クレドのにっき

クレドのにっき

あるディセンダーの名前。2


[いや…!どうして!わかってくれないの?!]
淡い紫の髪が、緋に染まる。
[…。僕達は、時に、選ばなきゃ、なら、ない。
それは、]
わかっていた筈だろうーーと。
少年は血を吐いた。
世界は、生まれ変わることを、望んだ。
即ち、今いる人間の総てがマナに還る、と
いうこと。
少女は、桃色の髪を振り乱して叫んだ。
[いや!なんで?そんなのーーみんな死ぬってこと
じゃない!]
[世界樹がそれを決した。…僕らは従うしかない。
カノンノ。否、ディセンダー。]
少年の右肩はもう手の施しようもないほどざっくりと
斬られ、命の灯火さえ、残り少なく。
[私は…いや!]
[なら!きみは!このまま世界があの人間達に
穢されていくのを善しとするのか!?]
ディセンダーは…原則、フタリだ。
一方は人間に育てられ、世界を断じる材料を集める。
一方は危機に起こされ、世界樹と自分、そして前者の
判断で、世界を断じる。
今回、人間は世界樹を忘れ、科学により文明を発展
させたが、その結果が…これか。
[ヒトも何も、総て自滅に導く力…、見ろカノンノ。
この火の海は止まらない。あの基地から発射される
次のミサイルが、世界樹を灼く。その前に]


う、ら、ぎ、りもの…!



果たしてそれは、どちらが発したコトバだったか。
10年間過ごした相手を殺してまで、きみはヒトだけを
護りたかったのか。
僕の言葉は、きみには、…いつから、届いていなかったのか。

「本当に大丈夫?セリィ、最近沢山クエストこなして、
強くなってるけど、休む事も大事だよ?」
緋色の瞳が、私を見る。そこに、わずかなーー
「あーーはは、マジ大丈夫。ちゃんと食ってるし、寝てる。
何も。何も…」
ああそうだ、あの日もこの船の上だった。
バンエルティア号の甲板に拡がった血の海は、
ーー吐き気がしてきた。
ダメだ、ダメなんだよカノンノ。
ディセンダーは体のいい道具なんだから。
意思なんか持たなきゃいい。
公正でいなきゃ…。
誰にも興味なんか持たない。
何にも興味なんか持たない。
そうしていれば、オレは世界樹のディセンダー
でいられるんだ。
「カノンノは…もし、」
緋色の瞳が、
「世界を見捨てなきゃいけなくなったら、
どうする…?」
ーーその、笑う瞳の奥に在ったのは、そう、
「…え…?」
怖れ。

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