鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
037880
HOME
|
DIARY
|
PROFILE
【フォローする】
【ログイン】
小説ばらえてぃ。
キミとの約束(1)
2037年、5月16日。私たちが、ここへ来てから三日が経った。相変わらず、私たち8人の他に人は見つからない。どうして、こんなことになったんだろう。私たちは何故、未来へ来たのだろう・・・
2006年、5月13日。東京。
「志乃、どうした?」
浜岡愁悟が隣で自転車を引きながら歩く志乃の顔を心配そうに覗き込んで言った。
「え?なんでもないよ」
茜色の夕日が所狭しと並ぶビルに反射して、辺りはすっかり夕暮れに包まれている。春の暖かさが、心地よい風を運んできた。そして、紺色に染まりかけた空には遠くに微かに月の影を忍ばせているのだ。
志乃は慌てて考えてたことを打ち消し、愁悟に笑いかけた。愁悟が溜息混じりに聞く。
「お前、今のおれの話聞いてた?」
志乃はギクリとした。愁悟の話を全くと言っていいほど聞いていなかったからだ。
「・・・聞いてたよ。一昨日の期末テストの話でしょう?」
かろうじて耳に入って来た『テスト』という単語から推測して志乃は言ってみた。いや、でたらめに近かったかもしれない。
「やっぱり聞いてない。おれはサッカー部のテストの話をしたんだ」
やってしまった。彼女失格だ・・・。と、志乃は気まずそうに下を向いた。そんな志乃をからかうように、愁悟は笑う。
「怒ってないよ、志乃。今日のテストでおれ、今度の大会のレギュラーに選ばれたんだ」
嬉しそうに志乃に聞かせてやる。志乃も一緒になって喜んだ。
「本当に?すごいね!大会、絶対応援行くね。だから頑張れ、愁悟」
と、肩を叩いて言った。少し、強めに力を入れて。
「ありがとう。絶対、見に来いよ。それじゃ、また明日」
「また明日ね」
愁悟と志乃は交差点の信号で別れた。愁悟が信号を渡るのをなんとなく見送り、自分も反対側の信号を渡ろうとした。その時、誰かに肩を掴まれた。
「?!」
振り返る。そこには、自分と似た顔があった。笑っているその顔は、あまりに自分と似すぎて嫌になるほどだ。
「やっぱり。志乃だと思った」
「なによ、わざわざ引き止めて。蒼介」
蒼介。志乃の双子の弟で、志乃とは別の高校へ通っている。いつもは、こんな場所で会うことは無いのだが。
「なんで、あんたがここにいるのよ。サッカー部の練習は?」
「今日は、顧問が出張だから無くなったんですぅー」
二人の周りは、さながら人の波だった。東京の真ん中の大きな交差点を利用する人間は半端なく多い。まして、信号の変わる瞬間は、あちら側へ続く黒白のラインに無数の足がどっと溢れ出す。
志乃と蒼介も、その流れに乗って交差点を渡ろうとした。まだ、口喧嘩のようなこぜりあいをしている。スラっとしていて、肩まで伸びている長い髪が、美しいブラウンに染められているすっきり美人の志乃、志乃より少しだけ背が高く、爽やかな感じ、それでいて少し子供っぽさの残る蒼介。傍から見れば、お似合いのカップルである。ただ、カップルにしては似すぎているところに違和感を覚えるだろうが。
「だいたい、志乃は・・・」
「ねえ」
志乃が蒼介の言葉を遮った。志乃はさっき、愁悟といた時に考えてたことをふと、思い出した。
「なんだよ?」
「私ね、さっき考えてたの。朝から妙に、変な感じがしてて。こう、なんて言うのかな。はっきりしない感じ。何かが起こる気がするの。・・・どう言えばいいかわからないけど」
志乃は首を傾げながら下を向いた。彼女なりに感じたものを、蒼介に話そうとするのだが、なかなか伝わらないようだ。
「おれもだ」
交差点の丁度、真ん中。蒼介は立ち止まって志乃の顔を見た。志乃も、蒼介につられて立ち止まる。
「え?」
「おれも同じ感じがしてた。だから志乃の言うことは・・・」
