放棄しちゃうなんて、もうオレ終わってる」
パソコンの前に頭を投げ出した。目線の先に、愛銃。
「……デュー、ごめんな。約束、また破っちゃうかも…」

 件のデューはメールに急いで返信していた。
あの兄の状態だ、よもや、とかまさか、とかいう言葉は通じない。
確実に、やる。
もう約束は一つも二つも破られている。ならもう一つの最後の約束を破るくらい、仕方ないよね、なんて云うだろう。
「ちきしょう!兄貴が死んだら、オレもお前もついでにこの地球も全ッ部、道連れだかんなヒイロ!」
たたたたん!
目覚めたヒイロは流石にそれはヤバいんじゃないかな、と冷静に思った。
えっと、何のためにオペレーション・メテオなんて馬鹿な任務やったんだっけ?みたいな。
いやいやその前に、任務どうしたよ。コロニーは?
また、可愛らしい音、メールの着信。
「はぁ?任務?! やってられっか馬鹿!! 」
……………放棄?
ヒイロは動けないので、とりあえずパソコン画面に向かって怒鳴るデューを眺めるしか無い。
「やらねーと片割れ殺す?だぁから、その片割れが自殺しそーなんだよ馬鹿!止められればやるよ!あ?医者向かわせる?当たり前だ馬鹿!早くせんかい!」
忙しくキーを打って、デューはまたヒイロの方を向いた。
「全部、てめーの所為だっ!」
今度は、1キロのダンベルを両手に一個ずつ持って。
その夜、デュオ・マックスウェルとヒイロ・ユイの部屋に、大穴があいた。

歌い方 忘れちゃった
賛美歌ってどう云うんだっけ?
昔はよく歌ってくれていたひとも
今はいない。
ね、憶えてる?
賛美歌の、歌い方…。

つづく♪



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