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横溝正史『金田一耕助の新冒険』~光文社文庫、2002年~ 金田一耕助シリーズの長中編の原型作品を集めた作品集の第二弾。 前回紹介した『金田一耕助の帰還』同様、すでに角川文庫版の内容は紹介していますので(大幅な改稿はありますが)、本書収録作品の内容については、角川文庫版の紹介記事へのリンクをはっておきます。―――「悪魔の降誕祭」→『悪魔の降誕祭』所収「悪魔の降誕祭」「死神の矢」→『死神の矢』所収「死神の矢」「霧の別荘」→『悪魔の降誕祭』所収「霧の山荘」「百唇譜」→『悪魔の百唇譜』「青蜥蜴」→『夜の黒豹』「魔女の暦」→『魔女の暦』所収「魔女の暦」「ハートのクイン」→『スペードの女王』作品解説(浜田知明)金田一耕助登場作品リスト解説(日下三蔵)――― 浜田氏の明解な作品解説により、たとえば「百唇譜」は原型版と長編版では犯人も異なっていて全く別のストーリーになっていることが指摘されていたり、「ハートのクイン」はハートからスペードに代わっていたりと、改稿の様子がうかがえます。 本書では、少年ものを除く金田一さん登場作品が、執筆順に(本書と『金田一耕助の帰還』所収の原型版も含めて)整理されていて、とても便利です。 日下氏による解説では、原型版短編集出版の背景も語られていて、こちらも興味深く読みました。 あらためて、金田一耕助シリーズの面白さを再確認できる作品集です。(2023.03.12読了)・や・ら・わ行の作家一覧へ
2023.07.29
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横溝正史『金田一耕助の帰還』~光文社文庫、2002年~ 横溝さんは同じ作品の改稿をよくしていましたが、本書は、角川文庫などで読める最終版の原型となった作品を集めた短編集です。 すでに角川文庫版で紹介しているので、収録作品を掲げ、角川文庫版の記事にリンクしておきます。―――「毒の矢」→『毒の矢』所収「毒の矢」「トランプ台上の首」→『幽霊座』所収「トランプ台上の首」「貸しボート十三号」→『貸しボート十三号』所収「貸しボート十三号」「支那扇の女」→『支那扇の女』所収「支那扇の女」「壺の中の女」→『壺中美人』所収「壺中美人」「渦の中の女」→『白と黒』「扉の中の女」→『扉の影の女』所収「扉の影の女」「迷路荘の怪人」→『迷路荘の惨劇』金田一耕助誕生記作品解説(浜田知明)―――「壺の中の女」と「壺中美人」では、金田一さんが真相を見抜く理由が違ったり、『白と黒』『迷路荘の惨劇』のような長編の元となった短編が収録されていたりと、どの短編も興味深く読みました。 横溝さんによる「金田一耕助誕生記」は、金田一京介先生にまつわる思い出や、金田一さんの人物像のモデルについての記述があり、こちらも面白かったです。 浜田氏による作品解説も、それぞれの作品の初出と後の改稿作品の基本的情報を示してくれるだけでなく、それらの違いや肉付けについても触れられていて、たいへん参考になります。 親切なつくりの作品集です。(2023.03.04)・や・ら・わ行の作家一覧へ
2023.07.22
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池上俊一『少女は、なぜフランスを救えたのか―ジャンヌ・ダルクのオルレアン解放―』~NHK出版、2023年~ NHK出版から刊行が始まった新しいシリーズ「世界史のリテラシー」の幕開けとして刊行された1冊である本書は、西洋中世史家・池上俊一先生による、ジャンヌ・ダルクの評価・意義を解説する1冊です。「です・ます体」で文献注もなく(本文欄外に専門用語の説明はあります)、また全体で160頁弱と、とても読みやすいつくりとなっています。 本書の構成は次のとおりです。―――はじめにジャンヌ・ダルク略年譜第1章 事件の全容―ジャンヌ・ダルクはいかにしてオルレアンを解放したか?第2章 歴史的・宗教的背景―なぜ「辺境の乙女」にカリスマが与えられたのか?第3章 同時代へのインパクト―ジャンヌの奇跡は時の権力者たちに言い知れぬ「動揺」を与えた第4章 後世に与えた影響―政治、宗教、文学、芸術。