「のり2・クラシカ」鑑賞日記

「のり2・クラシカ」鑑賞日記

06日ヤナーチェク「ブロウチェク氏の旅行」


東京交響楽団第573回定期演奏会
コンサートマスター:高木和弘


ヤナーチェク
   オペラ「ブロウチェク氏の旅行」
      第1部 ブロウチェク氏の月への旅

****** internission *******

      第2部 ブロウチェク氏の15世紀への旅
       (日本初演、セミ・ステージ形式、チェコ語上演、字幕付)





演出:マルティン・オタヴァ

ブロウチェク: ヤン・ヴァツィーク(Ten)
マザル/青空の化身/ペツシーク:ヤロミール・ノヴォトニー(Ten)
マーリンカ/エーテル姫/ クンカ:マリア・ハーン(Sop)
堂守/月の化身/ ドムシーク: ロマン・ヴォツェル(B.Br.)
ヴュルフル/魔光大王/役人: ズデネェク・プレフ(Bass)
詩人/雲の化身/スヴァトプルク・チェフ/ ヴァチェク:イジー・クビーク(Br)
作曲家/竪琴弾き/ 金細工師ミロスラフ: 高橋 淳(Ten)
画家/虹の化身/ 孔雀のヴォイタ:羽山晃生(Ten)
ボーイ/神童/大学生: 鵜木絵里(Sop)
ケドルタ:押見朋子(Alt)
合唱:東響コーラス (合唱指揮:大井剛史)

2009年12月6日サントリーホール 1-17列

<あらすじ>

『ブロウチェク氏の月への旅』

――ある満月の夜、プラハの居酒屋ヴィカールカ亭。
家主のブロウチェクさんは、ビールをたらふく飲んでは夢のようなことを話して、
みんなを困らせている。
やがて酔っ払ったブロウチェクさんは、ビール腹を突き出しながら千鳥足で歩き出す。
するとどうしたことか、どんどん体が引き上げられ、月に向かって飛んでいってしまった。

――月の世界の人々は、なぜかみんな下界の顔見知りたちにそっくりだが、
お金のことや食べ物のことにしか興味がないブロウチェクさんに
月世界の唯美主義者たちはあきれ顔。
「芸術の殿堂」に連れて行かれたブロウチェクさんは、そこでもヴィカールカ亭の常連たちにそっくりの芸術家たちに会う。
月世界の上品すぎるしきたりや草の香りを嗅ぐだけの食事に嫌気がさしたブロウチェクさんはペガサスに乗って下界に逃げ帰る。

――夜明けも間近な頃、居酒屋の前で眠りこけるブロウチェクさんを店の常連たちが担いでいく。


『ブロウチェク氏の15世紀への旅』

――今宵もまた、ヴィカールカ亭に出かけたブロウチェクさん。
千鳥足でつまずいたビヤ樽の中から続く地下の宝物殿でこのオペラの原作者チェフの亡霊に会う。
――場面は変わってフス教徒による宗教改革運動真っ只中の15世紀のプラハ旧市街広場。
現代チェコ語で話すブロウチェクさんはスパイ容疑で捕まりそうになるが、
居酒屋の常連とそっくりのドムシークの家に泊めてもらって助かる。
フス教徒とともに戦うのを嫌がって逃げたブロウチェクさんは、口からでまかせのうそをついたため裁判にかけられて火あぶりの刑へ。
赤々と燃える炎にブロウチェクさんが悪夢から覚めると...そこには居酒屋のあるじが灯りを手にして立っていた。



オーケストラは平台の舞台に並びステージ奥2階(P席)は東響コーラスが陣取るいつもの設定。

従って中間に登場人物たちの舞台が設けられて物語が進行する。

パイプオルガンを覆うようにスクリーンが下がり舞台転換ごとに映像が映し出され字幕も同時に

投影される仕組みで実にわかり易い。

ヤナーチェク独特の起伏に富む音楽(特に第2部で顕著)を飯森&東響オケが鮮やかに

音楽を紡ぐなか、歌手たちも澱みなくその流れに乗った歌唱で120分に及ぶ作品を

最後まで興味深く表現してくれた。また東響コーラス(混声)がいつものように

暗譜での見事な歌唱、ソリストではタイトル役のヴァツィークが軽妙な演技を含め一番の

功労者、ソプラノのマリア・ハーンも伸びのあるソプラノ歌唱で素晴らしい。

ヴァツィーク以外は何役もの掛け持ちで、こちらも役の見極めに戸惑ったが

皆さんそれぞれ満足の出来ではなかろうか、狭い舞台なので演技が停滞するシーンも

見受けられたが仕方のないこと。

演出のオタヴァさんも登場しての盛大なカーテンコール、やがてオケも退場したあと

主役のヴァツィークさんがお独りでおどけた仕種で再びステージに登場、

聴衆から大うけでした。

ストーリー的にはややまとまりに欠ける面はあるものの、時間に限りがあるオペラの世界、

深く考えずに、進行する出来事と音楽に素直に身を委ねれば特段不足も感じないというもの。

意欲的な本公演に改めて拍手。
★★★★★


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