「のり2・クラシカ」鑑賞日記

「のり2・クラシカ」鑑賞日記

2006年特選コンサート 一覧 その1


マリンスキー歌劇場管弦楽団


ワーグナー:<ニーベルングの指環>より

   楽劇<ラインの黄金>から
     「ワルハラ城への神々の入場」

   楽劇<ワルキューレ>から
     「ワルキューレの騎行」

   楽劇<ワルキューレ>から
     「魔の炎の音楽」

   楽劇<ジークフリート>から
     「森のささやき」
*************** intermission ***************


楽劇<ワルキューレ>第1幕/演奏会形式



ジークリンデ:ムラダ・フドレイ(ソプラノ)
ジークムント:アレクセイ・ステブリアンコ(テノール)
フンディング:ゲンナジー・ベズズベンコフ(バス)


2006.1.9 所沢ミューズ・アークホール 15:00 1階9列13番


指揮者のゲルギエフは既に何度も実演に接しているがマリンスキー劇場管は旧名称のキーロフ歌劇場管でのマーラー3番とN響と合同演奏したショスタコ7番レニングラード以来3回目の実演となる(いずれもゲルギエフの指揮)

予想していたことと言えオケの圧倒的な音量と金管、木管楽器の卓越した技量、弦の団員たちのさらりとした弾き方とはうらはらの出て来る音の芳醇な音色等ゴージャスなサウンドを楽しんだ。

休憩後の「ワルキューレ」第1幕・演奏会形式は歌手達はステージ最前列に位置し管理人の座席が9列目ということもあり「ストレート」にびんびん響く。字幕を横目にしながらの鑑賞であったが3人の歌手達も立派な演奏です。ここでもオケの響きは芳醇そのものでここミューズ・アークホールの響きの立ち上がりの良さも相俟って圧倒的な音の洪水であった。

ゲルギエフさん、指揮台なしで指揮、いつもの小刻みな指揮振りも影をうせて大きな流れ、うねりのある音楽を引き出した。
楽員がステージを去るまでBRAVO!と盛大な熱い拍手が幾度も続いた。

ロシアのオケの奏でるワーグナー、聴くまでは微妙な違和感を感じていたのだが、この後東京で予定されている<ニーベルングの指環>、さぞや素晴らしいチクルスになることだろう。
★★★★★
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ウラディーミル・フェドセーエフ指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・カリンニコフ
   交響曲第1番

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2・ショスタコーヴィチ
   オラトリオ「森の歌」



テノール:福井 敬
バリトン:牧野正人

合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:東京少年少女合唱隊


2006.1.20 サントリーホール 19:00 2階C8列29番

フエドセーエフさん、去年の東フィル定期は来日中止になったので二年ぶりに聴くことになった。

ワシーリー・セルゲーエヴィチ・カリンニコフ(1866-1901)の交響曲第1番
いかにもロシアの民族風な旋律満載の曲、フェドセーエフさん、東フィルを整然と纏め上げて最後まで飽きさせずに聴かせて見事、オケもニュアンス豊かに演奏。
フェドさんが指揮した時の東フィル、実に伸びやかで情緒豊かな旋律を奏して素晴らしい。

後半はショスタコーヴィチの「森の歌」
ステージ奥、下手に東京少年少女合唱隊、中央に東京オペラシンガーズの女声陣そして上手に男声陣の配置、男声のソリストは中央女声コーラスの前(オケの最後列)第7曲終曲の讃歌ではラッパx3&トロンボーンx3のバンダ舞台はホールP席のパイプオルガン脇に左右それぞれ並んで壮観な響きを奏でた。
声楽はソロも含めて水準以上で特に東京オペラシンガーズの力強い歌声と子供たちの合唱隊が素晴らしい出来。

フェドさんの指揮は意外と淡々とした曲の運びで起伏、いささかドラマ性に欠けるきらいがあるがまあ水準以上の演奏、終曲のバンダの金管部隊を含めた盛り上げは当時の政府が意図したプロパガンダには充分すぎるほどの昂揚感をもたらしたしスケール豊かなフィナーレであった。
★★★★☆
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ヘルベルト・ブロムシュテット指揮
NHK交響楽団
コンサートマスター:ペーター・ミリング(客員)

1・モーツァルト
   交響曲第34番ハ長調K.338


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2・モーツァルト
   ミサ曲ハ短調K.427


ソプラノ:幸田浩子
ソプラノ:半田美和子
テノール;福井 敬
バリトン:河野克典

合唱:国立音楽大学(田中信昭、永井宏) 


2006.2.3 NHKホール 19:00 1-L5-8

名誉指揮者のブロムシュテットさんを迎えての2月のN響定期すべてにドレスデン・シュターツカペレの前コンマスのミリングさんがコンマスで登場、N響の弦が後ろのプルトまで非常によく鳴りきって良い影響をもたらした。

ブロムシュテットさんお決まりの対向配置で3楽章からなる34番の交響曲は2管編成での演奏だが、まるで去年の来日で聴いたゲバントハウス管の響きのような滋味溢れる演奏で集中力にも富んで素晴らしい。

後半のミサ曲ハ短調がこれまた極上の演奏で出だしの「キリエ」から惹きこまれてしまった。
独唱では幸田さん半田さんとも出だしに不安があったがその後持ち直す、男性二人は安定した歌唱、特筆すべきは国立音楽大学の合唱で見事に揃ったハーモニーと美しさと力強さ。
途中、指揮者の指示で曲間に何回かメンバーがシャッフル移動したりしたが生憎管理人は明日の公演との振替席で前方下手端の席のため響きの違いを感じ取れず残念。

