∞


ヴィーン
曇ったビープ音のような機械音で私は夢の世界から連れ戻された
頭がぼーっとする・・・ぐるりと視線を巡らせてみる
えぇと・・・ここはどこだ?
昨日、相当酔って帰ったのかもしれない・・スーツのままだ
「目が覚めたかね?」
声のしたほうを見ると立っていたのは中年の男・・50ぐらいだろうか 
えぇと・・・この人は・・・
「かなり酔っていたんでラボで休ませたのだが覚えていないのか?」
・・・あぁ、そうだった
「ご迷惑をおかけしたようで・・・」
「たまには酒もいいがほどほどにしたまえよ」
と、中年の男(あぁ、思い出した 私の上司のNではないか・・全く、上司の顔を忘れるとはハメをはずしすぎたな)
「今日はこのまま仕事についてもらっていいのかね?」
家に帰るのもめんどうだし、どうせ独り身だ
「あ・・・はい、例のプロジェクトも最終段階ですし」
「じゃあ私は上への報告書をかくからここは君に任せる」

私の勤めているここは  SS自律型∞研究所
SSは創始者のイニシャルだがいまどきこんな安直なネーミングが他にもあるのだろうか
自律型∞『インフィニティ』とはうちが作っている(正確にはつくろうとしている、か)自律型ロボットのコードネームだ

そぅ、私はこの業界の先端をひた走る会社のプロジェクトの一員なのだ
そして、このプロジェクトがうまくいけばロボット産業は大幅な進化をとげることになるであろう
∞ 無限・・・すなわちロボットによるロボット改良
人間の能力には限界があるだろう・・だが、ロボットは進化し続ける、ならばロボットに次のロボットを作ってもらおうという考えがこの記号に含まれている そして、∞の親元を作り上げるのが私がかかわっているプロジェクトなのだ

目も酔いも醒めたところで研究にはいることにする
・・・なぜだろうか、今まで亀よりも遅い歩みだった研究が嘘だったかのようにうまく走る 順調に・・・順調に

一週間後、ついにそのときがきた
「・・・できた・・∞が・・」
すぐNに報告する
「・・おぉ、素晴らしいこれがわが社が・・いや、全世界が待ち望んでいた∞の姿!」
「はぃ!ありがとうございます 今までの苦労が報われます」
私はいまだかつてないほどの興奮をおぼえていた
「君、大丈夫かね?興奮するのはもっともだが、顔が赤いよ」
「すいません、今までにないぐらい興奮してしまいまして。ちょっと顔を洗ってきます」
「そうしたまえ、今の形相はちょっと怖いよ」
Nが微笑しながらこたえる

「やった・・・俺はついにやったんだ」
トイレの洗面台で顔をバシャバシャ洗いながらも冷めやらぬ興奮
だが、顔をあげて目の前の鏡をみたその瞬間私のまわりの時が止まった・・蛇口から流れ出る水も、顎から滴る雫も私のまわりの空気さえ・・・
雫の時が再び動き出したとき私はラボに向けて駆け出していた
「まさか・・・そんなバカな・・」
ラボに戻った私は脇目もふらず それ がある場所へいく

『試作型∞』
私はこれをもとに∞をつくりあげた・・・
そしてその胸部の上についているパーツ・・・その顔は私の━━
その瞬間私のまわりの時がまたしても止まった
いや、違う・・止まったのは 私の時 だけだった

「どうやら気づいてしまったようだな、だが君はよくやった」
と、Nの声
「ロボットはとかく難しく頭のよいものだな・・・自分より高性能のロボットを創り上げてしまうとはね。だが、頭が良すぎる故に恐れる事態もある・・ロボットが人間を征服しロボットだけの世界をつくること。それを防ぐため、これはやむをえない処置なのだよ」
深く呼吸したNの肩が上下にゆれる
「さて、私は君の創り上げた∞を使って次の∞を創れなければならない。ロボットはまだまだ進化する、人間の想像も限界を超えてもなお・・・私は息絶えるまでその進化を見ていたいのだよ・・今人間の寿命は恐ろしく長い、その夢も楽に叶うのかもしれないな」

Nが倒れている私、いや試作型∞をちらりとみた

「もちろん、それは私が君と同じ立場でなければの話だがね・・・」
踵をかえすとNは∞と共にラボを去っていった

取り残されたのは過去の栄光・・・


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気軽に読んでいただけたら幸いです^^;
暇なときに思い立ったものなので次があるかどうかすらわかりませんがw


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