全2件 (2件中 1-2件目)
1
先日、激しく体を動かす作業をする事があり、その後、「今日は頑張ったからお腹が空いたでしょう」とたくさんの食事を用意されたのですが、「激しい運動のために食欲がなくなりました」と食事を辞退するという事がありました。子供の頃からよくあった事で、体が運動向きではないために起こる私自身の固有の事と思っていました。 しかし、最近、米国のスタンフォード大学で激しい運動によって食欲が減少する理由が研究され、食欲の減退は私だけに限った事ではない事と、食欲減退に関するメカニズムを知る事となりました。 「Nature」に掲載された論文によると、激しい運動を行わせたマウスの血液を採取し、検出可能なすべての成分の濃度を調べたところ、乳酸とアミノ酸の一種であるフェニルアラニンが結合した「Nーラクトイルーフェニルアラニン(NーLacーPhe)」が最も大きな変動を起こしていた事が判りました。 過去の研究でもNーLacーPheの存在は知られていましたが、詳しい解明は行われておらず、その働きはよく判らない状態となっていました。そこで研究者たちは高容量のNーLacーPheをマウスに注射してみたところ、1時間ほどでマウスの体内から排除されてしまいましたが、その後、12時間に渡って食欲の減少が見られ、食事量も50%にまで低下する事が観察されています。 食事の量は低下しましたが、エネルギーの消費量は変わらず、エネルギー効率は上がっている事が判り、10日ほど継続して肥満のマウスにNーLacーPheの注射を続けたところ、血糖値を下げる能力が改善し、体重も大きく低下する事が示されました。 激しい運動を行うと大きなエネルギーが消費され、筋繊維に破損が生じます。それを回復するためにカロリーやタンパク質の摂取が必要となるので、どちらかといえば食欲を増進させなければならないのですが、NーLacーPheはその正反対の事をしているようにも思えます。 人を使った運動後のNーLacーPheの測定では、最も多くの分泌が見られたのは短時間の全力疾走で、次に筋肉トレーニング、最も少ないのは軽度から中度の持久走となっていました。その事から激しい運動によって分泌されるNーLacーPheは、体に対して生存を脅かされる緊急事態にある事を知らせている可能性が考えられました。 エネルギーの摂取は生存に欠かせない事ではありますが、緊急の状況下では優先度が低く、脅威を取り除く事が優先されます。短時間の全力疾走は脅威を遠ざける事に直結し、食欲を抑えてエネルギー効率を上げる事でその後の対応力が上がると考える事ができます。 今後、研究者たちはNーLacーPheがどのようにして脳の食欲を抑えるのかについての解明を行うという事ですが、運動の後に食欲を失ってしまうという事が正常である事が判り、一安心したと同時に、あまり激しくない運動でも食欲を失いやすい私は生存に適しているのかもしれないと思ってしまいます。
2023年08月23日
コメント(0)
地中海に浮かぶキプロス島は、たくさんの猫が暮らす猫好きにとって聖地とも呼べる場所です。島を訪れた観光客の多くが住民と共生してのんびりと暮らす多くの猫たちの姿を目の当たりにし、島の事を「猫の楽園」と表現しています。 キプロスの住民と猫たちの共生は長い歴史を持つ事が知られていて、9500年前とされる世界最古の猫の埋葬跡もキプロスで発見されています。キプロスの猫は飼い猫としてだけでなく、日本でも言葉が定着してきた「地域猫」として、それぞれの地域の人たちに可愛がられながら穏やかな日常を過ごしてきた事が窺えます。 そんなキプロスでコロナウィルスの流行による猫たちの異常な大量死という怖ろしい事態が起こっていると報じられていました。キプロス猫保護福祉協会(PAWS)の推計によると今年に入って30万匹の猫が死亡したとされ、島で暮らす猫は100万匹とされる事から3割もの猫が死亡したという異常な状況となっています。 コロナウィルスによって引き起こされる「猫伝染性腹膜炎(FIP)」が原因とされ、島でのFIPの症例は2021年には3件、2022年には4件だけが報告されており、今年に入ると1月だけで98件が報告され、その後、爆発的な増加が起こったとされます。 コロナウィルスには世界中の多くの猫が感染しているとされ、一説には8割もの高い比率で感染しているとされますが、ほとんどの場合は感染の初期に腹痛や下痢、発熱などの軽い症状が見られるだけで、その後の生活にも何ら支障を来たす事はありません。それが体内で突然変異を起こし、強毒性のコロナウィルスに変化するとFIPを引き起こし、その致死率はほぼ100%といわれていました。 かつてはFIPを発症すると対症療法による延命しかなく、治療は不可能とされていましたが、現在ではよい薬が開発され治療が可能となっています。その薬の元となったのが人間用のコロナウィルス感染症の治療薬だったとされ、今回、キプロス政府は猫の緊急事態に対し、備蓄していた人用の新型コロナウィルス感染症治療薬を転用する事を承認しています。 治療薬が功を奏し、一刻も早く怖ろしい感染症の蔓延が収束する事を願うばかりですが、一つの疑問が浮かんできます。それはFIPは突然変異という稀な現象によって引き起こされ、突然変異を起こした強毒性のコロナウィルスには感染力がないとされてきましたが、今回の爆発的な蔓延には強毒性コロナウィルスが感染力を獲得したのではと感じてしまいます。 コロナウィルスが変異して強毒化した。強毒性コロナウィルスが変異して感染力を獲得した。または体内のコロナウィルスに突然変異を起こさせる別なウィルスが発生した。いくつかの可能性を考える事ができますが、いずれにせよ猫にとってかつてない脅威が発生したという事ができます。治療薬の効果の高さは、坊ちゃんの治療の際に経験できています。一刻も早い収束を願いたいと思っています。
2023年08月21日
コメント(0)
全2件 (2件中 1-2件目)
1