フランス国民の記憶に深く刻み込まれた理由おわりに参考文献――― 各章のタイトルが、短い見出しとやや長い副題となっていますが、本論の小見出しも同様のつくりになっていて、見出しだけ辿っても内容のイメージがわきやすいです。 なので、この記事ではごく簡単にメモ。 第1章はオルレアン解放・シャルル7世戴冠までの百年戦争の流れをたどります。 第2章は、あらためてジャンヌの生い立ちを確認したうえで、本書の主題である、なぜ、普通の農家の少女に、不利にあったフランスをイギリスに対する勝利に導くことができたのか、を考察します。本書の中でもっとも興味深い章でした。 第3章は、シャルル7世戴冠後、ジャンヌの助言を聞かなくなり、彼女が裁判にかけられ処刑されるまでの流れと、その後の「復権裁判」についてみていきます。 第4章は、表題通り、叙事詩、舞台などで描かれたジャンヌや、1920年の列聖など、後世への影響をたどります。 本書は、あえていえば百年戦争を勝利に導いたジャンヌに関する「事件史」ですが、池上先生による方法論による著作『歴史学の作法』(東京大学出版会、2022年)で強調される文化史・社会史の視座も大切にされています。単にジャンヌ個人の資質を強調するのではなく、同時代の女性の役割、騎士道文化などをたどりながら、彼女がカリスマ性を得た理由を考察する第2章に、それは顕著だと感じましたし、また事件史もここまで面白く叙述できるという好例だと思います。 面白い1冊でした。(2023.07.06読了)・西洋史関連(邦語文献)一覧へ
2023.07.15
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桜井万里子『歴史学の始まり―ヘロドトスとトゥキュディデス―』~講談社学術文庫、2023年~ 桜井先生は東京大学名誉教授。古代ギリシア史がご専門です。 本書は、2006年に山川出版社から刊行された著作の講談社学術文庫からの文庫化で、あらたに補足や文庫版あとがきが追記されています。 本書の構成は次のとおりです。―――1 二人の歴史家と二つの戦争 2 ヘロドトスは嘘つきか? 3 新しいヘロドトス像4 ヘロドトスの描いた史実5 トゥキュディデスの「ヘロドトス批判」6 トゥキュディデスが書かなかったこと7 歴史叙述から歴史学へあとがき学術文庫版のための補足―二人の歴史家とアテナイ民主政学術文庫版のあとがき参考文献図版出典一覧――― キケロが「歴史の父」と呼んだヘロドトスの『歴史』はペルシア戦争を題材とし、トゥキュディデス『歴史』はペロポネソス戦争を題材とします。そこで第1章は、本書が取り上げる2人の人物と2つの戦争の概略、そして2つの著作の執筆意図(執筆の姿勢)を指摘します。 第2章は、神話や伝承からとられた荒唐無稽なエピソードを記すヘロドトスについて、「嘘つき」との評価もあるなか、その執筆姿勢を丹念に見ていき、「自身ではとても真実とは信じられないことさえも、記録するという方針を彼は貫いた」(37頁)と評価するなど、近年のヘロドトスに対する見直しを踏まえながら分析します。 第3章は、より具体的に、ヘロドトスの著作から、「相異なる社会あるいは共同体の出身である二社のあいだで儀礼をへて結ばれた連帯の絆であって、具体的には、財と奉仕の互酬としてあらわれる」(63頁)クセニアという慣行の分析に、ヘロドトスの記述が貢献していることなど、現代歴史学におけるその有意義さを強調します。 第4章は、ヘロドトス『歴史』ではふれられていない碑文史料などとヘロドトスの記述との比較検討を通じて、ヘロドトスの態度などを明らかにしており、興味深いです。 第5章からはトゥキュディデスの分析に移ります。まず、第1章でも引用されているように、「他の人から情報を得た場合も、事柄の一つ一つについてできるだけ正確に検討を加えて記述することを重視した……私の叙述には神話伝承が含まれていないため、耳にした際におもしろくないと思われるかもしれない」(30頁)という記述や、一度もヘロドトスの名を挙げていないことから、彼はヘロドトスに批判的だったと評されてきました。桜井先生自身もそうした見解を提示したことがあるそうです。