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サンガンピュールの物語(お菓子の国)7前



 その頃、お菓子の国では凶悪な集団に襲われたにもかかわらず、相変わらず内紛が続いていた。
 「そもそもの原因は世良田さんがあんなやつらと契約しちまったことなんだよ!」
 こう言い出したのは和菓子職人の青木だった。組合の限られた予算の中で、経理担当や商品担当等による
 「これからの時代、和菓子の需要は減り、代わりに洋菓子の需要が増える」
 という予測により組まれた今年度の組合・お菓子の国の予算。その結果、自分たちへの配分を減らされた和菓子派。青木を始めとする彼らは世良田に責任を押し付けようとしたのだ。これに対して、
 「いいや、俺らにも落ち度がある!全てを世良田さんのせいにするのは間違いだ!」
 とパティシェの北条が反論した。
 「いや、私はただ・・・」
 世良田は弁明を試みたが、
 「あなたは黙ってて下さい!」
 「元凶のあなたに発言権はありません!」
 と青木、北条から怒鳴られた。自分の入る余地は無かった。Kもこのやりとりに疑問が湧かないはずがなく、すぐに世良田に聞いた。
 「元凶って・・・、どういうことなんですか?」
 「実は私、組合・お菓子の国の経理部長でもあるんです」
 「何ですと!!いやいや、経理部長として大失態ですよね!?」

 両派の代表とも言うべき青木と北条が相変わらず言い争いをしていた。サンガンピュールとKが訪問する前からそうだった。スローガンは抽象的なまま、テーマとなるケーキやお菓子の種類も未定で、来週本番を迎える雰囲気とは程遠かった。
 混乱のもう一つの原因は極端な縄張り意識だった。「和洋折衷?何それ、おいしいの?」という状態で、これまでの前例を覆すことを恐れていたのだ。青木と北条をはじめ、多くのメンバーもその「縄張り」と「前例」に囚われていた。
 「大体な、お前らのやり方は間違ってんだよ!」
 「どういう意味だ!」
 感情論に終始する不毛な議論が続く。
 これまで武力行使に出なかった両派だが、遂に激突した。その発端は、洋菓子派のパティシェの一人が、両派の仲裁に入った秋本と三角を邪魔者として後ろから蹴飛ばしたことだった。これで完全に火が着いた。元々部外者のサンガンピュールとKは乱闘に参加せず、安全な場所から眺めてみることにした。しかし10分経過しても乱闘を止めようと声掛ける者はいなかった。お菓子職人による低次元の争いが続く。そんな中で業を煮やした者がいた。普段我慢強いKの堪忍袋の緒が遂に切れた。
 「止めろ!」
 しかしすぐにまた小競り合いが起こり、効果なし。するとKは最終手段として、なんとサンガンピュールから拳銃を奪い取り、警告の意味で天井へ一発放った。

 「『止めろ』ってのが分かんねえのか!!」


 ( 第7話・後編 に続く)

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