オケも硬めのバチを使ったテンパニを始め金管も渋い音色で全体的にやや古楽器風な響きで素晴らしい、木管の音色も同じく。

ブロムシュテットさん、「クレド」へ入る前にしばしの小休止をしてから演奏再開された。
しかしいつものことながらブロムシュテットさんN響から極上の響きと音楽を引き出しお見事でした。
★★★★★
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チョン・ミョンフン指揮
ロンドン交響楽団


1・ショパン
   ピアノ協奏曲第1番ホ短調
     横山幸雄(ピアノ)



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2・マーラー
   交響曲第5番嬰ハ短調



2006.3.7 ミューザ川崎シンフォニーホール 19:00 2階RA5列31番


2004年3月以来のロンドン交響楽団(前回は首席のC.ディヴィス指揮)の演奏会、前回のシベリウスやストラヴィンスキー他の作品でのLSOのブリリアントな響きと演奏に感動を覚えましたが今晩の2006年来日初日の演奏会、オケの調子はいまひとつの感じを覚えた。

前半にショパン・コンクールで過去、日本人最高位である3位入賞経歴をもつ横山幸雄氏のピアノでショパン1番協奏曲、骨太ながっちりした構成で弾くかと思いきや実に軽やかなタッチとリズムの流れで意表を衝かれた。
ミョンフン指揮ロンドン響も爽やかな伴奏に徹した感じ。
好き嫌い云々というより万人に受けるであろう好演。

休憩後のマーラー5番、ミョンフンさんの指揮解釈は一連の東フィルでのマーラー演奏と基本的に変わりはないようであるが周知のオケであるロンドン響との今晩の演奏ではオケ側の自発性に任せてミョンフンさんもっぱら縦のリズム指示の強調が目立った。

かといって歌うところはそれなりに歌わせながらあっと言う間にフィナーレを迎えてしまった感じ。

4楽章のアダージョは特別の叙情性は強調せず、又3楽章のホルンのソロ奏者も特別ステージ前への移動もなし、ただ強奏時では7名のホルン隊はベルアップしながら輝かしい音色を響かせた。

実に朗々とした湿度の少ない(ロンドン響のブリリアントな音色の所為?)健康的なマーラー5番、ミョンフンさん、あまり”ひねりもなく”あれれ!の肩透かしだが優秀なオケを従えてのストレート勝負でした。
(今日の席はステージの殆ど後ろの位置で聴いたので弦楽群についてはノーコメントにします)
★★★★☆
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大友直人指揮
東京交響楽団


1・ブラームス
   ピアノ協奏曲第2番変ロ長調
     小山実稚恵(ピアノ)


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2・ヴォーン・ウイリアムズ
   交響曲第7番
     「南極交響曲」

     諸井サチヨ(ソプラノ)
     大和田ルース(語り)
     東響コーラス(女声合唱)



2006.3.19 東京芸術劇場大ホール 14:00 2階C列35番

今日のホールの入りはまずまずの部類。
最初に小山さんを迎えてのブラームス2番、1楽章は波に乗れない感じでしたが(細かいパッセージが聴こえなかったり)後半に進むにしたがって熱演になりました。このところの小山さん、ミスもあったりしたのですが今回は大きなミスもなくこの大曲を弾ききりました。
ホールのあちらこちらから盛大なブラボー!の声がかかりました。

一方,大友/東響の演奏はこの曲の持つ重厚さとやさしさを見事に表現していたと感じます。

休憩後の「南極交響曲」ステージ後方3列に東響コーラスの女声たちが並び、その1列目中央にソロの諸井サチヨさんが。

もとは映画音楽のために書かれたもの(「南極のスコット」例の遭難したスコット隊の悲劇)に手を加えて作曲、7番目の交響曲とされた。
もちろん生演奏で聴くのは初めてでしたが素晴らしい演奏でした。
東響Vn奏者の大和田ルースさんパイプオルガンの脇に立ち各楽章冒頭に標題を英語でナレーション、実に表情豊かでした。

大友さん得意のイギリス音楽、ここでも音楽への共感が東響のオケをとおして充分に伝わってきました。
東響の弦も管も力強い表現と繊細さを表現したし、さらにパイプオルガンが絶妙な響きを醸し出して素晴らしい。
ソロの諸井さん、東響コーラスの皆さんも澄んだハーモニーを聴かせて立派でした。(女声コーラス、珍しくスコアを見ながらでしたが、曲の性格上、音程や入りのタイミングなどさぞや大変だったのではと推察)

打楽器もゴング、鐘、グロッケンシュピール、シロホン、ヴィブラホーン、チェレスタ、果てはウィンド・マシーンまで使用する大変多彩なもので東響打楽器隊、大活躍でした。

終楽の5楽章は女声コーラスとウィンド・マシーンが消えるように奏されてエンディング。
そして続く空白の時間。。。
やがて静かに拍手が鳴り響く素晴らしい時間でした。
楽員、聴衆の全員に改めてBRAVO!を贈りたいと思います。
★★★★★
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リッカルド・ムーティ指揮
東京のオペラの森管弦楽団
東京のオペラの森合唱団

1・ヴェルディ
   「レクイエム」



ソプラノ:バルバラ・フリットリ
アルト:エカテリーナ・グバノワ
テノール:ジュゼッペ・サッバティーニ
バス:イルデブランド・ダルカンジェロ



2006.4.6 東京文化会館 19:00 3階R4列25番

ほぼ満員の聴衆でしたが何故か開演時間が20分遅れて合唱団、指揮者ソリストの登場での演奏開始。アナウンスが何もないのが不思議でした。

ともかく演奏の方ですが素晴らしいの一語に尽きるコンサートでした。
サイトウキネン等の小澤征爾にゆかりのあるオケ・メンバーが殆どで管楽器には外人奏者が目立ちました。