その時だった。あの大地震が起こったのは。ものすごい轟音とともに揺れだしたコンクリートの地面。後から走ってきた車が次々に、止まっていた車に突っ込んでいく。人間たちは立つこともままならず、その場に倒れこんだり、座り込んだりしている。いたるところから、悲鳴や叫び声が上がり、数分前の世界が一変した。地獄絵図とは、このことを言うのだろうか。
志乃が座り込んでいる場所に割れたコンクリートのせいで、電柱が倒れ込んでくる。
「志乃っ」
「!!!」
冷たい風が頬を通り過ぎ、蒼介はゆっくりと目を覚ました。隣を見ると志乃も横たわって気絶している。
とりあえず体を起こし、状況を把握しようと辺りを見回す。すると、驚くべき光景が広がっていた。
「…一体…なんでこんなことにっ…」
倒壊したビル。砂埃をかぶったボロボロの地面。あまりにも悲惨だった。思わず目が潤む。
…でも、何かがおかしい。
あんなにいた人々が、今はいない。さっき倒れてきた電柱もない。ビルだって、いくら大地震だからってこんなに倒壊するわけがない。
混乱してきた。でもここには、ボロボロだがいつもの見慣れた看板がある。つまりさっきと同じ場所にいることは明らかだ。
「なんなんだ…ここは、どこなんだよ…」
もう一度辺りを見回すと、さっきはいなかったはずの、男女数名が同じく地面に横たわっていた。
その中で蒼介は見覚えのある二人を見つけ、駆け寄った。
「コウ、キョウっ!!」
二人の体を激しくゆさぶる。すると彼らもゆっくりと目を覚ました。
「…んん、ねむっ…あ、そー君だっ」
「…なんかすげぇ体が重てぇ…」
「おい、コウ、キョウ、お前らもここに来ちゃったのか!?」
「え?俺らは合コン行く途中だったんだけど…」
「・・・・・」
さすがは無類の女好き。彼ら、常盤皇・卿は蒼介と同じ学校に通っていて、ルックス・成績・運動神経がずばぬけて良いことで有名な双子である。と言っても彼らは二卵生なので顔は全くと言っていいほど似ていないが、性格はうりふたつだ。そして非常に女好きだが、蒼介とは双子仲間(?)なので仲がよい。
「それより、そー君、ここはどこなの?」
「うーん…さっきと同じ所だけど違う所、かな?」
「「何それ」」
「う…お、おれだってわかんないの!…って、ぶはぁっ!!」
蒼介の顔に勢いよくどこかから飛んできた紙がはりついた。驚き、慌てて紙を顔からはがす。
「なんだよこれっ、びびったぁー」
「…ん?これ新聞っぽくね?」
「え?新聞かよー、どれどれ、日付は…」
コウ、キョウは起き上がって、日付を確認する。すると、
「・・・・・」
コウは黙り込んだ。キョウも絶句している。
「なんだよー、ふたりともっ」
蒼介はコウから新聞を奪い取って、日付を見る。そこに書いてあったのは、
「・・・2037年、5月13日・・・?」
「まさか・・・嘘だろ」
蒼介は新聞を持ったまま、もう一度辺りを見渡した。さっきと同じ場所にいるはずなのに、見える景色はさっきと全然違う。
まるで、違う世界に来てしまったみたいだ。
「ねぇ、もしかしてこれって・・・タイムスリップってやつ?」
隣にいるキョウが小さな声で言った。その瞬間、二人の表情が一気に青ざめた。
「バカ。そんなの、漫画とか映画の世界だけだろ。現実に起こるなんて、絶対ありえねぇよ」
そうは言ったものの、コウの表情は相変わらず青ざめたまま。
「・・・とにかく、誰か他の人に聞こう。おれ達だけじゃ、何も分からないし」
そう言って、蒼介は気絶している志乃のもとへ歩み寄った。そして、ゆっくりと志乃の体を揺さぶる。
「おい、志乃。起きろよ」
「・・・んー」
「起きろって」
さっきよりも強く揺さぶってみると、志乃はすぐに目を覚ました。
「・・・蒼介。私たち、生きてたんだね」
「・・・うん」
志乃は安心したように微笑むと、ゆっくりと立ち上がった。
だが、
「あれ・・・?」
見慣れない景色に、思わず固まった。
「ここって、どこ?」
蒼介は溜息を吐きながら、志乃の横に並ぶ。
「2037年」
「え?」
意味が分からない、という表情で志乃は蒼介を見つめる。
「おれにもよく分からない。けど、ここは2037年の世界なんだ」
「2037年って・・・31年後だよね?」
「うん」
「何でわたし達、31年後の世界にいるの?」
「おれにだって分からねぇよ」
「・・・私たち、タイムスリップしちゃったの?」
「多分・・・そう」
「嘘でしょ・・・」
志乃はそれっきり黙り込み、そして変わり果てた世界をただ呆然と眺めていた。
志乃たちのいる場所から少し離れた場所では、一組の男女があてもなく歩き回っていた。
「ねえ、たくちゃんっ。私たち、どこにいるの?どこ行くの?どうなっちゃうの?ねえってば」
この質問の嵐に、男は舌打ちをして答えた。
「うっせえな。少し黙ってろよ」
男の方は、金髪、右耳にはシルバーのピアスが2つ空いていて、ギターを背負っている。年齢は20そこそこだろうか。ふてくされている女の方も、20そこそこで、髪の毛を可愛く横で縛っている。
二人は本当にあてもなく歩き続ける。空は、灰色の厚い雲に覆われている。見る限り、元の形を保っている見物は一つも無かった。まるで、戦争でも起きたのかと思うほど、酷い。
その内、遠くの方にひび割れた横断歩道が見えてきた。かつて大きな交差点のあった場所。そこに、数人の男女を見つけた。
「きゃあ!たくちゃんっ、人がいたよ!私たちだけじゃなかったんだねっ」
「・・・ああ」
と言って男が走り出す。その後を追って女が笑顔で走り出した。そして、何人かいる中の一人に声をかけた。
「あのぉ・・・」
「え?」
振り返る。まだ、少年だった。顔は整っているが、少し子供っぽい。男は脱力した。
「なんだよ、ガキじゃんか」
少年はむっとして言った。
「あんただって、おれとそんな変わんないだろ」
「変わるよ。おれ、22だぜ?お前、中学生だろ」
「・・・高2だよ、こう見えて」
「えっ、マジ?お前、高校生なの?ガキくせえな」
横から、カールさせている髪を揺らして、女が口を挟んだ。
「高校生?!可愛い」
「出てくんなよ、お前は」
男は迷惑そうに言い放った。女は、少し落ち込んだ素振りを見せ、男の言う通り、それ以上口を出さなかった。
「あの」
今度は、少年の横に少女が立っている。少年と顔が似ていた。
「弟がすいません。あなたたちは・・・誰ですか?」
「おれら?…なんでお前らに名乗らなきゃ…」
「あのねー、このひとは霧島拓弥!で、私は上条あげは!蝶みたいに綺麗になってほしいから付けたんだって。それでね、たくちゃんはね、今バンドやってるんだっ♪私の自慢のカレシなんだよ♪そっちは?」
男-拓弥が一言言い切る前に、彼女(らしい)のあげはが口をはさんだ。
「そうですか。あ、ちなみに私は川塚志乃って言います。で、これが双子の弟の…」
「蒼介」
蒼介はさっきの事に腹を立てているらしく、彼らに背を向け愛想なく答えた。
「じゃあそこの男の子たちは?」
「おれら?常盤皇・卿だよ。…ってもしかして拓弥って、今注目されてる『ライン』のボーカルの人!?すげぇっ!そー君、見ろよ本物だぞ!」
「…おぉ、おれも結構有名になったのか!」
拓弥は少し機嫌が良くなった。だが、次の蒼介の「おれ興味ない」の一言で、振り出しに戻る。
…なんとか場を保とうと、志乃が口を開いた。
「それより、あなたたちは…『ここ』に来る前は何をしてましたか?」
「え、私たち?確かあの時ー、ライブハウスの前に立ってたよ?…てか、やっぱここ…さっきの場所とは違うんだね。ライブハウス、欠片すら見当たらないもん」
あげはと拓弥もどうやら異変に気づいていたようだ。だから志乃は一瞬躊躇ったが、二人に本当のことを伝えた。二人とも、顔から血の気がひいた。
「・・・・・嘘、だろ?」
「残念ながら、本当みたいです…私も信じられなかったけど、一応証拠があるんで・・・」
と言って、手に持っていた新聞を渡す。拓弥は目を通したあと、俯き静かに震え、新聞を強く握りしめる。あげはは、声を押し殺して泣いた。そんな二人が、志乃は見るに耐えなかった。
「う、嘘だ・・・こんなの夢だ夢だ夢だっ!!!」
「私たち・・・帰れないの・・・?そんなの嫌だよっ!」
「落ち着いて下さい!まだ希望はあるかもしれません。だからその前に、他の倒れている人を、助けましょう!」
そう言って志乃は、倒れている少女のそばまで駆け寄った。だが、志乃は少女を見て、驚いてしりもちをつく。
なぜならその少女の手首からは、血が流れていたからだ。
「どうした?」
志乃の様子に気付いた蒼介達が、慌てて志乃のもとへ駆け寄ってきた。
「血・・・」
「血?」
志乃から少しだけ視線をずらすと、手首から大量の血を流した少女が倒れているのが見えた。
「「何この人、死んでるのっ?」」
後から走ってきたキョウとコウが同時に言う。だけど、志乃と蒼介は顔を真っ青にさせ、二人の問いかけに答えられなかった。
「ちょっと、そこどいて」
そんな四人の様子を見ていたあげはが、倒れている少女の前まで走ってきた。
「息は?してるの?」
さっきとは全く違う真剣な目つきで志乃に尋ねる。
「わ、分かりません・・・」
志乃の返事を聞くと、あげははすぐに少女の口元に手を当てた。そしてしばらくすると、今度は血が流れていない方の手首に手を当てた。
「一応、生きてるみたい。でもこのままじゃ危険だから、どっかの病院で手当てしてもらわなきゃ」
あげはは自分のバックの中からピンク色のハンカチを取り出し、少女の手首に巻きつけた。鮮やかなピンクが、すぐに真っ赤に染まる。
「蒼介君、この子を病院まで運んで」
「え?」
「いいからっ、早く!」
あげはの真剣な顔に少し驚きながらも、蒼介はゆっくりと少女を抱き上げた。
「ここから一番近い病院って、どこ?」
「多分、新しく出来たでっかいマンションの裏にある病院だと・・・」
「でも、でっかいマンションって言ったって、そんなのどこにも見えないよ?」
「とにかく、そっちの方向に行ってみよう?もしかしたら、病院だけでも残ってるかもしれないから」
そう言うと、あげはは少し早歩きで歩き出した。慌てて他の四人もあげはに続く。
歩き出してから数分後、荒れ果てた土地にポツンと建つ、一軒の建物が見えた。今にも崩れてしまいそうなほどボロボロになっていたが、それは間違いなく病院。
「ここって・・・」
その建物を見た瞬間、あげはは歩くのをやめた。
「おい、あげは」
拓弥が不安そうな顔であげはに歩み寄る。
「ここって、私のパパの病院・・・」
「あげはさん」
少女の出血は止まらない。布が吸いきれなくなった血が、ボロボロの病院の床を濡らす。顔はさっきよりも一層青ざめている。
「ヤバイって」
蒼介が、かろうじて使えそうなベッドに少女を寝かせながら言った。あげはが、包帯と、いくつかの医療器具を持ってやって来る。
「あの、大丈夫なんですか?その医療器具って、古いんじゃ・・・」
志乃は心配そうにあげはを見た。あげはは治療をしながら質問に答えていく。
「大丈夫、ちゃんとアルコールで洗ったから。結構、大事なものは残ってたの。アルコールもそうだし。志乃ちゃん・・・だっけ?手伝ってくれるかな」
「はい」
それからあげはは、見事に、少女のザックリと切れた傷を縫い上げた。志乃も、あげはの指示通りに迅速に動いたおかげで、やっと落ち着くことができたのだ。少女が血の気を取り戻す。
志乃は、壁に寄りかかり、何かを考えていた。
「どうして、この子はこんなケガしてたんだろ」
少女は見るところ、中学生くらいだ。肌は雪のように真っ白で、むしろ、うっすらと青みを帯びているほどだ。背も、大して高い方ではないだろう。
割れたガラスが、所々嵌められた窓の外を見ていた拓弥が言う。
「自殺じゃねえの」
「え?」
「最近、多いじゃん。自殺するガキ。その子も、そうなんじゃない」
蒼介が睨みながら言う。
「そんな言い方するなよ」
「あ?」
「この子にだっていろいろあるんだろ。それを、そうやって言うのはよくないだろ」
「蒼介っ」
拓弥は舌打ちして、蒼介を一瞥した。
「ガキ」
「あ?!もう一回言ってみろよ」
