PR
Calendar
Freepage List
Comments
冬の空は灰色に霞んでる日とどこまでも澄んでいる日のどちらかが多い。
綺麗に晴れた日は空の高いところからすうぅっと水彩画のように薄く透明な水色が引かれ、地上近くにはミルクがこぼれて滲んだような白が横たわっている。熱はあまり感じないけれど、突き通すような光の強さは夏よりも太陽が近くにあるような気がする。
小さいころ、自分の背中にはいつか翼が生えてくるって信じてた。肩甲骨は折れた羽の名残だって誰かが言っていたから。失われた羽を取り戻したとき、背中の皮を突き破って出てきたそれは私の小さな部屋いっぱいに広がり、やわらかな羽毛を散らすだろう。雪のように白く、水鳥のように軽く、それでいて鷲のように大きく力強い羽は、私を空高く雲の神殿へとあっという間に運んでくれる。親に叱られたとき、何かが上手く行かなかったとき、想像の鳥は故郷の村のある山を遥か遠くに越えていって私を慰めてくれた。
今はもうそんなことは起こらないと分かっているけれど、こんな朝は美しい翼を羽ばたかせて空を飛ぶ自分を夢想してしまう。
くるるる、きゅぅううううううう。
カフェの窓から景色を見ながらロマンチックな妄想に浸っていたが、生理的な欲求は容赦なく私を現実に引き戻した。
「相変わらず、朝っぱらからよくこんなに腹減らせるな。」
比翼は意外に朝が弱く、朝食はコーヒーだけ。
「朝食は一日の活力源なんだよ。ほら、二人とも、ちゃんと食べなよ。」
「いや、僕もお茶とヨーグルトだけで・・・。」
連理も低血圧である。珈琲は苦手なので、特別に紅茶を用意してもらっている。
「お待たせ。はい、どうぞ。」
どうやらお腹の音は店じゅうに聞こえていたらしく、TUBASAさんが笑いをかみ殺しながら注文した品を置いてくれた。
ツバサカフェは気まぐれな店なので夕方で早仕舞いすることもあれば、こんな風に朝早くから開いているときもある。今日はそれを目ざとく見つけてモーニングセットを頼んだ。
クロワッサン二つに木苺のジャム、厚めに切ってカリカリに焼いたベーコンが3切れ、サニーサイドアップの目玉焼き(卵二つ)、コーンポタージュスープ、新鮮なシャキシャキ野菜のサラダ、それにチェダーチーズを薄くスライスしたのが一切れ。そして全身総ての細胞を覚醒させてくれる芳香を放つ、とびきりの珈琲。
朝早く起きて狩りに行く冒険者のために、美味しくてボリュームたっぷりのメニューをTUBASAさんが安く提供してくれている。
こんなに出してくれて儲けって出るのかな?
カラン
最後にチーズを頬張っていると、人が入ってくるドアの音が聞こえた。
「Akimiさん!」
4~5人連れ立って入ってきた人の中に友達の姿を見つけて、手を振った。
「あ、久しぶりだね。」
彼女は神殿B4の入り口で出会ったランサーさんだ。PTの募集待ちを何度か一緒にしているうちに意気投合し、狩りそっちのけで話し込むようになった。
いつも明るく笑っていて、気取ったところがなく、話しやすい人だ。くせの強い髪が少し動くだけでもふわふわと揺れ、それがとてもチャーミング。背が高く、かなり体格がいいのだけれど、なんだか可愛らしい印象だ。
二言三言仲間と言葉を交わした後、Akimiさんが近づいて来た。
「今日のモーニングも美味しそうだね。」
そう言って私の隣の椅子に腰をおろした。
「マスター、私にもモーニングお願い!」
「あの、ご一緒の方、いいんですか?」
「ああ、あの子たちはさっきまで狩りしてた人たちなんだ。お腹空いたからごはん行こうって来たんだけど、また狩りで会えるからいいよ。プッチニアは久しぶりだしね。最近神殿には来ないの?」
「はい。ソロの方が楽しくなってきちゃって。」
「そっかぁ。テイマはソロもできるもんね。私もペット欲しい~。」
視線を連理と比翼の方に向けて、軽く片目をつむり、
「ね、たまには違うご主人様と狩りしてみない?」
と言った。
比翼と連理は顔を見合わせてにやっと笑い、
「いいね。」
「うん。ちょっと子守にも飽きてきたとこだし。」
と答えた。
「ちょっと、ちょっと!それはひどいんじゃないの?」
「いいじゃん。たまには。プッチニアも別のペットテイムしに行けば?」
「・・・そっちをメインにしちゃうよ?」
「すれば?僕たち、楽できるし。」
「・・・。」
ひどい。ずっと浮気しないでいたのに・・・。もう、骨ファミとかテイムしちゃうからね!
「まあまあ。」
自分の言葉がきっかけなのに、まったく悪びれずにAkimiさんが仲裁に入った。憎めない笑顔がずるい。
「そういえばさ、さっきいたPTの天使さんが言ってたんだけど、赤山が大変なことになってるんだって?」
「え?」
「あ、やっぱり知らなかった?なんでもいろんな場所で火属性のモンスターが暴れだしたから、火の聖獣に抗議する人間が赤山に群がって騒動になってるって・・・。赤山って確かビスルの近くでしょ?故郷の近所で起きていることだし、教えてあげたほうがいいんじゃないかって思ってたんだ。ここで会えて良かった。」
火のモンスターたちが・・・?いろんな場所ってどこだろう。そんなことになってるなんて全然知らなかった。このところソロばかりだったから、情報に疎くなってしまっていたのかもしれない。
赤山を守る火の聖獣スルタンさんが心配だ。強いから人間にどうこうされるようなことはないとは思うけれど、モンスターの暴走がすべてスルタンさんが元凶みたいに言われてしまったら・・・。優しくて穏やかな方だから、きっと傷付いているに違いない。
「あれ?いない・・・。」
Akimiさんは店内をぐるっと見渡して不思議そうに言った。
「どうしました?」
「うん、そのことを教えてくれた追放天使さん。さっき一緒に店まで来たんだけど・・・いなくなっちゃったみたい。もうちょっと詳しく話をしてもらおうと思ったんだけどな。」
「大丈夫です。これから赤山まで行ってみますから。情報ありがとうございました。」
テレポーターでブリッジヘッドへ飛び、東へ。焼け爛れたように赤っぽい土地にさしかかると、いつもとは違う風を感じた。
何か・・・空気がおかしい・・・。
⇒
つづき
かなり久しぶり、プッチニア小説第五弾です。
小説掲載期間はブログ訪問者が減るので、あまり人気がない感じなのですが、できれば続けたいなと思っています。
最後までお付き合いよろしくお願いしますヽ(o_ _)oペコリ
字ばっかりっていうのも面白くないので、前回と同様、飛び飛びに掲載予定です(ノ´∀`*)
ネタがないから小説第七弾~翼の行方編そ… August 21, 2009
ネタがないから小説第七弾~翼の行方編そ… August 21, 2009
ネタがないから小説第七弾~翼の行方編そ… August 21, 2009