日本人が殆どの弦セクションはニュアンス豊かでしたしムーティさんの指示にも的確に反応してお見事、金管も(大半は外人奏者)元気はつらつでブリリアント。ただバンダのラッパはイマイチの出来。

それにしてもムーティさんの見事な指揮振りには(勿論、解釈もですが)ただただ唖然びっくり、ダイナミックでエネルギッシュあふれんばかり、「怒りの日」なんかは背筋が寒くなるほどの凄みでした。双眼鏡片手に只管、ムーティさんの雄姿と
フリットリさんばかりを追いかけていたような。。。

そこでソリスト陣、本日の4人の独唱者、みなさん充分に役目を果たしました。
生で聴いたことがあるのはテノールのサッバティーニのみ、フリットリもダルカンジェロもDVDでのオペラでは既に御馴染みですがメゾ・ソプラノのグバノワさんは初めて聴きましたが素晴らしいです、音程がしっかりしているし良く響く声です。
今後はむしろ素晴らしいワーグナー歌いになりそう。

サッバティーニ、ダルカンジェロも充分に持ち味発揮しましたが何と言ってもソプラノのバルバラ・フリットリでした。彼女のみスコアを用いずの歌唱、このヴェルディの「レクイエム」は彼女の十八番になっているのでしょうね。
当然、声量の配分にも留意したのでしょうし時おり椅子の脇のコップからの水分補給も怠り無く最後まで見事に存在感をしめしました。
終曲の「われを許したまえ」のフリットリの歌唱はまさに彼女の独壇場でしたね。

さて今夜の合唱たち、メンバー表をみたら管理人が日頃注目している臼木あいさんや文屋小百合さんなども載っているではないですか。オペラの森合唱団、統一のあるハーモニーだったとは言いがたいですがそれでも劇的な表現力とダイナミックレンジの豊かさは充分評価できます。

今夜のオケ、コンマスに矢部達哉さん、ヴィオラのトップはコンセルトヘボーの首席奏者の波木井さん、お隣に川本嘉子さんがお坐りでした。
生憎座席の関係で舞台上手側、チェロ、コントラバス側のメンバー配置は良くわかりませんでした。

90分におよぶ大曲でしたがムーティさん、前半の50分、後半のアニュスディからの40分と少し間を分けた時間の配分でした。
ただ惜しむらくはムーティさんの曲の進行の意図に反して会場が曲のつなぎの場面にざわざわ感があって少し感興を削がれる場面も。
それにしても終わってみれば盛大な拍手と何回ものカーテンコール!

今日の指揮者、ソリスト共、このレクイエムのためだけに来日(この後もう一回、トリフォニーホールで演奏)したわけですからある意味贅沢なコンサートでもありました。
★★★★★
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ダニエル・ハーディング指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・マーラー
   交響曲第2番「復活」



ソプラノ:カミラ・ティリング
アルト:カタリーナ・カーネウス

合唱:東京オペラシンガーズ


 2006.4.8 文京シビックホール大ホール 15:00 2階11列29番

満員の聴衆をむかえて行われた演奏会、ハーディングへの期待が高まる演奏会であったが初めての日本のオケの指揮台に立ちまずは大成功のデビューを飾ったのではないか。

シビックホールの2階中央前から3列目の絶好のポジションでハーディングの指揮振りも良く観察できたし、16型編成の東京フィルの音もレスポンス良く響きが届いてきた。

マーラーの指示で1楽章の後、少なくとも5分の休みをおくとのことだが今回はその1楽章の演奏後に合唱団とソリストが登場して結果的にはスコアの指示に従ったことになった(5分以上経過したので)。

ハーディングさん、きびきびとしたリズム感で曲を運び東フィルも大健闘でした、若干弦楽器群にもう少し音の厚みが欲しいところですがオケ片方のメンバーは新国立のオペラに割かれているので致し方ないですね。
バンダで演奏したHrn4,Trp4,Pecのメンバーが素晴らしい活躍でニュアンス豊かな響き。

そしてハーディングとともに今日の特筆すべきは東京オペラシンガーズの合唱で表情豊かな表現と完璧なハーモニーと力強さで感動がさらに増した。

2人のスエーデン出身のソロも安定した歌唱。

5楽章のフィナーレは先述の合唱たちの歌で高揚していき、最後はまさにハンマーの一撃のような圧倒的な迫力で終結。
★★★★★
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シャルル・デユトワ指揮
NHK交響楽団 第1566回定期公演

1・ラヴェル
   スペイン狂詩曲


2・モーツァルト
   ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466
     ピヨートル・アンデルジェフスキ(ピアノ)


************ intermission ****************


3・シマノフスキ
   交響曲第4番(協奏交響曲)作品60
     ピヨートル・アンデルジェフスキ(ピアノ)

4・ラヴェル
   バレエ音楽「ラ・ヴァルス」


2006.4.15 NHKホール 15:00 1階L9列13番

 満員の聴衆です、久々登場のN響名誉音楽監督のデュトワを迎えてのN響定期。

前日のFM放送生中継を聴いて臨んだ本日の演奏会、直接生で聴いたこともあり本日は更にどれもスリリングに富んだ或いは情感豊かな音楽が繰り広げられて素晴らしいコンサートでした。

気鋭のポーランド出身のピアニスト、アンデルジェフスキさん、モーツァルトでは気品さを、シマノフスキでは情熱的な演奏で楽しませてくれました。

そしてデュトワさん、昨日の放送での唸り声はお終いの4曲目「ラ・ヴァルス」で少しだけ耳にしましたが、カーテンコールで洟をかんでましたので(歩行も少しふらついていたような)風邪でもひかれていた感じですが演奏はどれも素晴らしく特に圧巻は「ラ・ヴァルス」でした。
ウィットに富んだ弦楽群、ダイナミックな金管群、木管もチャーミングな音色、そして総ての楽器たちを効果的に引き締めた打楽器たち。
それぞれが熱い演奏で滅多に体験できない凄い「ラ・ヴァルス」でした。
弦では特にチェロ&コントラバスの強調、迫力が印象的でした。

