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サンガンピュールの物語(恋愛編)6話



 ゆうこは校舎に戻り、教科書、ノートなどをかばんに入れ、逃げ出すようにして学校から家へ帰って行った。サンガンピュールに戻った彼女は帰宅後すぐにシャワーへ。体に取り付いた悪臭を取るためだ。
 彼女にとってさらに運が悪いことに、この日の夕食ではKが納豆を出した。納豆といえば茨城県の名産品であり、Kは納豆が嫌いではない。しかし独特の臭いを発する納豆に対し、サンガンピュールはPTSDを発したように悶絶し、卒倒してしまった。
 「おい、サンガンピュール!どうした、大丈夫か!大丈夫か!」
 「ううう・・・、今日、学校で嫌なことがあって・・・」
 「どんなことがあったんだ?」
 「うう・・・、思い出したくない・・・言えない・・・」
 「そうなんだ。それなら、言わなくていいよ」
 Kは必死にフォローしたが、サンガンピュールを寝室で寝かせることにした。しかし、たかが夕食で大事な時間を浪費してしまったのは間違いない。

 結局、サンガンピュールは上坂などに振り回された結果、最悪の精神状態で中間テストに望む羽目となった。1学期の中間、期末テストの結果が悪くなかったが故に、少し甘く見ていたこともある。そして実際に、テストで前回よりも悪い点を取ってしまった。特に悪かったのは国語で、いわゆる赤点の30点以下だった。そして一方の上坂は、社会で70点台だった。彼にとっては少し悪い結果だったが、他の教科は「赤点パラダイス」の状況だった。

 サンガンピュールはKに会うのが怖かった。「夜よ、来ないで!」と思ったのはおそらく土浦に来てからは初めてだろう。そうこうしている内に、9時頃にKが帰宅してきた。テストどうだったか?という質問に対し、サンガンピュールは無言だった。Kは思わず「おい、どうしたんだ?見せな」と言ってしまった。絞首台に上がる死刑囚と同じような心境で、サンガンピュールは返ってきたテスト答案を見せた。Kは、ひどい数字が示されている答案をざっと見て、一言。
 「何、この成績は?」
 Kは静かながら深く怒っていた。そして続けてもう一言。
 「今度の週末、反省会な。」
 Kは東京へ通勤している。自宅へは夜遅くに帰る。そして夕食をとり、しばらくインターネットで遊んだ後に寝るという生活スタイルだったため、平日には反省会の時間がとれないからだ。
 次の土曜日、サンガンピュールはKにみっちりと事情を聞かれた。どういう勉強の仕方をしてきたのか、前回好調だったから油断したのか、等。反省会の最中、彼女の携帯電話に市長から出動要請がかかってきた。いつものような銀行強盗退治だった。しかしKは彼女の携帯電話を取り、断りの電話を入れたのだ。
 「サンガンピュールは学校のテストの成績が予想以上に悪かったので、今反省会です。邪魔しないでくれませんか、申し訳ありませんが。」
 Kの要請を市長も渋々受け入れた。
 「ええー!なんで切っちゃうのさああ!あたし出かけたかったのにい!!」
 「うるせぇ!そういう口実で反省会から逃げようとか考えてなかったか?今のお前には、勉強が大事なんだから、そもそも日本で生まれた訳じゃないお前がずっと日本で生活するんだったら、今の内の勉強が最も大事なんだよ!分かるか?」
 サンガンピュールは全く反論できなかった。

 結局、上坂との甘い恋人みたいな(?)付き合いの無残な結末は、サンガンピュールにとって様々な意味で地獄みたいなものだった・・・。

 サンガンピュールの物語(恋愛編)・完

 ( あとがき へ)

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