052047

一歩

わたしとピアノ

母がピアノの先生をしていた。
生徒は１０人くらいいたかもしれない。
私も母にピアノを習った。
ピアノは大好きだった。
ただ、母に小言を言われるのが嫌だった。
親に物を習うってなかなかうまくいかないもの。
それが嫌で四年生の時に一度ピアノをやめた。
それでもやはりピアノは好きだったので、何となく続けてはいた。
他のピアノの先生を探したりもしたが、いい先生にめぐり合ったのは高校に入ってから。「音楽の大学に行きたい」と言っても「無理だから保育科にしたら？」と言われる始末。それでもどうしても音楽の大学に行きたくて、一浪してやっと入った。
やっとの思いで入った大学。ばら色・・・かと思いきや、付いた先生が最悪。
相性が悪い、先生の教える気もない。
やりたい気持ちがあっても、遅れているというだけで認めてはもらえなかった。
やりたい気持ちだけが空回り。
レッスンなんて、ただ自分の力のなさを指摘されるだけで、どうしたら上達できるのか、教えてはもらえなかった。
あとは自分の意思の弱さもあった。
そんな事ばかりの繰り返しの４年間。
唯一つ、音楽が好きだという気持ちが強まった事、それが４年間の中でのいちばんの収穫だった。

今は娘がピアノをやっている。
私といえば娘の練習に付き合っている。
自分ではあまり弾かない。というか、もう弾けない。
娘は一人で練習というのがまだ上手く出来ない。
だから付き合っている。
それと少しでも進めてあげたいという気持ちもある。
娘はピアノが本当に好きなのかどうかはよく解らないが、「ピアノをやめたら後悔するような気がする」と言いながら続けている。
先日受けたコンクールでは、全力を出し切ったにもかかわらず、何も賞は貰えなかった。
この世界に厳しさを痛感する。
でも娘はピアノをやめるとは言わない。
むしろ、「来年もコンクール、受けたい。」
と言っている。
私のせいで、大変な世界に足を踏み入れさせてしまったのでは・・・と思う事もある。
でも、今は娘のピアノが何よりもの生き甲斐。
生き甲斐を与えてくれている娘に感謝している。

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