クレドのにっき

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あい にーぢゅう!(番外編2!)

あい にーぢゅう!(番外編2!)


 デュオ・マックスウェルの朝は、お天道様がだーいぶ高くなってから始まる。
「……」
テーブルの上に、綺麗に作られたサラダや、トースト。それと、書置き。
 起きたら食べろよ
ヒイロの作ってくれたものである。とりあえず、トーストを電子レンジに放りこむ。
珈琲を自分で淹れようとしたら、既に用意されていた。

 そういうわけで、とりあえず、一食食べたら、これも用意されていた薬をちゃんと飲む。
そして、子供用のハサミ(最近のお気に入り)を持って、外へふらふら出かけるのだ。
危険、極まりない。
「となりのおにーちゃん、いるかなあ?」
ジロー・ヤマダ、さりげに危機が迫っている。
「17分割かなあ。ええとー?めんどうくさいや、とりあえずきるー」
ジロー・ヤマダ、更に危機が迫りまくっている。

 ヒイロ・ユイの朝は仕事が無くてもあっても、大体七時くらいに始まる。
同じベッドで眠っているデュオを起こさないように抜け出して、2人分の朝食を作り、デュオの薬を用意しておく。
今日は仕事なので、珈琲も用意しておく。でないと、また何をやらかすかわかったものではない。
「…子供用ハサミ、何処に隠したんだか…」
黄色い柄の、先の丸いハサミ。しかして、これでデュオは自分の首を傷つけた。ついでに隣のおにーちゃんも危ない目に遭わせている。
あれを見つけて、取り上げなければ。
「ジロー・ヤマダ…お前、狙われてるぞ…」
ああ、一日、何事もありませんよーに…と祈ってから、彼は仕事に出かける。

マンションの中庭を散歩していると、ねこを見つけたので、とりあえずモヒカンにしてみる。
「あはははははっ、げーじゅつー!」
腹を抱えて笑い転げて、それから次の獲物を探す。
右手にしゃきしゃき、とハサミ。
左手は包帯まみれ。というか、ティーシャツやジーパンの隙間から見える肌は、何処も包帯だらけだが。
「おにーちゃん、いないかなー。…あっ」
丁度、ジロー・ヤマダが中庭を通り抜けて、エレベーターへと…
「おにーちゃーん!」
彼はこちらを見、脱兎の如く階段へと走って、とても学生とは思えない速さで上って行った。
しかし、デュオだって腐ってもGのパイロット、負けているわけがない。
エイト○ンもびっくりの速さでジローを追う。
「なんでにげるのー?おにーちゃあん」
「うわー!!はやっ!そ、その手のハサミはなんですかー!」
五階について、にっちもさっちも行かなくなった。
「つーかまーえた♪」
嬉しそうに云う、ジローの腕を掴んでいる彼の左腕は、包帯がほどけて、無数の傷から血が滴っている。
こんな状況を、一般人の俺にどうしろと!!
「おにーちゃん、あ・そ・ぼ♪」
艶めいた言葉に、ああっ、やばっキそう…
そうして、今日もジローはずるずると502号室へ連れこまれるのである。

部屋は綺麗に整頓されている。…多分旦那さんがやっているのだろう。
とてもじゃないが、デュオがやっているようには思えない。
解けた包帯から、血が滴って床に血溜りを作っている。
ちょっと、嗅ぎ慣れない匂い。正直、興奮しているかも…
三日月型に弧を描く唇が近づいてきた。
「えっちょお…」
舌を絡ませ、唇を舐める。と、一緒に何か飲まされた。
デュオは、ハサミをしゃきしゃきとしながら、嬉しそうに笑う。
「あのねー、今日はちょっとおもしろいことしよーとおもってねー、ヒイロに内緒でつーはんでかったのー。」
ジローは立っていられず、床に倒れこんだ。
「な…何を飲ませたんですか、つーか何すんですかー!」
力の入らない四肢をばたばたしていると、顔のあたりに、ちょこんとデュオはしゃがみこんで、
「うんー?ちょっと強力な催淫剤。えっとね、『ふたりの夜を強力サポート!』だって。一回二錠…?」
ああやばっ、キたー!
「…オレ、適当にざらざらとったよなー…ま、いっかあ」
よくないー!!
よもや、毎回副業のテープ録音の相手にこんなことをされるとは。
今日はまだセット前でよかった…いや、そんなことじゃない。この下の熱さと、ふらふらする頭は、やばい。やばすぎる!
「ズボン、きゅうくつそー。ねえおにーちゃん、くるしい?」
しゃきん、しゃきん、とハサミを鳴らしながら、たのしそーに訊いて来る。
ああ、その幼い口調、だめっ、きちゃうvなんてやってる場合じゃないんだって!まじやば、マジやばー!
「きったげるー」
何故、その子供用ハサミでジーパンが切れる?!というような鮮やかな手つきで、丁度そこを切り取られてしまう。
「わぁ♪すっごーいこういう、薬って効くもんなんだー」
め、目で犯されてるぅううう!
「おにーちゃん、毎日ちゃんとヌいてるう?」
ええ、おかげさまで…じゃない、で、出そうぅうう…
「出ちゃう?こんじょーなしー」
くっ。だ、出すもんか…!
つんつん。
「うーん。日系だから、こんなもんかな…平均とかどーなんだろー?」
ハサミの先でつつかれております。アレを。ええ。楽しそうに。
「…今切ったら、何が出るのかなー」
ひぃいいいいいいい!!!
「きら…ない、でくださいよ…」
自分でもびっくりするくらい、やばめの声が出て、そしてそれはまたも悪循環。
「へぇ…おにーちゃん、案外イイ声してんじゃん?」
にぃ、と目を眇める…う、もうだめかも…
「…こんじょーなしー」
ええいくそ!出すものかー!
デュオは、包帯の解けた部分をハサミで切り取ると、それでジローの目を目隠しした。
「な、なに…」
「ぞくぞくするでしょ。ねぇ、おにいちゃん…」
ハサミの硬質な感触とは違って、柔らかくて暖かい感触が…ええっ!!
「あはっ♪触っただけなのにこんなぁになって…ふふ、いつまでガマンできるかなー?」
拷問にひとしい、つーか拷問以外のなんでもねー!
「ねとねとしてるーあは♪」
もうだめだ…声だけは、出すもんか、声だけは…
「ん、うっ」
「こんじょーなしー」
プライド、ぼろぼろ。

