出演者:二宮和也&大野智

第十一章 光の扉と銀世界


―――どんな闇の世界にいても一瞬で煌めきの世界へ行ける光の扉
     その夢のような扉は温かい場所にあるのだろうか
     それとも・・・
     真っ白な雪が輝く銀世界にあるのだろうか―――


俺の目に映ったあなたは出逢った時と同じように輝いていた。
まるで光のベールがあなたを包み込んでいるかのように・・・
あなたは微笑んでいた。
でも俺にはあなたのその笑顔が痛々しく見えるよ。
何故なら・・・

あなたの大きくて美しい瞳が笑っていないから――――

――やっぱりあいつが生きていたんだ――

そんなことを思っていると彼女がこっちを見た。
そして彼女の視界にも俺が映ったのだろう。
すごく驚いた顔をしていた。

俺は彼女に近づいていった。
別に無理矢理連れ戻そうだなんて思っていなかった。
ただ・・・

もう一度あなたと話がしたかっただけなんだ――――


幸い、あいつは何かを買いに行ったらしく彼女の側にはいなかった。
「久しぶり・・・だね」
「うん・・・」
「元気だった?」
「うん・・・」
彼女は俺の聞いた事にしか答えなかった。

「・・・どうしてここに?」
そう聞くと彼女の表情が強ばって見えた。
「智さんが・・・」
「そう・・・」

「・・・二宮くんは?」
「えっ?」
「どうしてここに?」
「俺は・・・」

「深雪ー!」

「あっ!?」
あいつが戻ってきた。
俺と彼女はとっさに手を握り合った。
そしてあいつを背に俺たちは走り出した。


「深雪ー!俺をおいて行くのかー?!俺をおいて行けるのかー!!」
一瞬俺の手を握る彼女の力が強くなった。
「ごめんなさい・・・。ごめんなさい!!」

俺たちはどこか遠くに行こうと駅へ向かった。
そこに偶々停まっていた夜行列車に飛び乗った。


夜行列車ということもあって車内は深閑としていた。
「俺ね・・・」
「ん?」
「ほらさっきの質問の答え・・・。どうしてあのイベントに行ったかっていう・・・」
「うん」

「もう一度あの海に行きたかったんだ」
「そう・・・。あの海、なんか温かいもんね。嫌な事なんて全て流してくれて
 優しく包んでくれる感じがするもんね」

「違う・・・」
「えっ?」
「本当は違うんだ・・・」
「二宮くん?」
やっぱり深雪さんに嘘をつくことなんてできない。
一呼吸おいて俺は本当の事を話し始めた。
「本当は・・・深雪さんに逢いたかったから・・・」
「?!」
「あの海に行けば深雪さんに会えると思ったから。深雪さんが来るっていう根拠なんて
 どこにもなかった。でも・・・」
「でも私はあの海へ行ったわ。そして今こうして二宮くんの隣にいる」
彼女はとても優しい顔をしていた。
真っ直ぐに俺のことを見つめる彼女の瞳を見ていると・・・
「俺は卑怯だ・・・」
胸の中にあった言葉がふと漏れてしまった。

「俺は卑怯だよ・・・。深雪さんが絶対にあの海に来るっていう自信がどこかにあったんだよ、きっと。
 だからあの海へ行こうと思ったのかもしれない・・・」
俺はいつの間にか拳を作っていた。
自分の情けなさに・・・
そして、自分の弱さに憤りを感じながら――――

「・・・同じだよ」
その言葉を聞いた瞬間俺の中で何かが音を立てて切れたような気がした。
窮屈な空間から解き放たれたような・・・そんな気持ちになった。
「私も同じだよ。本当は二宮くんに逢いたかったからあの海へ・・・」
「深雪さん・・・」
「二宮くんが家に来た時すごく苦しかった。扉の向こうに二宮くんがいるのに、すごく遠くに感じた。
 たった一枚の扉なのに・・・私じゃ開くことができなくなっていた・・・。あの扉はもうあの人しか
 開けなかったから、今日のイベントは私の最後の賭けだったのかもしれない」
「・・・・・」
「あっ、ごめんね。訳分かんないこと言っちゃったよね。もう寝よっか」
「うん」

俺と彼女は手を繋いで眠りについた。


――このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・

目覚めると列車はトンネルの中を走っている様子だった。
そしてそのトンネルを抜けた瞬間――――

一面に銀世界が広がっていた。
列車は光の扉を開いてくれたのだ。

俺と彼女のために――――





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