アンソニー・ホロヴィッツ(山田蘭訳)『ナイフをひねれば』
~創元推理文庫、 2023
年~
Anthony Horowitz, The Twist of a Knife
, London, 2022
元刑事で警察顧問のダニエル・ホーソーンと、その活躍を記録することとなった作家のアンソニー・ホロヴィッツが活躍する、ホーソーン&ホロヴィッツシリーズ第4弾。
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ホロヴィッツが脚本を手掛けた舞台『マインドゲーム』のロンドン公演の初日。
巡業公演ではそれなりの成功を収めていたが、その夜、打ち上げ会場に、辛辣な劇評を書くことで悪名高い劇評家―ハリエットが現れ、空気が一変する。ハリエットは出演者たちに声を掛けながら、わずかな時間でその場を後にしたが、出演者たちの空気は悪くなったまま。出演者を含む数名で、舞台で飲み直しているとき、女優が、ハリエットの劇評が出ていることを告げる。それは、脚本、演出はもちろん、それぞれの出演者の演技に対しても、きわめて痛烈な批判を浴びせる内容だった。
翌日。遅くに目を覚ましたホロヴィッツのもとに、警察が訪れる。ハリエットが殺された、凶器はホロヴィッツの指紋が付着したナイフだという。
逮捕、留置されたホロヴィッツは、ホーソーンに状況を伝えるが…。
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今回も面白かったです。
前作 『殺しへのライン』
は、比較的、作中ホロヴィッツ自身は無事でしたが、今作はなんと逮捕・留置という、今までと毛色の違うひどい体験をされることになります。
今回は、とにかく被害者のひどさが際立ちます。関係者のいやがるような表現ばかりを使った、とにかく批判的な劇評…。物語を離れて、現実にもこういう人はいますが、どういう人に向けてなんのためにそこまで言ったり書いたりするのかと、悲しくなりますね。
一般論として、どうしても、動機について説明する関係もあって、犯人が事件を起こすに至った背景というのは語られがちですが、今作ほどひどい被害者だと、なぜハリエットがあんな書き方をする人になってしまったのか気になってしまいました。
(2024.01.27 読了 )
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