コンマス:堀さん、チェロ:藤森さん、コントラバス:吉田秀さん、
オーボエ:茂木さん、クラリネット:磯部さん、フルートはトラで女性の方がトップを吹いていましたが良かったです。
★★★★★
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東京二期会、ハンブルグ州立歌劇場との共同制作 
       モーツァルト生誕250周年記念公演

1・モーツァルト
   オペラ「皇帝ティトの慈悲」全2幕



ローマ皇帝「ティト」:望月哲也
ヴィテッリア    :林 正子
セルヴィーリア   :幸田浩子
セスト       :林美智子
アンニオ      :長谷川忍
近衛長官プブリオ  :谷 茂樹

合唱 :二期会合唱団
管弦楽:東京交響楽団

指揮:ユベール・スダーン
演出:ペーター・コンヴィチュニー

舞台美術:ヘルムート・フラーデ
照明:マンフレート・フォス
舞台監督:幸泉浩司

2006.4.20 新国立劇場オペラ劇場 18:30 1階16列40番

満員の聴衆です、コンヴィチュニーの演出、スダーンの指揮するモーツァルトですから期待の程も分かるというもの。

純粋に声楽だけを楽しむ向きには”あれれ!”だっかも知れませんね。
出演の歌手達の動きの激しさもあり歌唱のみでの批評は的外れで芝居(演技)とそれなりのハードな動きの中での歌唱を楽しむべきでしょう。

誰が突出していたと言うわけではなく皆さん、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。が、やはり林正子さん、そして林美智子さんがなかでも抜群の存在感でした。

そうタイトル役の望月さんも第2幕では客席に座りながら指揮者のスダーンさんや会場の聴衆に問いかけたり軽妙な演技も示しました。

東京交響楽団は音楽監督スダーンさんのもとしっかりとした音楽を奏でました。

このオペラは本来オペラ・セリアの範疇に入るものだと思うのですが今夜のコンヴィチュニーさんの演出はむしろオペラ・ブッファ的な軽妙な笑いも交えた総合演劇的な作品に仕上がっていました。狙い通りの会心の出来ではなかったでしょうか。

コンヴィチュニーさんもカーテンコールでの舞台上で何度も笑みを浮かべていたのが印象的です。
★★★★★
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若杉 弘指揮
東京フィルハーモニー交響楽団 


1・プフィッツナー
   歌劇「パレストリーナ」
     3つの前奏曲


*********** intermission *************



2・ブルックナー
   交響曲第7番(ノヴァーク版)




2006.4.22 サントリーホール 19:00 2階C8列29番


2007年からいよいよ新国立劇場の音楽監督に就任が決まっている若杉弘さんが殆どその新国立劇場の専属オケのような東京フィルの定期公演を振った演奏会。

プログラムも魅力に富んだもので若杉さん得意のR・シュトラウスと同時代のプフィッツナーの3幕からなる歌劇「パレストリーナ」よりそれぞれの3つの前奏曲、特に第2幕の喧騒の場面で始まる不協和音的な音楽が秀逸、オケもポリフォニックな響きを綺麗に表現。
前半で早速BRAVO!の声。

後半のブルックナー7番(ノヴァーク版)
若杉さんらしい堂々としたオーソドックスな解釈、東フィルのオケも決して力ずくではなくて細やかで精緻に満ちた表現です。
がしかし、鳴らす箇所では若杉さんの身振りよろしく整った響きでレスポンスの良い反応。

非常に整った音楽に仕上げました。ヴァントやチェリビダッケなどの巨匠風の解釈には程遠い対極にあるブル7ですが若杉さんの相変わらずの若々しい往年の青春の息吹に触れた感じの今夜の演奏会でした。
ホールからは盛んなBRAVO!の声、すごい声援がいつまでも続きました。
★★★★★
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ヨゼフ・スウェンセン指揮
東京都交響楽団 第627回定期演奏会



1・ニールセン
   歌劇「仮面舞踏会」序曲


2・チャイコフスキー
   ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
     ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)


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3・ニールセン
   交響曲第4番「不滅」


2006.5.16 サントリーホール 19:00 1階7列36番

ヨハン・スウェンセンは1960年NY生まれで両親はノルウェー人の父と日本人の母。
日本へは1988年N響定期へヴァイオリニストとしてデビュー、シベリウスの協奏曲を弾いている。
都響へは昨年2月が初客演でシベリウス2番を指揮、現在はマルメ歌劇場管の首席指揮者をつとめている。

実に勘所を押さえた指揮でシャープな音楽を作る人に感じた。
今夜の全プログラムを弛緩を感じさせずに見事に聴かせた。もちろん都響のメンバーもそれに充分に応えて素晴らしいです。

ピアノのニコライ・ルガンスキーは1972年モスクワ生まれ、このチャイコフスキーの協奏曲では大げさな身振りもせず淡々と弾きこなしているようで奏でられた音楽はそれは素晴らしいものでした。
技術は超絶技巧に近く、完璧な上にリリシズムも充分感じさせ聴いている途中に、ふと米ソ冷戦状態の時代にチャイコフスキー・コンクールでアメリカから乗り込んで優勝したヴァン・クライヴァーンを彷彿とさせました。ルックスもどことなく当時のクライヴァーンに似ているような。。。

都響の伴奏も小気味のいいほどのすかっとした音色と響きでお見事。
ルガンスキーさん、ホールの盛大な拍手、歓声にこたえてアンコールを1曲
チャイコフスキー/ラフマニノフ編曲「ララバイ」

プログラムの両端はニールセンの作品
演奏時間5分ほどの「仮面舞踏会」序曲もそうですが第4シンフォニーも実に奏でられた音が気持ちのいいほど協調した響きでブラスもうるさく感じないし木管も上手く溶け合って「これがいつもの都響か」といささか驚いた。

「不滅」の終楽章に2組のティンパニが活躍しますが今回はステージ一番奥の両翼(右と左)を目いっぱいに使っての配置、管理人の席は上手側(右側)でしたがそれでも左右のティンパニの圧倒的な応酬合戦を聴き取ることが出来ました。
そして血肉が騒ぐフィナーレ、スウェンセン/都響の演奏、お見事の一言。
もちろん最近にない凄い声援がサントリーホールに響きわたりました。

スウェンセンさん、北欧の作品ばかりではなくマーラーあたりの作品ではどんな演奏を聴かせてくれるのだろうか是非聴いてみたいものです。
次回の来日が楽しみです。
★★★★★ 本日の都響のメンバー全員に乾杯!♪
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ドミトリー・キタエンコ指揮
東京交響楽団 第536回定期


1・ショスタコーヴィチ
   ヴァイオリン協奏曲第1番
     (ヴァイオリン)川久保賜紀



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2・ショスタコーヴィチ
   交響曲第7番ハ長調
      「レニングラード」



2006.5.27 サントリーホール 18:00 1階18列28番


オール・ショスタコーヴィチのプログラムで組まれた今夜の東響定期公演、
キタエンコ指揮ですから半ばよい演奏会になるのは予想が付いたがこれほどまでの緊張、スリリングに満ちた演奏には滅多に出会えるものではないくらい感動。

まずキタエンコさん、この日の演奏の数日前(21&22日kitara)に札響定期でこの第7番「レニングラード」を指揮して充分手の内に入った状況での東響とのコンサート、まさしく満を持して臨んだ作品で的確な指示で70分を超える長大な作品を最後まで聴く側を見事に惹きつけて素晴らしい。

一方東響のメンバーも一人一人が熱演を繰り広げてくれました。
特に誰かを列挙するまでもなく楽員全員の誠実で確かな技量と指揮者との見事なまでのコラボレーションの勝利と言ったところか。
東響、フル編成でコンマス(コンミス)は大谷康子さん。

終楽章のフィナーレ・クライマックスの炸裂する大音響も見事なまでの均一な響きを保ったもので何年か前にゲルギエフ/キーロフとN響の合同演奏会(NHKホール)を凌駕する演奏に出会えた。
こんなに盛大で長い拍手、歓声は随分久しぶりのような気がするくらい。

川久保さんをソリストに前半に奏された協奏曲も40分を超える曲ですが、
こちらも熱演で川久保さんの一段の成長ぶりを確認。
★★★★★
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サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団

ソプラノ:ルネ・フレミング


1・チャイコフスキー
   幻想的序曲「ロミオとジュリエット」


2・チャイコフスキー
   歌劇「エフゲニー・オネーギン」より
     手紙の場面


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3・ベルク
   アルテンベルク歌曲集作品4


4・ワーグナー
   歌劇「タンホイザー」より
     序曲とバッカナール



5・R・シュトラウス
   歌劇「カプリッチョ」より
     最後の場面

 (ソプラノ)ルネ・フレミング
 (バス)オーレン・グラダス


2006.6.19 サントリーホール 19:00 1階10列40番

オケは16型編成の対向配置で本拠地MET同様、山台を使わないオケの並び。
最初の「ロメオとジュリエット」からメト管から豊潤な響きが奏でられゴージャスな音楽を堪能。弦も非常に良く揃っている。

「手紙の場面」からフレミングさんの登場、若草色のステージ衣裳が良く似合っています。フレミングさんのロシア語の発音がやや不明瞭に感じたが上手側の席で聴いている所為かも知れません。歌唱は文句なしで豊かな声量とニュアンス、オケも情熱的な高まりを見事に表現、指揮のデイヴィスさんとの相性は意外といいかも。

休憩後はベルク「アルテンベルク歌曲集」正式なタイトルは「ペーター・アルテンベルクが絵葉書につけたテキストによる5つの管弦楽つき歌曲」
ベルクの複雑で多彩な響きに乗ってフレミングさん自在な歌いまわしと豊かな表現に感嘆、オケもこの複雑な大オーケストレーションを巧みな音楽で奏でる。

「タンホイザー」序曲とバッカナール
デイヴィスの真骨頂か、均整のとれた表現でとりわけ終曲部の静寂さの繊細な表現とオケの特に金管が良くコントロールされた響き音色で応えて感心した。

最後は「カプリッチョ」から最後の場面、執事役のバスのグラダスが最初と最後に下手扉から出てきて短い歌唱、朗々たる力強い歌を聴かせる。
鏡の中の自分に向かって二人の男性から思いを寄せられ選択を迫られて答えを模索している場面、フレミングさん、ここでも多彩な表現と見事な高音域の歌唱が印象的。

いずれにしろ今夜はフレミングさんのスケールに満ちた歌とメト管のゴージャス・サウンドに満足。
★★★★★
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モーツァルト
   歌劇「ドン・ジョヴァンニ」


ドンナ・アンナ:アンナ・ネトレプコ
ドンナ・エルヴィラ:メラニー・ディーナー
ツェルリーナ:マグダレナ・コジェナー
ドン・オッターヴィオ:マシュー・ポレンザーニ
ドン・ジョヴァンニ:アーウィン・シュロット
レポレロ:ルネ・パーペ
マゼット:ジョナサン・レマル
騎士長:セルゲイ・コプチャク

演出:マルト・ケラー
装置:ミヒャエル・イャーガン
照明:ジーン・カルマン
衣裳:クリスティーヌ・ラポ=ピンソン

サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団

2006.6.20 東京文化会館 18:30 1階R12列5番

開演前のロビーには外国人の姿が異様なほど多く在日の外国人の方々が
久しぶりにMET公演を楽しみに、という感じでしょうか。
開演前から華やかな雰囲気でした。

大きな期待を抱いて臨んだ本日の公演でしたが
充分に満足した素晴らしいものでした。

METオケ、序曲が鳴りはじめた時にはあれっと思いましたが、、、
随分と潤いのない響きだったので。
しかし徐々に調子を上げてきて機能的な演奏に。

歌手達は全く危なげなく演技もそこそこ楽しませていただきました。
特にネトレプコとコジェナーの妖艶な演技に脱帽!

会場の拍手声援の大きさではネトレプコ、シュロット、コジェナー
の順でしょうか、他の歌手達へも盛大なBRAVO!が飛びました。

流石、METというほかに言葉がありません。
18:30開演、途中35分の休憩を挿み終演時間は22:00でしたが
全く中だるみも感じさせない非常にドラマティックで
華麗なスターたちの競演を楽しみました。
★★★★★
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ワーグナー
   楽劇「ワルキューレ」



ジークリンデ:デボラ・ヴォイト
ジークムント:プラシド・ドミンゴ
ブリュンヒルデ:デボラ・ポラスキ
ヴォータン:ジェームズ・モリス
フリッカ:イヴォンヌ・ナエフ
フンディング:ルネ・パーペ

演出:オットー・シェンク
装置:ギュンター・シュナイダー=ジームセン
衣裳:ロルフ・ランゲンファス
照明:ギル・ウェクスラー

サー・アンドリュー・デイヴィス指揮
メトロポリタン歌劇場管弦楽団&合唱団


2006.6.21 NHKホール 17:00 3階C11列50番

休憩(30分x2)を含み5時間にも及ぶ本日の公演、終演時間は22時を回っていました。

今夜はプラシド・ドミンゴさんに尽きます。歌手引退の噂も出ていますが60歳半ばにしてこれだけの演技と歌唱に驚きました。全盛期の輝くような歌唱、声量はないものの見事に第1幕と第2幕を歌いきりました。

二人のデボラ、ヴォイトとポラスキ、特にブリュンヒルデ役のポラスキの見事な立ち居振舞いと安定した歌唱に感嘆、ヴォイトもさすがの存在感。

ヴォータン役のJ・モリスもまさしく適役で歌唱も演技も堂々としたものでご立派。
04年のNY.METでの「ボリス・ゴドノフ」タイトルロール役での死の場面での階段落ちの体を張った演技が思い出されます。

フリッカ役のI・ナエフは初めて聴きますが美しい容姿とともにドラマティックと繊細さを併せ持つ幅広い表現をみせて素晴らしい。

さすがMET,演出も奇を衒ったところのない舞台美術もオーソドックスな仕掛けですがまさしく王道を行く「ワルキューレ」を堪能。

デイヴィス指揮するメトのオケもここぞの場面では力強い分厚い響きを奏でワーグナー好きにはさらに興奮を高めてくれた。歌手に対する伴奏としてのオケ・バランスもお見事。

まさしくNYが誇るオペラの殿堂「MET」の醍醐味を満喫した一夜。
★★★★★
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大友直人指揮
東京交響楽団 第537回定期


1・シェーンベルク
   「グレの歌」


共演:京都市交響楽団

ヴァルデマル王:トーマス・ステュードベイカー
トーヴェ:ギネス-アン・ジェファーズ
山鳩:坂本 朱
農夫:長谷川 顕
道化師(クラウス):吉田浩之
語り手:ヨズア・バーチュ

合唱:東響コーラス
合唱指揮:三澤洋史

2006.6.25 サントリーホール 18:00 1階18列28番

まずステージ上に弦楽器のメンバーが勢ぞろい、と言っても今夜は東響と京響の合同オケ20型編成くらいでしょうか、壮観な眺めのなか大友さんの登場、大友さんのMCで先ごろ亡くなられた2人の指揮者、岩城宏之さんと京響とゆかりの深い佐藤功太郎さんのご冥福を祈ってJ・C・バッハ/エアーが演奏されました。厳粛、荘厳な演奏。

そして本日の大作「グレの歌」管や打楽器のメンバーたちが登壇、この日は何とハープが4台、ホルン隊は11名(内ワグナーチューバ持ち替え4名)双方のオケも殆どフルメンバーでステージ狭しと並ぶ様は窮屈に思えるほど。

弦プルトの表は東響の楽員が並びチェロは東響首席のボーマンさんの隣に京響首席の上村昇さん。本日のコンマスは大谷さん、2プル表は今は京響のコンマスに就任されたニキティンさん(東響ゲストコンマス)が並ぶといった豪華メンバーで演奏された今夜の大作「グレの歌」

字幕を期待したが残念ながら用意されず、しかし数日前にブーレーズ指揮のDVDで事前鑑賞をした甲斐があって素直に物語に没入できて正解でした。

演奏は大編成にもかかわらず陰影に富んだ表現で弦楽器群の響きの統一感が素晴らしい。管楽器群もいたずらに強奏もせず好ましい響き、それとこの曲は打楽器群には様々な楽器(?)が登場、ガラガラや何と鉄の鎖まで鳴らすありさま。

後期ロマン派の色濃い旋律から無調の世界までシェーンベルクの総てが凝縮された世界を大友直人率いる東響と京響がパノラマ絵巻の如く見事に表現、圧倒された。

第一部の後の休憩後に東響コーラスの混声合唱団が登場、ホールのP席エリアだけでは足りずに臨時の席まで設営、LA/RAの一部まで合唱が占めてこれも壮観。
主に男声合唱の出番が多かったのですが、あいかわらず全員暗譜で混声合唱(女声)の出番は終曲のみでしたが難解な曲を彼、彼女らは高らかに歌い上げ圧倒的なフィナーレ。

