ロベール・ドロール/フランソワ・ワルテール(桃木暁子/門脇仁訳)『環境の歴史―ヨーロッパ、原初から現代まで―』
~みすず書房、 2007
年~
(
Robert Delort et François Walter, Histoire de l’environment européen, Paris, 2001
中世史家にして理学士でもあるドロールと、近現代史家のワルテールによる共著。
・ ロベール・ドロール (
長谷川明/池田啓監修 )
『象の物語―神話から現代まで―』創元社、 1993
年
・ ロベール・ドロール (
桃木暁子訳 )
『動物の歴史』みすず書房、 1998
年
さて、本書はページ数こそ 300
頁強ほどですが、2段組みなので、なかなか重厚です。
本書の構成は次のとおりです。
―――
まえがき(ジャック・ル=ゴフ)
序
第1部 環境史の歴史
第1章 16
世紀以前の環境に対する感受性
第2章 近現代における自然界の服従
第3章 アルカディア人の隠れ家からイデオロギーとしての環境へ
第4章 最近の展望の変化
第2部 時間の中の空間―変動と変動性
第5章 自然要因の変動
第6章 生物学的要因の変動
第7章 人間の生物学的要因の変動性
第3部 環境の人間化
第8章 近代以前のヨーロッパの環境におよぼされる人間の行為
第9章 農業・技術・産業・エネルギー「革命」( 18
- 20
世紀)
第 10
章 攪乱された環境
結論 脅かされた地球
原注
訳者あとがき
参考文献
索引
―――
ジャック・ル・ゴフによるまえがきは、著者2人の業績紹介と環境史に関する概観、そして本書の要点を手際よくまとめています。
序は、本論の前提として、環境や自然などの定義を示したのち、ヨーロッパの基本的な環境の概観を提示します。
第1部は、人間が環境をどう捉えていたか、という観点から通史的にたどります。中世を扱う第1章では、たとえば妖精・小人などに関する論述や、キリスト教的な見方に関する議論などを興味深く読みました。
第2部は、環境そのものの変動を論じていて、本書の中で最も興味深く読みました。
第5章は、章題のとおり「自然要因」として、太陽活動や気候、土壌などの変動をみます。
第6章は、生物についてで、植物から始まり、「動物」の節で紹介されるオオカミやネズミは冒頭のドロールの著作として挙げた『動物の歴史』の要点を紹介するようなかたちです。その他、微生物、流行病などが取り上げられます。
第7章は生物学的な観点から人間を取り上げ、遺伝、人口統計などをみていきます。
第3部は人間が環境に及ぼす影響を論じます。第1部と同じく、中世に関する議論を含む第8章のみメモしておきますが、中世の農業革命や都市の生成などが扱われます。
冒頭に書いたように 300
頁程度とはいえ二段組でかなり重厚なことに加え、やや訳文が読みづらいところもあり、一部流し読みになってしまい、それに加えて読了からメモまでに時間がかかったため簡単な記事となりました。とはいえ、購入からなかなか読めずにいて気がかりだったので、このたび通読できて良かったです。
(2025.01.29 読了 )
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