クレドのにっき

クレドのにっき

恋しちゃってる男の日常~第二連隊の日常~

 軍に入ったとき、俺は15だった。
医療班に居た。
だけど、そのうち医療より、殺す方が巧いことに気付いた上司が、連隊の方はどうかと勧めてくれた。
ので、入った。
「オレが連隊長のリン=ファイネル。階級は中佐。スミス=バーナード、24歳か。うん…まぁ、死ぬなよな。オレ、死んだらすぐ忘れっから」
明るい笑い声。光に照らされた銀髪。俺は自分の目線から、ざっと30センチ下へと目線を落とした。
見上げている紫の瞳。見たこともないくらい深くて、澄んだ瞳。真ん中分けの前髪。サイドの髪が長くて、そこからちらちらと両耳にした紅い房のついたピアスが見える。
「あのう…隊長は、おいくつ………でしょうか?」
スミスが遠慮がちに聞くと、またか、と云うような顔をして、リンは答えた。「12」
………。
12?
リンは頬を膨らまして、見上げてくる。可愛い。かわいいっ…!!
スミスの鼻から、血がぷしっ、とはみ出た。
「あ?!なんだ、新入り?!お前、何を想像したッ?!こらぁ答えろぉおお!」

 12も下の、それも上司で、少年に、恋を、してしまった…。
スミスは、中庭で訓練していた。同時期に入ったジョン=シミドと手合わせをしていた。
スミスはサーベルが得意だが、ジョンは珍しく徒手空拳であった。勿論、剣も使えるが。
中段からの蹴り。サーベルを突き出すと、ブーツの底で微妙に切っ先を滑らし、いなす。そのまま足を上段へ。俊速の踵おろしをサーベルの柄ではね上げる。
「おまーさー。隊長の前で鼻血吹いたってー?」
下段からの足払い。軽く跳んで、正眼からの突き。
「…関係ないだろ。」
手っ甲に阻まれ、抜き手が目を狙ってくる。こちらも空いている左手で弾いた。
「隊長は、俺が狙ってんだからなー」
「はぁ?な、なな何いってんだ、隊長はっ」
ジョンのあっけらかんとした告白に、スミスは体勢を思いっきり崩した。足が前へ滑って、
「もーらいっ」
手っ甲を付けた肘が、脳天に突き刺さる瞬間、サーベルの峰を掲げる。
「いってえええええ!」
ジョンの負けだった。しかし、情けない事にスミスも滑った右足を捻っていた。
「お、俺は別に、隊長は綺麗で、可愛いから、その、だな………」
足を自分で固定しつつ、スミスはあわあわと取り繕おうとした。だが、そんなことは全然意味が無い。肯定しているようなものだ。否、完全な肯定だろう。
ジョンはにや~り、と笑みを浮かべた。
「はは~ん?おめー、童貞かぁ」
見抜かれた――っっ!!
そうである。この歳になってまだ、スミスは童貞なのであった。
ていうか、苦手なのだ、恋とか、キスとか、そ、それとか、そういう話とか。
全く男には、珍しい部類ではある。部類ではあるが。
彼は真っ赤になって、立ち上がる。
「ど、どどどどーでもいいだろっ、それにな、」
すうううと思い切り息を吸う。
隊長はわたさねぇっ!!
やんややんやの喝采。…その時になってスミスは始めて思い出した。
ここは中庭で、衆人環視の状況だと云うことを……、一瞬後、彼はばたんと後ろ向きに倒れた。

 しかし、スミスは次の日………。
「陛下ーv」
ぽかぽかと暖かい陽射し。に、煌めく銀の髪と、………誰だろう、あの金髪?身分高そうだけど………、が、リンを膝の上に!乗せて!!その髪を編んでやっている!!!!!!!!
嫉妬の炎が燃え上がった。リンは見たことも無い、子供のような顔で、無邪気に笑って、その男の胸に抱き付いたり、頬を触られてくすぐったそうにしている。
「ねぇ、陛下ぁ…」
「ん?」
細い顎が持ち上げられ、唇が…!リンの細い腕が、男の首に絡められて、
うわ――ッ!!!
思わず、意味不明な叫び声をあげて、スミスはその場に立ち尽くしていた。
二人がきょとんとこちらを見つめている。
「…何してんだ?スミス。」
リンの呆れ返った言葉も、耳をすり抜けるばかり。
スミスは滂沱の涙を流しながら、「そ、そ、そいつ!そいつ、誰ですかっ誰ですかー!隊長!!隊長はまだ、12歳で!!確かに、綺麗だけど!そんなことしちゃ…」
指さして、ぶんぶんと手を振る。すると、金髪の方が困ったように笑った。
「リン。よくよくモテるな。…一国のあるじに向かって、お前の隊の隊員は『そいつ』呼ばわりだぞ」
リンはあははー、と困惑した笑みを見せた。
「ごめんなさい、陛下~こんなやつばっかりなの、うちのやつらは」
スミスの思考は、停止した。
…ヘイカ?いや、一国のあるじって、云った?
この国でへいか、と呼ばれれば…陛下、陛下??
さあああああっ、とスミスは蒼くなった。自分の国の主を、そいつ呼ばわり!!して!しまった!!
今この場で手討ち、否拷問ゆき確定だ。
24年……童貞のまま、死ぬのか…?!
ぐるぐると巡った思考は、種の保存に 大きく 反抗するものだった。
どうせ死ぬならやらせてください隊長ー!!
狼よろしくとびつこうとしたスミスは、想い人の素晴らしい蹴りを食らうことになった。
「馬ぁ鹿!そんなことくらいで陛下は殺したりしねーし、オレも怒んねぇよ」
嬉しいやら、なんやら。とりあえず、ストレートなヤクザキックは、肺を強打して、息が止まってスミスの意識はイスカ●ダルへとんでいった。

TO BE………?



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