ソリストではステュードベイカーが出ずっぱりと言う事もあるのか後半は失速気味でしばしオケに声をかき消された、全体に声量不足。
トーヴェ役のジェファーズと山鳩役の坂本は素晴らしい歌唱をみせてさすがお見事。
農夫役の長谷川、道化師の吉田も出番は少ないものの立派な歌唱をみせた。
語り手のバーチュも軽妙で雰囲気充分。

創立東響60周年、京響50周年を祝う今夜の演奏会、非常に感動的でエポックメーキングな一夜であった。
★★★★★
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藤原由紀乃 ピアノ・リサイタル

「シューベルトの夕べ」


1・シューベルト
   6つの楽興の時 D780.OP91



************ intermission *************


2・シューベルト
   ソナタ第21番変ロ長調 D960 遺作



2006.7.7 東京文化会館小ホール 19:00 D列28番


毎年この時期に小ホールで開催される藤原さんのピアノ・リサイタル、今年で3年連続、足を運ぶことになります。

いつもと同じベーゼンドルファーがステージ中央に置かれ藤原由紀乃さん、黒のシックなドレス姿で登場(去年は確か白のドレスでした)

「楽興の時」ゆったりとしたテンポの所為とベーゼンの響きもあり、やや重い演奏に感じる。珍しく若干のミスもあったりして。

休憩後はシューベルトの他界の年に書かれた3つのソナタの最後の作品である第21番「遺作」、40分にもなる大曲ですが藤原さん、悠然としたテンポと確かな打鍵テクニックで立派な演奏でした。特に強弱のバランス・コントロールが素晴らしい。

アンコールに再び第21番ソナタから第2楽章:アンダンテ・ソステヌートが演奏されました。
会場には昨年結婚されたご主人(新極真会の空手の師範)が来場者と挨拶をあっちこっちでされていました。藤原さんも空手を始めたらしいので心の精進が今後の藤原さんの演奏表現にどんな影響を与えるのか楽しみです。
★★★★☆
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大野和士指揮
東京フィルハーモニー交響楽団


1・ベルリオーズ
   劇的交響曲
     「ロメオとジュリエット」



寺谷千枝子(メゾ・ソプラノ)
真野郁夫(テノール)
牧野正人(バス)

東京オペラシンガーズ(合唱)


2006.7.21 サントリーホール 19:00 2階C8列29番

ベルリオーズの3番目の交響曲にして100分にも及ぶ大作を今や実力、人気とも絶好調の大野和士の指揮で聴いた。

劇的交響曲「ロメオとジュリエット」

正式タイトルは「ロメオとジュリエットーシェイクスピアの悲劇による合唱、独唱と合唱によるレチタティーヴォのプロローグ付きの劇的交響曲」
ということらしい。
7つの楽章からなる各場面、情景を大野率いる東フィルが素晴らしい描写力を展開、またソリストたちや合唱の東京オペラシンガーズの皆さんも実に精緻に満ちた音楽表現。特にバスの牧野さんの朗々たる歌唱に圧倒された。

休憩なしで一気に演奏されたが弛緩もせずに最後まで聴かせてくれた。

旧知の仲の大野さんと東フィル、ある程度の好演になるだろうとは予想されたものの、これ程までに正攻法で堂々とした王道の演奏を聴かせるとは想像以上です。
それにしても最近の東フィル、コンサートで聴く限り圧倒的パワーこそないものの精緻な響きと豊かな表現力に富んだ演奏を重ねて嬉しい限り。

終曲の壮麗な演奏は超感動もの、是非NHK-FMでの放送を望みたい。
★★★★★
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ユベール・スダーン指揮
東京交響楽団 第539回定期演奏会


1・モーツァルト
   フリーメーソンのための葬送音楽K.477


2・モーツァルト
   クラリネット協奏曲イ長調K.622
     赤坂達三(クラリネット)


*********** intermission *************



3・モーツァルト
   交響曲第41番ハ長調
     「ジュピター」K・551


アンコール1・モーツァルト 行進曲ニ長調
アンコール2・モーツァルト カッサシオン ニ長調からアレグロ


2006.9.9 サントリーホール 18:00 1-18-28


スダーンさん、指揮台無しでの振り、東響の編成は2管、8-7-6-5-4の弦編成で今夜の指揮者スダーンさんお得意のモーツァルト・プロ、弦の響きは均一な透明感にあふれ尚且つ木管を始めオケの他のメンバーも見事に調和のとれたアンサンブルを奏でる。

今夜のゲストのクラリネット奏者赤坂達三さんも技巧的と音色の微妙な変化と柔らかな音色を織り交ぜ素晴らしいモーツァルトを奏でました。

スダーン指揮東響、音質的にはピリオド奏法に近い響きでモーツァルト作品の一つの基準になる素晴らしい演奏、特に最後の交響曲41番ジュピターは実に優雅な天上的な響きで雄渾な演奏とは一味違う新鮮な演奏でした。
アンコールも楽しい曲で良い演奏でした。
★★★★★
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ダニエル・ハーディング指揮
マーラー・チェンバー・オーケストラ


1・モーツァルト
   交響曲第39番変ホ長調K.543


*********** intermission *************


2・モーツァルト
   交響曲第40番ト短調K.550




*********** intermission *************



3・モーツァルト
   交響曲第41番ハ長調K・551
     「ジュピター」





2006.10.6 東京オペラシティコンサートホール 19:00開演  3-C1-20


ハーディング氏とは本年3月、東フィル「復活」の演奏会以来となります。
今回の来日は手兵のマーラー・チェンバーを率いての演奏会

どれも実に斬新な解釈での演奏となりました。
ハーディングの意表をつくテンポ設定(緩急の差が激しい)強烈なリズムアタックなど、どれも刺激的だがチャーミングさも忘れていない。

