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サンガンピュールの物語(生い立ち編)4話

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 翌日の夕方、2人を乗せたJAL機は成田空港に到着した。約12時間のロングフライトだった。サンガンピュールにとってロングフライトは初めての体験だったがために、疲れ果てていた。一方のKは、旅慣れているからだろうか、彼女ほどの疲れを見せていなかった。ロンドンから成田まで、9600キロの大移動であった。入国審査を終えた2人はパッケージ・クレームで荷物を引き取った後に、高速バスのチケットを買う。
 見知らぬ外国・日本の地に降り立った彼女は、唯一の知人でもあるKの実家に居候することになった。Kの実家は茨城県の土浦市にあった。東京都心からは60キロも離れている。そして成田空港から土浦に行くには、高速バスが一番楽なのである。

 当時日本語が全く分からなかった彼女は、初めて見る摩訶不思議な文字(ひらがな、カタカナ、漢字)に大変驚いた。そして初めて聞く日本語も、母国語がフランス語である彼女にとっては全く訳の分からない言語だったであろう。
 幼い頃に全く新しい言語を習得するのは簡単だ。幼児は大人に比べて記憶力が高いからだ。そして年齢を重ねるにつれて、新しいことを身に着ける力がどんどん落ちてしまうのである。10歳のサンガンピュールの場合、果たして大丈夫なのだろうか…。新しい保護責任者であるKの大きな悩み事であった。

 高速バスに揺られて、2人が土浦駅前に着いたのは夜7時半過ぎのことであった。
 土浦市は人口14万人。Kはこの町で生まれ育った。大学を卒業し、東京でサラリーマンをやりながら現在もこの町で暮らしている。ちなみに独身で、一人暮らし。現在も未婚である。Kにとっては約2週間ぶりの帰宅である。ただ1つ、大きく変わったのは連れ子(?)が1人いることであった。今日からこのKの家に新しいメンバーが加わることは、ロンドンに出発する前のKも全く予想していなかった。

 Kは彼女に言った。
 「今日からこの町で生活することになるけど、今日はもう遅いし、簡単にご飯を食べようよ。詳しい説明はまた明日にしようか」
 彼女も疲れていたので、「そうしようよ」と言った。2人は途中、サンドイッチといった簡単な食べ物を買うためにコンビニに立ち寄った。その後、駅から15分程度歩いたところにある、Kの実家に遂にたどり着いた。
 Kの実家は2階建ての一戸建て。1階にはダイニングルーム、リビングルーム、台所、水回りといった居住スペースが並ぶ。2階にはシャワーやKの寝室兼書斎といった、Kの仕事部屋がある。

 帰宅後、Kは彼女にシャワー、トイレ部屋などを簡単に案内した。彼女はまだ慣れない国での生活に不安だったため、しばらくの間はKと一緒に寝ることになった。このことから、早くもKとサンガンピュールの2人は信頼し合っている、友人になっていたのである。
 しかし寝ている最中、サンガンピュールは不安に襲われた。 「・・・怖いよ、また、ロンドンにいたときのようになるのかなあ・・・。そもそもKおじさんって、どんな人なんだろう。おじさんを本当に信用してもいいのかなあ・・・。」
 彼女は不安で仕方がなかった。それに時差ぼけもあってか、眠れない夜を過ごした。

 ( 第5話 に続く)

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