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サンガンピュールの物語(コーチング)2話



 翌日のこと。彼女は拓也に再会することを楽しみにしていた。しかし学校にいる間は勉強に集中しなきゃと思っていた。そうでなきゃまたKに怒られて嫌な思いをするからだ。その日は学校で卓球部の練習があったので拓也の元に行くのが遅くなったサンガンピュール。もう夕方5時過ぎだ。5時の時報を伝える防災無線も流れていたため、「ひょっとして拓也はもう帰っちゃったのかな?」と彼女が心配になるのも無理はなかった。近所の公園を覗くと、彼は来ていた。一人でドリブルの練習をしていた。サンガンピュールは昨日の会話を思い出し、塩崎ゆうことして彼に接した。
 「おーい!」
 拓也が振り向いた。サンガンピュールに何となく似ている女子中学生を見つけたが、まさかあの人なのかな、と思いつつ。
 「君が坂口拓也君かな?サンガンピュールから話は聞いたよ。なんでもあんたはあの子の技を見たいんだってね」
 「うん、そうだよ。・・・でもお姉ちゃん、名前は?」
 「あたしは、塩崎ゆうこって言うんだ。あたしはサンガンピュールと友達なんだ。彼女からサッカーの話をよく聞かされているから、サッカーの技の名前とか方法とかは覚えてるんだよ。だからサンガンピュールから、拓也君の練習をしてくれって頼まれたんだ。いい?」
 「うん、それでもいいよ」
 「拓也君は何歳かな?」
 「10歳」
 「じゃあ小学5年生?」
 「うん、そうだよ」
 まずは彼の基本データから集めようとした。そうしなければ練習内容も組み立てようがないからだ。ゆうこは質問を続ける。
 「じゃあ、君はどこのサッカーチームに入ってるの?」
 「土浦ジャガーズっていうんだ」
 「土浦ジャガーズ?強いの、弱いの?」
 「弱いよ。・・・チームのみんなはあまり頑張ってなさそうに見えるけど・・・負けたのにDSで遊んだりとか。しょっちゅう監督に怒られてる」
 一瞬、彼女はおいおいと呆れ顔になりつつも言った。
 「そうなんだ。試合には結構出てるの?」
 「それが・・・」
 「あんまり出てない?」
 「うん」
 拓也はバツが悪そうに答えた。
 「見た感じ、体がちょっと小さいかなあ・・・。そのせいかな?」
 「背が小さいとやりづらいって監督が言うから、いつも・・・ベンチなんだ」
 「そうなんだ」
 サンガンピュールは拓也が一生懸命練習をしている姿を見ていた。だが第一印象としては何となく気弱な感じが否めない。彼の身長は約125センチ、二次性徴期に入りつつある小学校高学年にしては小柄だ。
念には念を入れてこんな質問もした。
 「みんな決まった日に集まって練習したりしてるのかな?」
 「う~ん・・・・・・木曜日の夕方にみんな集まって練習してるけど、みんな普通にやってないよ」
 拓也はこう答えた。だが単に質問するだけでは土浦ジャガーズというチームの実態が掴めにくい。百聞は一見に如かずということわざを覚えていたサンガンピュールは「このままじゃあ、やばいじゃん」と思うのに時間はかからなかった。とっさに次の質問をした。
 「次の試合、いつ?」
 「今度の日曜」
 「今度の日曜・・・。よし、分かった。ゆうこお姉ちゃんが見に行くよ」
 「えっ、ほんと!?やった!」
 「ちょっと、あたしは魔法使いじゃないからね。ただ練習の様子とか、試合を見に行くだけだからね!」
 「約束だよ!次の試合見るって!」
 「うん、約束だよ」
 サンガンピュールは土浦ジャガーズの試合を見ることを約束して帰宅した。

 (第3話に続く)

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