マーク・トウェイン(大久保康雄訳)『トム・ソーヤーの冒険』
~新潮文庫、 1987
年 53
刷改版~
Mark Twain, The Adventures of Tom Sawyer
, 1876
マーク・トウェイン(本名サミュエル・ラングホーン・クレメンズ
Samuel Langhorne Clemens
)による、あまりにも有名な物語ですが、ちゃんと読んだのは今回が初めてです。
伯母さんに叱られながらも、何度もいたずらをしたり、友達からはうまい取引をして聖書暗唱のカードをどんどん集めては、暗唱がうまくいかないのがバレてしまったり。近所に引っ越してきた少女、ベッキーへの恋や、学校では付き合わないよう言われているハックルベリー・フィンとの友情など、トムを取り巻く日常が描かれます。
ハックとジョーと3人で海賊になり、無人島で暮らしたり、墓地での冒険である殺人事件の目撃者になったり、山賊になって宝探しをしたり…と、いくつか大きなイベント(?)もあり、ずっと楽しく読み進められます。
訳文も楽しく、読みやすいです。たとえば、学校を仮病で休もうと思い立ったとき。「病気になれば学校へ行かないで家にいることができる。……彼は体をしらべてみた。どこにも異常はなかった。トムは、もう一度しらべてみた。今後は腹痛を起こしそうな徴候を感じたので、大いに期待して待ってみたが、まもなくその徴候は薄らぎ、やがて完全に消えてしまった」 (58
頁 )
。なんとなくだるい朝のあの気持ちが楽しく描かれています。
世間風刺のような言い回しも好みでした。「伝統的な習慣というものは、それを正当化する理由が薄弱であれば薄弱なほど、それだけ深く根をおろすものだ」 (53
頁 )
。いろんな組織やなんかの謎習慣を思い浮かべます。また、「気まぐれで不合理な世間は、手のひらを返すように……前にいじめたと同じくらいいたわった」 (220
頁 )
も、うわさに振り回される人々の姿をそのまま描いている分、下手な批判よりもずっと心に刺さるように感じました。
これは面白かったです。良い読書体験でした。
(2024.11.17 読了 )
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