マーラー・チェンバーオケも均一に整った響きの演奏で指揮者の棒に柔軟に応えて素晴らしい出来栄え。

曲の終了ごとに休憩を設けたのも新鮮で、意図的に休憩を設ける事でそれぞれの曲想の違いを浮き彫りにする狙いもあったのでしょう、それは見事に演奏の違いに現れていたように感じます。

やはり今夜の演奏会のクライマックスは最後におかれた41番「ジュピター」で実に雄渾で壮大なフィナーレの後、聴衆から猛烈、強烈な歓声が湧き起こりました。
ムーティ/ウィーン・フィルに代表される従来の優美なモーツァルト演奏とは一線を画した新鮮な演奏で作曲者の時代の演奏スタイルはもしかして今夜のような演奏だったかもと感じ入りました。

昨年でしたかノリントン指揮シュトゥットガルト放送響、来日公演で耳にしたマーラー「巨人」の斬新な演奏解釈に大層驚いた記憶がありますがそれに匹敵する嬉しい驚きでした。
10-8-6-5-3の2管編成で対向(両翼)配置
3階席の最前列中央寄りのベストの席でマーラー・チェンバーオケの美音を楽しむ事が出来ました。
★★★★★
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クラウディオ・アバド指揮
ルツェルン祝祭管弦楽団
コンサートマスター(コーリャ・ブラッハー)

ラヘル・ハルニッシュ(ソプラノ)

1・モーツァルト/コンサート・アリア
     「わが愛しの希望よ!
   ・・ああ、そなたにはどんな苦しみかわかるまい」K. 416

2・モーツァルト/コンサート・アリア
     「ああ、できるならあなたにご説明したいものです」K. 418


3・モーツァルト/コンサート・アリア
     「わが感謝をお受け下さい、やさしき保護者よ」K. 383


************** intermission **************


4・マーラー
   交響曲第6番イ短調
     「悲劇的」




2006.10.13 サントリーホール 19:00開演 2-LD2-11


ルツェルン・フェスティバル・イン・東京2006と銘うたれた一連のコンサート
オケは先日聴いたばかりのハーディングが音楽監督を務めるマーラー・チェンバー・オーケストラが主体のメンバーにアバドとゆかりのある世界のトップ・プレーヤーが参加した季節限定の臨時オーケストラ。
今年は本拠地のルツェルン以外では日本のみの極めて貴重な機会を得たコンサート。

マーラー「悲劇的」の演奏
ホールにあふれんばかりの楽員が勢揃い、編成は1,2Vn36,Va16,Vc14,Db10,
管楽器Hrn8,Trp6,Tb4など、Hp3,Perc6,木管は数え忘れましたがクラにはザビーネ・マイヤー、フルートにはジャック・ズーン、Hpには吉野直子さんがトップの席に。

さてマーラー交響曲第6番、マリオ・ブルネロ率いるチェロとコントラバスによる序奏から始まった今夜の演奏ですが、全編とにかく緻密でいながら音楽の流れに澱みが無く流れて緊張しまくりの(良い意味での)ひと時でした。

アバドさん、最近の傾向だと思うのですがスコアに忠実の何も引かない、足さない解釈なのですが長年の輝かしい指揮者経歴をいったん棚卸をした後の哲学者然とした彼の人生の集大成の音楽、マーラーを聞かせていただいた感じをもちました。

対するオケ側も実に細やかな繊細な音色で特に1,2Vnのまるでpppかと思わせるトウッティで奏される旋律などくっきりと浮かび上がって聴こえてきます。(特に3楽章スケルッオなど)
まさしく室内楽の素晴らしい完成度がそのままオケへの集合体になっているのが実感されます。勿論、fffの時には均一な響きのしかし力強い旋律が奏でられます。

管楽器で特に印象に残ったのはホルンのアレッシオ・アレグリーニ(サンタチェチーリア管ソロ)とラッパのラインホルト・フリードリヒのお二人、その完璧なテクニックに驚きました。

全体の印象としては迫力よりも各楽章の性格付けがはっきり描き出されていた演奏でオケの各楽器のバランスも鮮明に聞き分けられて新しい発見もあり(CDでは決して聴こえてこないだろう対位旋律などの)緻密に計算されたわけでは無いのでしょうが終わってみればこの曲の偉大なスタンダード、模範的な演奏に接した思いです。
アバドに心酔、寄り添って演奏する楽員たちとの見事な演奏、フィナーレ・ラストの衝撃的な一撃がペシミズムをとり払い現実の”生”への覚醒を呼び覚ますまさに劇的な一撃となりました。
そして特筆すべきは本日の聴衆のみなさん、アバド氏のタクトがふりおろされて静止のあと暫し30秒ほど、或いはもっと長かったかも知れませんがその静寂が千金の値でした。
その後は盛大な歓声、BRAVO!だったことはいうまでもありません。アバドさん、楽員が去った後も一人ステージに呼び戻され盛んな声援を受けていました。

本日は2,3楽章が入れ替わりスケルッオは3楽章として演奏、また4楽章でのハンマー打撃は2回、強烈な音でした。

前半に演奏されたモーツァルトのアリア集、当初のプログラムには無かったのですが急遽追加されたようです。
スイス生まれのソプラノ歌手ハルニッシュさん、初めて接しましたが澄んだ音色で声量的には大きくはないですが細やかな歌いまわしが出来る歌手のように思いますが本日のアリアでは音程的に不安があるように感じました。
個人的にはマーラーだけで充分の演奏会でした。
★★★★★+++
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To be continued


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