 その後、何回天国に上ったかわかりません。
ああ、やられちまっただ。おっか…。いや、掘られてはいないけど。
魂が抜けたよーな、否、抜け殻のジローがぼーっとしていると、目の前にハサミが突き出された。
「うわああああ」
壁際へ飛びのく。
きょとん、とデュオはハサミをしゃきん、と鳴らした。
「あれ。まだ、動けたんだぁ。あれだけイって」
「いわないでー!いわんといてー!」
「おにいちゃん、可愛い声出してたもんねえ」
「いやー!!!」
しゃきん、と鳴らしつつ、迫り来る…
「さ、仕上げをしよ。」
「は…?」
足腰、がたがたです!嬉しそうに残忍な笑顔を浮かべて迫り来るデュオ!手に持つのは子供用ハサミ、柄は黄色!
「先ずは…ソレ。次は…ああ!そうだ、違う、違う、アキレス腱をきんなきゃね!逃げられないように…。それから、右足を切って…お腹を切って…」
すっかり口調は幼い子供から、アブナイひとへと変化している。
ジロー・ヤマダ25歳、今度こそやばいか?!
「ただいまー…?」
旦那さんの後ろに、光が見えました。ええ。
「あ、ヒイロ。お帰り」
「… いますぐハサミを捨てろ――!! 」

 結局、旦那さんに助けられましたが、薬の副作用で病院に入院するハメになりました。
「だめだ…なんかやばい妄想ばっか出てくる」
INトイレ。
赤玉でそう。
恥も掻き捨て。
個室にこもってすること、二時間余り。
「…あー何とか治まったかな…」
念入りに手を洗う。
旦那さんの配慮で個室にしてもらったのはいいが。
「……」
静かなのがイケナイ。
と、窓がコンコン、と鳴った。
見ると、子供用ハサミの先でくるりと窓に穴を開け、鍵を開けて、
「おにーちゃん、お見舞いにきたよー」
デュオが…。
トイレに走りました。

 デュオはそりゃ、何でも出来る。
子供用ハサミをどうやって購入してきたのか…現金もカードも持たせていないのだから…まさか、盗んできた…いや、その可能性も高いか…。
黄色い柄の、先の丸いハサミ。
すっかり、マンションの住人の間では彼(彼女と思われている)のトレードマークはおさげと包帯と、ハサミになってしまった。
いつのまにか増える傷を、止めることは出来ない。
包帯を巻く。
少し嬉しそうに、包帯を巻くヒイロを見ているデュオ。

 中庭を歩いていたら、包帯がほどけてしまった。
ヒイロがせっかくまいてくれたのに…ベンチに座って、巻きなおそうとする。
けど、うまくいかない。
ヒイロはあんなにうまくまけるのに。
「…いいや」
癇癪のように、包帯を毟り取った。傷がべりべりと音を立てて開いて、血がぼとぼとっ、とベンチに散った。
灰色のそらを眺めていた。
どこへいこう?
どこへいけばいい?
「I NEED YOU…」
段々眠くなってきたので、ベンチから立って、中庭を突っ切ってエレベーターのドアが開いて

「目が覚めたか」
見なれた天井。
ヒイロ。
「ねぇ、ヒイロ」
伸ばした両手には、綺麗に包帯が巻きなおされていた。
「こんどは、いっしょにいこ?」
――どこへ…?
「わかんない。いけるところ。」
デュオの答えはいつも曖昧で、俺はそれに、いつも答えあぐねている。
不意に、抱き着いてきた。
「I NEED YOU」
呟かれた言葉に、肩が震えているのを知った。
「…I NEED YOU」
必要だと。
必要だと。
確かめ合って。
そうして眠る。

 因みに、ジロー・ヤマダが退院したのは、3ヵ月ものちのことであった。

FIN?



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