蒼介が拓弥の胸元に掴みかかる。その時、少女の目がうっすらと開いた。
起きた?とあげはが男どもを跳ね除け確認するが、どうやら気のせいだったようだ。ため息をつき、いすに座る。気がつけば喧嘩は志乃の拳によって、強制終了していた。そして今は6人ともぼーっと、座り込んで考え事をしている。しかし、その沈黙は、何者かによって破られた。どこからかはわからないが、ボイスチェンジャーによって変えられた声が、部屋中に響いたのだ。
『ようこそ、神に護られし子供たちよ』
突然のアナウンスに7人は驚いた。どうやらこれは病院の放送室ではなく、別のところから流れているようだ。
『わたしは神です。わたしがあなたたちをここへ連れてきました。』
「はぁ!?…あんた何者よ!ふざけないで!しかも神を語ってうそつくなんて、性質悪いわ!」
『本物ですけど、何か』
「…仮にそうだったとしても…じゃあどうして私たちをこんな所へ連れてきたのよ!元の場所へ戻して!」
志乃が叫ぶ。すると、その声の主は開き直った。
『わたしはあなたたちを救ったんです。あのまま放っておいたらあなたはもちろん、他の方々も瓦礫の下敷きだったんですよ。だからそれをわたしは未来へスリップさせて救ったんです』
「でも、元の世界にいなきゃ、生きてても意味がないじゃない!」
志乃はどこにいるかもわからない相手に向かって吼えた。
『そう言うと思いました。だったら、わたしとゲームをしませんか?』
「…はぁ?」
6人は思わずキョトンとなった。でも声の主は話を続ける。
『内容は簡単です。わたしが呼び寄せた3人の殺し屋から120時間無休で逃げ切って下さい。反撃も可能です。武器も与えます。見事逃げ切った4人だけはもちろん元の世界へ返しますし、さらに願いごとを1つ叶えてあげましょう。街も、何事もなかったかのように元の状態へ直してあげます。…でも、やられた場合は、エンド。その人はもう、サヨナラです』
「なんでおれたちがそんなの参加しなきゃいけないんだ!ふざけるな!」
『いやならいいんですよ?強制ではありません。その代わり、そのうち餓死するでしょうけど』
「・・・・・くそがっ!」
拓弥はいすを思い切り蹴った。
『どうしますか?みなさん、参加しますか?』
6人は俯き黙りこむ。…そのうち、1人が口を開いた。
「たくちゃん、きっと…やるしかないんだよ…諦めて参加しようよ?」
「・・・・・ちっ」
「キョウ、やるか?」
「だって、そうしなきゃならないんだろ…そー君も、もう諦めよーよ」
「…帰るためなら…やるしかないよな」
あげは・拓弥・コウ・キョウ・蒼介は参加することを決意した。
だが、志乃だけは反対だった。
「おかしいよ!だって、帰るためになんで命賭けなきゃいけないの!?わたしは絶対参加なんかしないんだから!」
しかし、神は動じずに、こう言った。
『そういえば、あなたの恋人の…あぁ、愁悟君。子供を助けようとして看板の下敷きになって、亡くなりましたよ?』
思わず耳を疑う。…そして、体の芯から硬直していく感覚が志乃を襲った。
「うそ・・・そんなこと、あるわけない・・・」
『神は嘘をつきませんよ』
「うそうそうそうそうそ・・・うそよ・・・」
志乃は思わずふらつき、キョウに受け止められた。
『彼を甦らせる方法は1つ、参加して生き残ることです。…どうしますか?』
ついに、志乃の決意は固まった。なんとか自分の足で立ち、言い切った。
「わたしも、やる。…もう一度あの人に逢うために!」
『わかりました。では2時間後には開始します。健闘を祈りますよ』
アナウンスが途絶えた。すると、どこかから武器が落ちてきた。武器は、携帯サイズの銃が4つ、マシンガンが2つ、ナイフセットが2つだ。
あげは・拓弥・蒼介は撃ちやすい携帯サイズの銃を取り、キョウ・コウは興味本位でマシンガン、そして志乃はナイフセットを選んだ。
「さあ、その少女を起こそう。戦うんだ。絶対元の場所へ帰るぞ!」
「ねぇ、起きて」
志乃が倒れている少女の肩をかるく揺すると、その少女はすぐに目を開けた。
「大丈夫?聞こえる?」
あげはが心配そうな顔で少女に尋ねる。
「・・・私、生きてる・・・?」
少女はゆっくり起き上がると、虚ろな目で辺りを見渡した。
「ちゃんと生きてるよ」
そう言うと、あげはと志乃は優しく微笑んだ。
「あの・・・」
「あなた達は、誰ですか?」
「あ、ちゃんと自己紹介しなくちゃね。これから一緒に戦う仲間なんだし」
あげはの言葉に、少女は少し不思議そうな顔を顔をした。だが、そのことに気付いていないあげはは話を続ける。
「私の名前は上条あげは。で、この子が」
「川塚志乃です」
「志乃ちゃんはね、向こうにいる蒼介君って男の子と双子の姉弟なんだよ」
少女は視線を二人から蒼介に向けた。
「で、蒼介君の隣にいるのが私の彼氏の霧島拓弥。あと、あっちにいる子は常盤皇君と卿君。この二人も双子なんだよ」
一通り自己紹介が終わると、さっきまで武器を眺めていたキョウがこっちにやって来た。
「あれ、それって霧女の制服だよね?もしかして・・・霧女の生徒さん?」
「・・・はい」
少女の返事を聞くと、キョウはとても嬉しそうな顔をした。
「おれ、霧女知ってるよ。あの学校、すげー頭良いんだよな。しかも可愛い子ばっかりだし」
「私みたいな落ちこぼれもいますけど・・・」
少女は小さな声で呟いた。が、あまりにも小さすぎたので3人には聞こえなかった。
「で、あなたの名前は?」
「羽月・・・夏華です」
「じゃ、夏華ちゃん。今から大事な話をするから、よく聞いてね」
「はい」
志乃はゆっくりと今の状況を夏華に話し始めた。夏華は表情一つ変えず、ただ黙って志乃を話を聞いていた。
「私達、戦うんですか?」
志乃が全てを話し終えると、小さな声で夏華が言った。
「うん。私も嫌だけど、元の世界に帰るためには戦うしかないみたい」
「・・・そうですか」
「志乃っ」
その時、遠くの方で誰かが志乃を呼んだ。声のした方を見てみると、蒼介と拓弥と、もう一人知らない男がこちらに向かって歩いてきている。
その男を見た瞬間、あげはの動きが止まった。
「あげはさん?」
「私、あの人知ってる・・・」
「え?」
「鹿倉俊平だよ、芸能人の」
「芸能人っ!?」
拓弥は面倒くさそうな顔をして、志乃に話し始めた。
「コイツ、同じ事務所のタレント。見たことくらいあるだろ」
志乃は少し考えて、やっと思い出すことができた。
「あっ、この前テレビで見た・・・」
男は黙っている。
「鹿倉俊平だよ。お前、テレビあんま見ないだろ。コイツの顔知らない一般人なんていたんだな」
拓弥は含み笑いをしながら淡々と続けた。
「でもさ、コイツ、本当に面倒くさい奴だよ」
「?」
「記憶喪失ってやつ?全く覚えてないんだぜ。ここへ来る前のこと。名前すらわかんねえみたいだし・・・」
「え?記憶喪失?」
志乃は驚いて俊平の方を見た。俊平は志乃に見られて、視線を逸らして言う。
「僕たち、戦うんですね」
「はい」
蒼介が病院の中から、何かを抱えて戻ってきた。
「また落ちてたよ、志乃。今度は鎌とスタンガン」
志乃と蒼介がどこからか支給されて来た禍々しい武器を見た。すると、病院の奥からあげはと夏華がやって来た。夏華はフラフラになりながら歩いてくる。それを必死にあげはが止めていた。
「ちょっと、まだフラフラなんだから歩いちゃダメだよお」
「・・・」
夏華が、蒼介が抱えている鎌を取り上げて、志乃を睨んで言った。
「わたしはこれをもらう。助けてもらったことは、ありがとう。でも、余計なことしてくれたことにもいつか、お礼するから」
「え?」
そう言って、夏華はどこかに消えてしまった。あげはが、彼女に向かって何かいろいろ言っていたが、諦めたらしく、それ以上は追ってはいかなかった。
志乃は、おぼつかない足取りで遠く歩いていく夏華の後姿を見ていた。彼女の手には、強く鎌が握られていた。
「じゃあ、僕はこれですね」
俊平が無表情で蒼介からスタンガンを受け取った。護身用の小さなものではなく、十分に殺傷能力のあるものだ。俊平はスタンガンをじっと見つめ、言う。
「始めましょうよ。早く、僕が僕を取り戻すために」
「ここって携帯使えないっぽいな」
蒼介が使用不能になった携帯を見つめながら言う。
「やっぱ31年も前の機種だからだめなんじゃない?」
志乃が続けて言う。
「じゃあ逃げてる途中、みんなと連絡とれなくなるじゃん」
キョウがため息をつきながら言う。
「はぐれないように気をつけなきゃね」
あげはが言った。
『では、位置について・・・・よーい、スタート!』
まるで緊張感のない神の声が、辺り一面中に響いた。
…ついに、始まってしまった。生死がかかった、120時間の「ゲーム」が。
「しっかし、殺し屋ってどんなやつなのかな」
蒼介が走りながら志乃に問う。現在一行はさっきの場所から走って移動している。
「知らないよ。私だって見たことないんだから!」
「まぁ確かにそれは当たり前だけど…」
「てゆーか、できることなら遭遇したくはないけどね」
夏華が冷たく言い放つ。
そのとき俊平が驚くべきことを言った。
「なぁ・・・前に何か、人っぽいのがいないか?」
それを聞いて全員が前に視線を戻す。確かに何か見える。近づいていくたびに「それ」は人の形になっていく。全身がまるで死神のような漆黒の革のスーツに包まれていて、手には…銃!?そいつは、まさに8人の、敵だった。
「早速お出ましかよ…どうする!?やべぇよ!」
するとコウが前に躍り出て、叫んだ!
「じゃあ足止めしてやるっ!その間に拓弥さんはみんなを連れて引き返して!さぁ行くぞ、キョウ、そー君!」
「「え?…お、おぉ!」」
「じゃあ任せたっ!みんな、引き返すぞ!」
こうしてコウ・キョウ・蒼介は足止め部隊になり、拓弥・あげは・夏華・志乃・俊平はその間に引き返すことにした。
「コウ…テンション高いな。そう思わないか?キョウ」
「あぁ…確かに。あいつ楽しそうだなぁ…」
「さぁ、蹴散らしてやろうぜ!行こう!」
近くで見てみると敵は予想以上に大きく、3人は思わず足を止めた。
「でっけーな、コイツ」
「2mはありそうだな」
「大丈夫だよ。こんな奴等、絶対に弱いって」
そう言うと、キョウは敵に向かって再び走り出した。蒼介とコウも、その後に続く。
「蒼介君達、大丈夫かな?」
走りながら、あげはが言った。
「3人だけじゃ危険だな。相手は8人いるわけだし」
「やっぱ、私達も一緒に戦った方がいいんじゃないですか?」
志乃の言葉に、他の3人が足を止めた。
「相手は8人いるのに、3人じゃ絶対に勝てませんよ」
「だけど、戦い方も知らないのにどうやって戦うって言うの?」
「戦い方なんて、戦いながら覚えていけばいいんです」
気のせいか、志乃の顔つきがさっきとは別人のように見える。
「でも志乃ちゃん・・・」
「おい」
あげはが何かを言いかけた時、横にいた拓弥があげはの肩を叩いた。
「何よ?」
「夏華って子、いなくない?」
「そー君、何やってるんだよ!早く撃っちゃえよっ」
慣れない手つきでマシンガンを撃ちながら、キョウとコウが叫んだ。とにかく敵がいる方に撃ちまくっている2人とは反対に、蒼介は銃を持ったままただそこにいる。
「分かってるよ!分かってるけど・・・」
嫌な汗が、流れてきた。
「いくら敵って言ったって、人殺しなんか・・・」
突然、蒼介の背後から大きな音がした。ゆっくりと後ろを振り返ってみると、8人の中でも1番大きい敵が立っていた。
「まじかよ」
あまりの大きさに驚いた蒼介は、思わず後ずさりをした。
敵はゆっくりと蒼介に近づいてくる。
「と、とにかく・・・撃たなきゃ」
自分に言い聞かせるようにして、蒼介は銃を敵に向けた。
「夏華ちゃんがいない?」
志乃は辺りを見回した。確かに、夏華の姿がどこにも見えない。俊平が冷静に、来た道を見た。もう見えはしないが、向こうの方では蒼介たちが必死になって戦っているはずだ。
「僕たちは間違ったような気がします。彼を、蒼介さんを置いて来るべきではなかった」
それを聞いた志乃は俊平を睨んだ。弟が役立たずだというのか。
「どういうこと?」
