クレドのにっき

クレドのにっき

血塗れの紫ー玖ー

 季節はどんより、雨雲がたちこめていた。その下を、兵士達が歩く、
疲れた歩調で。疲れた歩調で。
――何処かで、また戦って(やって)きたのかなぁ、と群衆に紛れてオレは思う。
軍服の上着を着ず、白いワイシャツに、深いグリーンのズボン。髪はいつものように編んでいた。
ようやっと西の国から帰ってきたはいいけど…
特注品のブーツの下に、銀貨をめっけて、オレは屈んだ。
「らっき♪」その、頭の上を風切音をあげて、何かがよぎった。背後から殺気、オレは緩慢に振り向いた。
そこには、怯えて逃げようとする群衆、そしてオレに向けて矢を射った兵士がいた。短い上着、一平卒か。 男は半狂乱で、涙と涎を流しながら、 「どうして、どうしてあんたいてくれなかったんだよぉ!あんたがいてくれれば、いてくれれば…!!」
上官らしき、長衣を着た男が後から羽交い締めにする。が、狂乱している人間の力というのは思いの外強いもので、男は上官を跳ね飛ばし、オレの方へと剣を向けた。
その間オレはと云うと――銀貨を服の裾で拭いて、がり、と歯を立てて本物であることを確かめた。
「う~ん。これってぇ、」
男が咆哮しながら迫ってきた。群衆の女達は恐怖に顔を手で覆う。
「せいとーぼーえー。だよな?」
びくん!と男の身体が仰け反る。代わりにオレの腕分、左胸に穴が空いた。
心臓を掴みだして、少し眺める。まだ脈打つのは、打てなかった仇(?)なのだろうか。
空いた左胸から、血が滝のように飛び散る。オレはちょっと下がって、それをよけた。
兵士達の中には堪えきれず、吐く者もいた。そんなこともお構いなしに、空は泣き始める。

 「――で?罪も無い一平卒を右腕で胸ぶちぬいで殺したって?」
くらーい。さむーい。声が反響するぅ~。
「違うぅううう!あれは、正当防衛だ!!オレは悪くない~!」
こめかみを抑えるのは、ルーファス。お付きのカルアは、血塗れのオレを見て(てか、死体?)倒れた。んでだ。
「なんでお前が尋問役なんだぁああああああああああああ!」
ここは地下牢獄。重罪人の拷問や、捕虜の尋問などなど。血なまぐさぁい、この国の歴史の暗黒面が眠ってるわけ。石造りの牢の中には、水牢やら、水車やら、鉄の処女やら、まー色々揃ってるわけだが…。
オレは…。 「痛い痛い痛いいいい!莫迦ー!」
頭の上で滑車ががらがらと響く。少し離れた所で、ルーファスが見ている。手元には、巻き上げ機。レバーひとつで、お手軽に…いや、そんなことを説明しているわけじゃない。
ここは密室状態。
ルーファスが尋問役をかって出たのは…
蝋燭の火が近付いてくる。
「西の国はどうだった?」
「………魔女がいた………」
両手は鎖でぐるぐる巻きの上、そのまま滑車に繋がっている。自分の全体重がかかるんだから、半端じゃない痛みだ。
ルーファスは無表情にオレのシャツを破り、胸元へ蝋をたらした。
「あっつ!」
「いい加減な事を答えてると、もっと痛い目にあうぞ」
痛みに目をつぶっていると、灯りが遠くなっていくのがわかった。ついで、いきなりの無重力感。
「うっ…わ?!」
慌てて膝をついて着地体勢を取る。石畳に膝の骨がぶつかって、痛い。
鎖の音が昏い廊下に反響する。
ルーファスが戻ってきた。手に…く…首輪っ?!を、持って。
鉄で出来た首枷は、少しきつい。ちょっとでも動けば、枷の断面と肌がこすれて痛い。
その枷には、鎖がついていた。蝋燭の灯りが照らす――

 少し、怯えた目が心地いい。
鎖を強く引くと、リンはむせた。
「これ、面白いだろう?鎖を引くと、枷が締まるようになってんだ。…意味、わかるな?」
「…あく…しゅみ…っ!」
思い切り強く引くと、喉から息が抜ける音がした、蝋燭の灯りが照らす銀の髪は、侵したくなる。
「う…く、う…けはっ、か…」
蝋燭を足下において、屈んで目線を合わせてやる、潤んだ紫の瞳が、下からの灯りに照らされる。
「“赦してください”っていってみな。そしたら緩めてやる」
泣きながらこちらを見つめる瞳は、…ぞくぞくする。
リンのズボンのチャックを開けると、
「!やっ…」
悲鳴があがる。リンのものを軽くしごくと、この異常な状況の所為なのか、すぐにたちあがった。
「いつもより感じてるのか?なぁリン」
「は、はぁ…く…る、し…」
飲み込めない唾液が、口端から滴っている。それを、舌で受けながら、思い切り首枷の鎖を引いた。
髪紐を乱暴に引っ張って、それは、途中で千切れたけれど、縛るには充分な長さだ。
何をするんだ、という目線。たちあがったペニスの根本に紐を絡め、ぎゅい、ときつく縛った。 「か…はっ」
腰を抱き上げる。リンは殆ど息が出来ない状態で、目が虚ろに虚空を見つめている。そこにまた、犯したくなる色気がある。
グリーンのズボンは紅に照らされて、黒い。それをびりびりと音をたてて破くと、リンの目に怯えの色が濃く浮かぶ。
「欲しいんだろ…?いれてやるよ、このまま!」
ルーファスの先走りで少しぬらしただけで、むりやりねじ込んだ。
「…っひっ!いぅ…」
あぐらをかいた、ルーファスの上に無理矢理のせられて、思い切り突き上げられた。
「っ!…う、う…」
痛みに仰け反れば、首の枷が肌を切る。限界まで勃起したペニスは、紐に縛られて、耐え難い痛みを訴える。
体中が、痛い。
苦鳴が、脳髄を刺激する、手を縛っている鎖を無理矢理引いて、リンを押し倒す。 痛みに耐える顔、自分を締め付ける秘部。
「すごい…イイ声だ、でちまうよ、でも…まだだよ、リン」
ぐい、と顎を持ち上げると、殆ど泣いているリンが、声にならない声で哀願してきた。
「いた…、とい…て、も……や…め…て…」
無視して、首枷の鎖を思い切り引っ張った。
「がッ…ぁ」
仰け反る首に、枷ですれて切れた血がシャツまで滴っていた。

 この後――リンは三日ほど、昏睡状態に陥り、その後まともに会話できるまで一ヶ月ほどを要した。
ルーファスが陛下からどんなおしおきを受けたのか、知るものは、笑う。(笑)

 TO BE continued→幕間



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