.






僕は心の底から愛した人がいた。


この先こんなに愛する人はいないだろう。


あの時言っておけば良かった。

こんなにも後悔した事は無いだろう・・・。


この屋上から見る海の景色・・・

彼女が好きだった景色・・・。



この先誰も愛せない。


「さとっさん~」

和也が駆け寄って来た。


「ぁ、ニノ~♪」

「今日も海見てるんだぁ」

「まだ蓮の事忘れられないんだ・・・」

「そりゃそうだよねぇ。あんなに・・・」

「彼女海を見るのが好きだったんだ。
 海を見てると蓮が見えるような気がしてね」



昔から俺と智は仲が良かった。



蓮ちゃんと付き合っていたのも知っていたし、

どれだけ智が蓮ちゃんの事好きだなんて事も十分分かっていた・・・。

何回も俺は智に女を紹介したが、誰一人愛せる女はいなかった。




それだけ智は蓮ちゃんが愛おしかったんだ。




「あれから一年かぁ」

和也が空を見上げながら言った。

「そうだったっけぇ?」

「本当なら明日誕生日だよな・・・蓮ちゃん」

「もう蓮はこの世にはいない・・・ぅっ!!っく・・」


智が泣いてる。

涙を流した智を見るのはあの事故以来だ。

「ごめん・・・智・・・」

「いいんだ。でも・・・僕のせいで・・蓮は・・」


「違うっ!!」

「え?」

「智のせいなんかじゃねぇよ!!」

「・・・うん・・・・」


そう、蓮ちゃんは一年前事故で亡くなった。


「もう11時45分かぁ」

何故か僕は眠る事ができなかった。

「はぁ、なんで誕生日プレゼントなんて買ったんだろう」





もう蓮はいないのに・・・。




渡す事なんてできないのに・・・。



突然辺りが明るくなった。

「何?!!??」

「君逢いたい人がいるみたいだね」

「ぇ??っていうか誰あんた?!」

「君は僕の生まれ変わり。つまり僕は君の神様なんだ」

何言ってんだこいつ・・・。

「はぁ??!!」

「一つだけ願いを叶えてやるよ?」

「マジで?!」

「あぁ、さぁ、言ってみ?」

蓮ともう一度逢いたい・・・。

逢いたい。

「蓮と逢いたい!ずっと一緒にいたい!」

「分かった、じゃあな」

そう言うと神様って奴は消えていった。

「お、おい!なんなんだよ!待てよ!おい!」



12時ジャスト・・・。

蓮の誕生日が迎えられた。


「智・・・」

「え?」

「久しぶり」

「蓮・・・!!!」

「あたし連だよっ」

「本当に・・・蓮・・??」

「うん!当たり前じゃん!」

「蓮・・・!!」



僕は蓮ときつく抱き合った。


「智・・・あの事故は智のせなんかじゃないんだよ?」

「ぇ?ぼ、僕のせいなんだよっ」

「あれは!!あれはねぇ、違うんだよ?」

「でも・・・僕が!!」

「自分を責めないでよ・・・ね?」

「蓮・・・」

「あたしが悲しくなるだけなんだから・・・」

僕達はそう言うと、


深く、長いキスをした・・・。


久々蓮とのキス・・・。


「蓮・・・」

「ん?」

「愛してる・・・」

「うん・・・」

「もう離さない」

「うん」



あたしは今までで最高の誕生日を迎えた。

このまま一緒にいたいけど、

あたしは死んだ人間・・・。

でも、最後に智に会えてよかったぁ。



「蓮?」





「何があっても・・・あたしはずっと智を愛してるからね」








「な・・・なんでだよっ!!!!」







ふと見ると蓮の体はたちまち消えていく・・・。



消えていく蓮に姿だけが見えた・・・。






「さよなら・・・智・・・愛してるよ。ありがとう」







「蓮ーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」




蓮は消えた。


「なんで・・・一緒にいるって・・・!!
 ずっと一緒にいるって言ったじゃねぇか・・・!!!」



智が泣いていると一枚の紙が落ちて来た。



ー・ー・ー・ー・智へー・ー・ー・ー・ー

分かってほしい事が一つだけある。

私が死んだのは、智のせいなんかじゃないよ?



あたしが悲しくなるだけなんだから。


誕生日少しだったけど、

智と過ごせて凄いうれしかったよ♪

これからは違う世界で別々に暮らすんだね・・・


智!ありがと!これからも頑張って★

あたしは智の隣でいつまでも応援してるからね♪♪

それから、あたしを絶対に忘れないでね。

今まで本当にありがとう^^

これからもずっと・・・愛してます。

ー・ー・ー・ー・ー蓮よりー・ー・ー・ー・ー・




「蓮・・・」



僕は誓った。

蓮を悲しませるような事はもうしない。



僕のためにも・・・・。





蓮のためにも・・・・。

























© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: