出演者:二宮和也


第二章 鳥かごの中の鳥


―――鳥かごの中の鳥は、外に出ることを許されない
     ただひたすら、かごの中で主人の帰りを待つ
     おとなしくしている事で、安心して生きていける
     そんな鳥を、あなたはどう思いますか?―――


彼女と出逢ったあの日から、半年が過ぎた。
俺は今、一人暮らしをしている。
あの家にいても、あの人たちにとって俺は「いない人」だから――――


あの海から帰った朝、俺は一目散に自分の部屋に駆け込み、必要な物をバッグに詰め込みその建物を出た。
「バイバイ・・・」
俺はそう言い、二度と戻ることのないその建物を後にした。


俺は高校へは進学せず、朝から晩まで働いて何とか生活していた。
忙しい生活の中でも、あの日出逢った彼女のことは片時も忘れなかった。
と言うより、彼女のお陰で立ち直ることができたのかもしれない。
彼女のことを想うと、毎日が幸せだった。
でもいつも思うこと、それは・・・

――もう一度、彼女に会いたい――

いつもと同じように9時頃に家を出てバイト先へ向かっていた。
すると途中で『工事のため 通行止め』という看板が目に入った。
「マジかよ・・・」
少し不機嫌になりながらも別な道を進んだ。

しばらく歩くと右方から可愛らしい歌声が聞こえてきた。
見ると幼稚園児が先生に連れられて歩いていた。
そして目線を戻そうとした時――――
俺は目を引き付けられた。

――彼女だ!?――
半年前、初めて逢った彼女。
何も話さず、海を見ながら一緒に夜を明かした彼女。
太陽が彼女を照らし、より一層輝いて見える彼女。
出逢った時と全然変わらない美しさを持った彼女が、俺の目の中にいた。

――願いが通じたのだ。

何の変哲もない5階建てのアパート。
その最上階の一室に彼女はいた。
部屋の中から外を見ていた。
あの時と同じように微笑みながら、空を眺めていた。
そして、何かを手に持っていた。
すると、その「何か」を空に向かって飛ばした。
――紙飛行機?――
紙飛行機を飛ばした後、彼女は窓を閉めてしまった。

俺は、彼女が飛ばした紙飛行機が落ちた場所へ向かった。
そこには沢山の紙飛行機が落ちていた。
俺はその一つを手に取った。
『外に出たい』
こんなことが書かれていた。
もう一つ手に取ってみた。
『自由になりたい』
他の紙飛行機にも同じようなことが書かれていた。

気になった俺は彼女の部屋に行こうと思った。
だけど、明日また同じ時間に彼女が外を見ている時に話そうと思い、バイト先へ向かった。

次の日、いつもより少し早めに家を出て彼女のマンションの前まで行った。
彼女は昨日と同じように窓を開け、空を眺めていた。
そして紙飛行機を飛ばそうとした瞬間――――

「ねぇ!」
俺は彼女に向かって叫んだ。
彼女は手を止め、俺の方を見た。
「外、出ておいでよ」
そう言うと、彼女の表情が曇った。
そして首を横に振った。
「どうして?」
俺が尋ねると、彼女は初めて口を開いた。
「危険だから・・・」

――危険だから?
どういう意味だろう?
そりゃあ最近は物騒だけど――――

――あっ!?――
俺は昨日見た紙飛行機を思い出した。
『自由になりたい』
彼女は誰かに閉じこめられてるんだ。
それで外に出ることを許されないんだ。
まるで鳥かごの中の鳥のように――――

「大丈夫だよ。すぐに帰ってくれば見つからないでしょ?」
その言葉を聞くと彼女は微笑み、部屋から飛び出してきた。


彼女のリクエストで、俺たちは遊園地に行くことにした。
途中、自分たちのことを話した。
彼女は杉山深雪という名前で、俺より4つ年上だ。

遊園地に着いてからの彼女はとても楽しそうで、まるで子供のようだった。
一緒にいても年上だなんて感じさせない魅力があった。
子供のようにはしゃぐ彼女が時折見せる大人の顔。

――俺は間違いなく彼女に魅かれている――


「もう帰らなきゃ・・・」
彼女が突然言い出した。
「えっ、もう?」
「うん、ゴメンね。・・・でも、すごく楽しかった」
少しだけという約束で連れ出したんだもん、しょうがないか・・・。
「じゃあ、家まで送っていくよ」
「うん」


俺は彼女を無事送り届けた。
今度逢う約束なんてする事もなく――――





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