しかし、たとえば名前を挙げないのは、神の名を直接言わない慣行との類似性が指摘されるなど、近年ではそうした評価に異論も出され、本書では桜井先生も、むしろトゥキュディデスはヘロドトスに敬意をいだきつつ、批判的に継承したとの評価を提示しています(98頁)。 第6章は、細かい紹介は省略しますが、トゥキュディデスが詳細を書かなかった、ある密告制度の詳細を分析し、当時の社会の人々に割り当てられていた役割を浮き彫りにするという、非常に興味深い記述です。 第7章は、トゥキュディデスの後継者たちの歴史叙述の概観や、トゥキュディデスらの史料批判への態度などを論じる、まとめの章となっています。 参考文献まで含め、170頁強という短い著作ということもあり、また叙述も平易で、2つの戦争についての細かい予備知識がなくても興味深く読み進められます。 最近続けて読んでいる方法論・史学史関係の観点から、山川出版社版の単著が出た頃から気になっていながら、ずっと手に取れていませんでした。この度文庫版で購入し、また読むことができて良かったです。これは面白かったです。(2023.06.16読了)・西洋史関連(邦語文献)一覧へ
2023.07.08
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横溝正史『花園の悪魔』~角川文庫、1976年~ 金田一耕助シリーズの短編4作が収録された短編集。 1996年改版に伴い『首』と改題されていて、『首』についてはすでに記事を書いていますので、内容紹介はその記事から再録。―――「花園の悪魔」昭和2X年4月。Sという温泉場の花園の中で、全裸の女性の死体が発見された。被害者であるヌードモデルのアケミは、旅館の人々に顔を隠した人物と、旅館の離れで会っていた。しかし、最重要参考人であるその人物―アケミと親しい欣之助と思われた―の行方は、つかめなかった。「蝋美人」最愛の娘を亡くしてから、悪い評判もたちはじめた医学博士の畔柳氏が、腐乱した自殺死体の骨に肉付けをして、生前の姿を再現しようと計画した。再現された「蝋美人」は、防犯展覧会に出品されたが、これが物議を醸した。それが、夫を殺して失踪したと考えられていた、妖花マリとそっくりだったからである。その頃、金田一耕助のもとに仕事の依頼があった。マリによる夫殺し(と思われていた)の事件を見直してほしいというのだった。「生ける死仮面」昭和2X年8月。奇人として知られる古川小六のアトリエからの異臭に気付いた警官がアトリエをのぞくと、古川が、死後そうとうの時間のたった美少年の隣におり、デスマスクに化粧しようとしていた…。男色家で知られる古川のこととて、昭和の「青頭巾」事件ともいわれた事件であるが、少年は、殺害されたわけではなかった。単純な事件と思われたが、金田一耕助は、複雑な背景があるのではないかと考える。「首」300年前、名主が殺害され、その首がちょこなんと置かれた岩は獄門岩、その身体が流れ着いた場所は首なしの淵と呼び習わすようになった。岡山県の小村に休養にきていた金田一耕助は、なじみの磯川警部からそんな話を聞いた。ところが、昨年も、猟に出ていた旅館の主人が殺害され、その首が獄門岩に置かれ、体は首なしの淵から発見されたという。磯川警部は、その事件を解決しておらず、忸怩たる思いを抱いていたが、さらに、警部と金田一耕助が旅館に滞在している間に事件が起こった。映画撮影にきていた一行がいたが、映画監督が殺されたのだった。一年前と全く同じ状況で…。―――『首』の記事をアップしたのが2007年9月8日ですから、15年ぶりくらいの再読。 何度読んでも「首」は面白いです。なんのために首を切ったのか、という大きな謎に加えて、ラストにみせる金田一さんと磯川警部の優しさも味わい深いです。 今回読んだなかでは、「生ける死仮面」も印象的でした。猟奇的な事件の裏に隠された真相を探り当てていく金田一さんの推理が素敵です。 中島河太郎さんによる解説も、作品の初出媒体・年代と、簡明な概要が示されて、いつもとても参考になります。(2023.02.22読了)・や・ら・わ行の作家一覧へ
2023.07.01
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