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サンガンピュールの物語(お菓子の国)10話



 2人の目の前に戻ってきたサンガンピュールは自信に満ちた表情で要求した。
 「どう!?さあ、答えを言いなさい!お菓子の国の人達はどこにいるの?」
 だが課題を果たしたサンガンピュールの質問に2人はどこに人質とした職人がいるのか、すぐに答えを出さないどころか、名古路はこう言ってのけた。
 「残念だな。あの約束はうそだ」
 「はあああっ!?」
 ものすごく怖そうな面をしたサンガンピュールがいた。名古路は続けた。
 「気が変わった。お前を生かしておくわけには行かねぇ。ここで葬り去ってやる!」
 日数谷が補足のような感じで続けた。
 「お前の先程のミッションを見ててな、お前の頭の回転の早さに驚いた。このままだと俺らの方が危なくなる。お前に負けるとリーダーからおしおきを食らっちまうからな!」
 サンガンピュールは黙って聞いていたが、次第に「ううう・・・」と、冷静でいられないほどの怒りが込み上げてきた。しばらくしてポツリと一言。
 「・・・許せない。もう許せない・・・」
 「どうした?俺達にとって約束とは、だまし討ちのためにあるもんなんだぜ。」
 この名古路の一言が、サンガンピュールの怒りの導火線に完全に火をつけた。

 「もうっ!!あんたたちの言うことを信用したあたしがバカだった!もう許せない、さんざん人をだまして!あたしは、平和を壊されるのが大っ嫌いなの!もういいわ、あんたたちを殺す!」

 日数谷と名古路の挑発に乗る形で戦いの火ぶたが切られた。
 その瞬間、日数谷が動いた。彼は所持していたパラシュートでそのまま屋上から地上へ降りてしまった。このままチクロンBの本部へ引き揚げるのか、それとも従業員が軟禁されている真の場所に移動するのかは分からなかった。いずれにせよサンガンピュールは、残った名古路と1対1の勝負をすることとなった。一方、残った名古路はバースデーケーキ型の要塞に隠れた。「コックピット、イン!」と彼が叫んだ。なんと、頂上にあるいちごは、高度を調節できる大砲だったのだ。サンガンピュールのいる位置からは20メートルほど高さが離れていた。ちなみに工場の高さと合わせると海抜50メートルほどの高さ。それほど大きな建造物だったのだ。
 大砲からは直径60センチほどの電気玉が発射された。サンガンピュールとて、これに当たったらひとたまりもない。彼女は急いで要塞の操縦席から死角になるところへ隠れた。ライトセイバーを取り出し、要塞のコンクリートブロックを崩そうとした。だがブロックが非常に厚いのか、ライトセイバーが発する高熱であっても溶けなかった。隙をついて移動した時、なんと電気玉が彼女の身体をかすめてしまった。無視できないしびれを彼女が襲った。
しかし彼女は2人への怒りをエネルギーに変え、操縦席の名古路の元へジェットパックで飛んだ。しかし砲台はクレーンのように回転式になっており、自由に発射の向きを変えられるすぐれものだった。それに翻弄されながらも、彼女は操縦席の前に立った。「さすがのサンガンピュールもそこまでできねえだろ」と甘くみていた名古路にとっては誤算だった。すぐに彼女が自分の目の前に来たのだから。彼女は操縦席の機器に向かって拳銃で三発撃った。たちまち砲台がパワーダウンした。
 彼女は内心「やった!」と思った。だがそこでは終わらなかった。
 「フハハハハ・・・」
 「えっ、どういうことなの!?」
 「実はこの砲台、指揮命令系統が二重化されていて、故障に強いのさ!お前の考えてることが単純だっていうの、分かってんのさ!」
 名古路は砲台の秘密を明かした。彼女は一つ目の指揮命令系統を破壊したに過ぎなかったのだ。
 「では、さらに行くぜえっ!!」
 名古路は徹底抗戦を宣言した。砲台はさらに機敏に回転するようになり、そこから発せられる電気玉もパワーアップしているように見えた。完全に彼のシナリオにはまってしまったサンガンピュール。ジェットパックで空を飛ぶ彼女だが、機敏すぎる大砲の動きについていけなかった。そして、

 「きゃあああああっ!!」

 一つ目の系統をやられる前、5ミリアンペアだった電気玉の電流の値は、10ミリアンペアにパワーアップしていたのだ。10ミリアンペアになると、人は体中がしびれて簡単に動けなくなるのだ。サンガンピュールは電気玉に触れたため、うずくまったまま下へ真っ逆さまへ落ちたのだった。そして、屋上の地面に叩きつけられた。
 しかし、ここで終わるサンガンピュールではなかった。

 「とどめの一発!」

 名古路がそう一言を発しながら電気玉を発射した。彼女に近づいてくる。すると彼女はくるりと右へ身体を回転させることで、辛うじて避けた。
 「ハハハハハ、俺達に勝とうとは、100年早いわ!」
 名古路はそうつぶやいた。だが、彼の見えないところで彼女は動いていた。なんと砲台から見えない位置から、ライトセイバーを使ってよじ登ったのである。コンクリートブロックのわずかな隙間を頼りに、アラン・ロベールのように少しずつ上へ登った。名古路が勝ったつもりでいて調子に乗ったその時、サンガンピュールは左手で拳銃を発射し、ガラス窓に風穴を開けた。そしてそこから侵入したのである。

 「あああっ!!」

 もう名古路には為す術がなかった。そして、目の前にいる少女からこう問い掛けられた。
 「お菓子の国の人たちはどこにいるの?教えてくれたら許してあげる」
 「そ、それは・・・、武蔵野線の吉川駅の南口にあるスーパーマーケットの近くの雑居ビルだ。それ以上は言えん」
 「ふーん、ありがと。でも・・・」
 サンガンピュールは一旦沈黙した。そしてこう言った。

「あたし、気が変わったわ。あんたたち言ったでしょ。『約束は破るためにある』って」

 名古路はその瞬間、自分は助からないことを悟った。自分の発した一言がこういう形で返ってきたのだ。
 「あたしをさんざんバカにした罰よ!」
 そう言って彼女は名古路に向けて拳銃を至近距離で発射した。彼の眉間が貫通された。すぐ倒れた。即死だろう。
 名古路が死んだ以上、ここにいる必要はなくなった。彼女は砲台の操縦席をライトセイバーで破壊し尽くした。そして次第に電気がショートを起こし、最終的には拳銃で一発。火災が発生し、バースデーケーキ型の要塞はたちまち燃え尽くされたのであった。

 ( 第11話 に続く)

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