魯迅(増田渉訳)『阿Q正伝』
~角川文庫、 1961
年~
魯迅( 1881-1936
9編が収録されています。
まわりの人間が自分を食べようとしているという猜疑心にさいなまれる 「狂人日記」
。
気取った文章語を話し飲み屋の人たちに笑われ、さらに試験にも落ち貧しくなっていく男を描く 「孔乙己」
。
人力車に(わざと?)ひかれた老婆と彼女への車夫の対応を描く 「小さな事件」
。
異郷の地に引っ越すため、久々に故郷を訪れる。そこで、昔馴染みのルントウとの再会を果たすも、出生した主人公とは微妙な距離感が生まれてしまって…。( 「故郷」
)
表題作 「阿Q正伝」
は、辛亥革命前後を題材とする物語。主人公の阿Qは、人々に馬鹿にされながらも、心の中では自分自身が優れていると言い聞かせている人物です。なじみの客からの日雇いも得られなくなった阿Qは、城下に行くのですが…。
ロシアの盲詩人エロシェンコ君との思い出を描く 「家鴨の喜劇」
。
人々から変わり者と思われていた孤高の人、ウェイリェンシューと主人公は、彼の祖母の葬儀で出会います。伝統と異なる態度をとるウェイに、いつか惹かれ、彼を訪れるようになる主人公ですが、やがてそれぞれの環境の変化で没交渉になっていきます。その後、ウェイは意外な形で成功を収めるのですが…( 「孤独者」
)
魯迅が仙台の医学専門学校(現東北大学医学部)で教わった先生との思い出を描く 「藤野先生」
。
あまりに優れた刀を作ったがために、王に奉納するやその刀で殺された刀鍛冶の息子が、王に復讐を果たそうとする、昔話に題材をとった 「眉間尺」
。
作家としてのデビュー作「狂人日記」、表題作「阿Q正伝」はもちろんですが、「故郷」と「孤独者」、「藤野先生」など、多くの作品が印象的でした。
「眉間尺」はなかなか凄惨な情景が描かれますが、こちらも面白かったです。 16
歳になり、母から父の死の真相を聞かされ復讐に旅たつあたり、なんとなくドラクエ3を連想してしまいました(冒頭のねずみをめぐるシーンも主人公の成熟へのステップとして印象的です)。
(2025.07.26 読了 )
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