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クレドのにっき
賛美歌とカミサマ。
賛美歌とカミサマ
全て食べ終えると、眩暈がしてきた。
ああ、そうだ薬、飲まなきゃ。
…薬…うん。兄貴との約束だけは、破るわけにはいかない。
それに五飛、お前はきっと天国にいけるだろうけど、オレは死神だから地獄行きさ。
浮遊感。
自分が自分でない感覚。
今にもそこで、五飛が笑っているような気がした。
「なんにも知らないまま逝ってしまった五飛…ごめんな。ごめんな。ごめんな。オレは双子なんだよ。お前が好きなのは、きっと兄貴の方だ」
それは間違い。
五飛はとうに気付いていたのだから。
でも、気付かないフリをしていた。
秘密が多いのは一緒だからと、気付かないフリ…
だから、張五飛が愛していたのは、デュー・マックスウェルそのひと。
「誰だ」
ばきりと枝が折れる音がして、デューは振り向き様ナイフを撃ちこんだ。相手はそれを素手で弾き飛ばし、こちらへと突進してくる。体格はゆうにこちらの2倍。
「おいっ!お前、デュ…デュオ・マックスウェルだろう?!こちらに交戦意志は無い!銃を撃つな!」
焦点の定まらない眼。明らかに正気でない。何事かを呟いている、
がちり・
「ころしてやる」
がちり・
「ころしてやる」
がちり・
「ころしてやる」
がちり…
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる地球もコロニーも連邦もOZも何もかもぶっ殺してやる!」
弾の入っていない銃の引き金を引き続ける少年。
涙は――零れていない。痛いほどの、憎しみ。何への?
老師は――スキンヘッドに無愛想な顔が特徴的、シェンロンガンダムの製作者である――言葉で云っても聞くまい、と足を踏み出した。
とたん、少年のかがめた低い態勢からの蹴りが跳んでくる。鳩尾を狙ったそれを掌底で受けとめ、足首を掴もうとするが、殆ど地面に頭をすりつけるように、老師の右へ回転し、銃把での鎖骨狙い。
「少し痛いが…我慢しろ」
銃把を握った右手首を捕まれ、肺を強打された。かはっ、と空気が漏れたあと、デューは気絶した。
その懐には、真っ黒な髪が大事に布にくるんで入れられていた。
ああ、五飛は死んだのだな、と。
老師はその時思った。
「…ぅ、ゅー!…デュー!」
目を開けると、そこは白い天井だった。
「…」
声のあるじは、主治医である、トール。
自分は――
あの夜のこと。
失ってしまったもの。
「…センセ―…オレ…」
病室の外は雨。
「…なくしちゃった…どこにいったんだろう…」
焦点の定まらない眼で云って、デューはぼんやりと呟いた。
「折角気付いたのに。気付けたのに。どうして離れてっちゃうの?」
トールはひとつ、ぽつりときいた。
「…五飛の遺体は、どうしたんだい?」
数秒間。窓を見ていた目が、きろっとこちらを見つめた。
そして、唇を歪めて見せた。
「オレがたべちゃった。ぜんぶ。ぜーんぶ。」
深い深い闇は病みは、ふたりを飲み込んでいく。
「デュオ…か?」
「はいよん。ご心配かけましたーっ。デュオ・マックスウェル兄登場でーす☆」
寮の部屋では早くも、感動(?)に拳を震わせているヒイロがいたりしたのだけど。
「えーと…4日?その間、この部屋何があったの?ダンボールとかガムテープだらけじゃん」
部屋を見まわして、不思議そうなデュオ。ふと、思い当たる。
「…この間のパソコン通信のこと、覚えてるか?」
デュオは天井を眺めて、ベッドの上に上がって、あ、ここ崩れそうなどとさらっといいつつ、「オレ薬飲んでると全然その間のこと覚えてないし、入院中はまあ確実に憶えて」
ヒイロは机に突っ伏した。
俺の、一世一代の告白は、おじゃんですか。
「ないけど…ヒイロ、なんかオレに優しかったよね」
にこ。
それは、あの画面の中で見せた無邪気な――多分これが、本当の彼の笑顔なのだろう――笑顔があった。
「だからここに戻ってきた。…それじゃ、ダメ?」
ベッドの上で手を広げてくるりと廻って見せたデュオを、ヒイロは抱きしめた。
「いつだっていいに決まっている。」
温もりが伝わってくる。
「…うん。」
戦争が終わるまでは、ずっと、ね。
深山幽谷の中に、似つかわしくない、綺麗な墓がある。
MSのパーツで繋ぎ合わせた十字架に、色とりどりの花輪が無造作にかけてある。
これも、その道の職人が作ったような正確さで、綺麗な長方形の白い化粧石が使われていた。
A.C 195年
張 五飛 享年15歳
ここに眠る
でもここには五飛はいない。
オレがあげた、彼のかばんの一番底に隠してあった、オレの上着だけが、埋めてある。
五飛はここにいる…オレの血と肉の中に溶けて混ざって一緒になった。
それなのに…あれ、どうしてかな…どうしてさびしいのかな…?
(ふれあえないから)
どうして?一番近くにいるのに
(もう、キスもできないよ)
どうして?どうして?一番一番近くにいる筈なのに!
(手を繋ぐ事も…いっしょに戦場を駆ける事も、街を歩く事、一緒にメシ食うこと、ランタンの明かりに照らされた五飛の横顔。ああ。全ては幻。)
サイドテーブルに手を伸ばした。
「…ねえ、なにか云ってよ、五飛…!」
それは、完璧なまでに綺麗な、頭蓋骨だった。
かつてここに、唇があった。
かつてここに、鼻があった。
かつてここに、黒々としたあの綺麗な眼球が嵌まっていた…。
それを抱えて、床に座り込んだ。
「ねえ、…誰か、五飛を…かえして…」
それは、感情を亡くしたデューが、初めて涙を零した瞬間だった。
死神に恋をした闘神ナタクは、自分の死と引き換えに、死神に感情を取り戻させる事に成功したのです。
だけれど今の彼には重すぎて重すぎて、死神の象徴である鎌すら落としてしまいそうでした。
モニターを見ていたトールが、走ってきた――――――。
「心拍停止!!ICUへ!カンフル用意!」
もういいの…。
ごめん兄貴、オレはもう…。
「電気ショック用意!1.2.3…!」
「血圧最低値!自発呼吸完全に有りません!!」
「諦めるな!死なせてたまるかっ死なせてたまるか!!デュー!まだ死ぬな!まだ、死ぬなあああっ!!」
TO.BE...?
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