ボーモン夫人(鈴木豊訳)『美女と野獣』
~角川文庫、 1995
年改版~
Madame de Leprince de Beaumont, Le Magasin des Enfants
, Paris, 1757
)
ボーモン夫人(ジャンヌ=マリ・ルプランス・ド・ボーモン)は 1711
年ルーアンに生まれ。ボーモン某という男性と結婚するも相手が性格破綻者で、 1745
年に離婚、その後筆を執るようになります。再婚後、イギリスに渡り、子供たちの教育事業に打ち込んだり、様々な作品を発表したりします。 1780
年に亡くなります(解説、 256-258
頁参照)。
本書は彼女の代表作『子供の雑誌』 (
Magasin des Enfants
, 1757
)
の翻訳ですが、全訳ではなく、物語部分の訳出とのこと。というのも、『子供の雑誌』は単純な「童話集」ではなく、女教師と子供たちの対話があり、それに関連する物語が導入される、という構造になっていますが、本書の意図は、「作家としてのボーモン夫人の作品を紹介する」ことで、「教育家ボーモン夫人を語るための本では」ないため、物語部分のみを訳出したと訳者は述べています( 265-273
頁参照)。
と、前置きが長くなりましたが、本書には 15
の物語が収録されています。
全てを紹介すると煩雑になるので、印象的だった作品のみメモしておきます。
心優しい商人の末娘が野獣の住む館に送られることになるというあまりにも有名な表題作のほか、同様にいじわるなきょうだいと心優しいきょうだい、あるいは甘やかされて育って破滅する登場人物と若い頃に不遇な目にあって成長してから成功する人物の対比とそれぞれの行く末を描く物語がいくつもあります。
特に印象的だったのは「どれいの島」という物語。主人である令嬢エリーズと女どれい―ミラが船で出かけると嵐にあって漂流し、たどりついた島は、本国でどれいだった人たちが主権をにぎる「どれいの島」でした。そこでは、まず一週間、どれいが、主人に対して、今まで主人がしてきたようにふるまわなければなりません。エリーズはその一週間で、自分が今までしてきたことを反省することになります。一方ミラは、それでもエリーズに忠実で…というお話です。
その他、講談社文庫のペロー昔話集には「おろかな願い」と題されて収録されているのと同様の、3つまでなんでも願いごとをかなえてもらえることになった夫婦を描く「三つの願い」など、どれも興味深く読みました。
(2025.06.21 読了 )
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