俊平は目を合わせずに言った。
「そういう意味です。あなたの方がわかっているんじゃないですか」
「・・・」
拓弥が志乃の肩を掴んで叫ぶ。
「どいうことだよ?おい、お前、アイツの姉貴なんだろ」
志乃は黙っている。そして、志乃はこらえきれず口を開いた。
「わたしがバカだった。あんなことすっかり忘れてて・・・蒼介はっ・・・」
拓弥がじれったそうに聞く。
「なんだよ?」
「蒼介は昔、人が殺されるところを見てしまったんです」
「そ-くん!」
キョウが振り返ると、蒼介は腹を抱えてうずくまっていた。
「うっ・・・人間かよ・・この力」
キョウが蒼介に駆け寄る。
「ちょっと、そーくん!しっかりしてよ。なんで撃たないの」
蒼介は自分の手が握っている黒い鉄の塊を見る。なにかが、頭の隅をよぎった。背中越しに、コウのマシンガンの銃弾が聞こえる。キョウは放心状態の蒼介を立ち上がらせると、目の前の敵に向かって怒声を浴びせる。
「なんなんだよ、お前らは!おれたちになつくなよ!」
敵は黙っている。しかし、その目には言い知れぬ恐怖を帯びていた。蒼介は、ただ、じっと地面を見ているだけだ。そして、思い出す。あの日のことを。
「助けて・・・」
「やめて」
「え?なに、そーくん?」
「やめて、」
蒼介の手が震え、持っていた銃が音をたてて落ちた。
「やめて、殺さないで、見たくない、見たくないよ」
「蒼介は、8年前に・・・誘拐されたことがあるんです。そこで、もう一人、中学生の子も誘拐されていたんです。その女の子は、わたしたちの家の近所に住んでいて、蒼介やわたしを可愛がってくれました。特に蒼介は、姉のように彼女を慕っていたんです」
拓弥たちは黙って聞いている。
「蒼介と女の子は誘拐され、彼女は帰ってこなかった」
あげはが聞いた。
「どうして?」
「女の子は・・・夕貴さんは、蒼介の目の前で殺されたんです」
「そー君!…蒼介っ!一体どうしちゃったんだよ!?」
しかしキョウの必死な声は蒼介の耳には届いておらず、ただただその場で震えていた。
「おれのせいだ…おれのせいなんだ…」
すると蒼介はふらふらした手つきで銃を拾い、なんと自分のこめかみに銃口をあてた。
「ころすくらいなら・・・じぶんでしんだほうが・・・」
「お、おい、蒼介!やめろっ!」
慌てて静止にかかり、蒼介から銃を奪う。それと同時に、蒼介は大きな音をたててその場に倒れ伏した。
「そ、蒼介!…くそ、このままじゃ・・・うわっ」
敵が、銃をかまえ、こちらへ段々と近づいてくる。敵の黒くて巨大な威圧感が周り中を包み込む。敵の銃が、とてつもなく大きく見える。
「絶望」、その二文字しか頭に浮かばない。初めて気づいた、正面から見た敵の恐ろしさがキョウの思考回路をショートさせる。
いつのまにかキョウもその場に座り込み、顔を真っ青にして震えていた。
「あ・・・あ、あ・・・」
マシンガンを掴む手にも力が入らない。撃たれる、もうだめだ、と思った。
・・・その瞬間、コウが放った閃光のような銃弾が敵の腕をかすった。
「キョオォォ、逃げろおおぉぉぉぉー!」
そのコウの痛烈な叫び声で我に返る。キョウはとっさに蒼介を抱え、マシンガンをかまえながら敵とは反対の方向に一気に走った。
「コウ、一時休戦で撤退だっ!早く来いっ!」
「夕貴さんは…弟をかばって亡くなりました。…実は本当は、弟のほうが先に犯人に殺されていたはずなんです。でも寸前で彼女が弟の盾になって…。そのあとすぐ警察が駆けつけたけど、彼女はもう…」
「そんな・・・。それで犯人は?捕まったの?」
「逃走…中です」
「・・・・・」
「それ以来弟は、『死』にとてつもなく敏感になりました」
「でも、何で俊平さんがこのことを知ってるんですか?」
全員の視線が俊平に移った。
「こんな辛いことを、蒼介が初対面の俊平さんに話すわけないのに・・・」
「僕はただ・・・」
「お前が、その犯人だったりしてな」
拓弥はポケットから出した煙草に火を点けながら言った。
「え?」
俊平の顔が一気に青ざめる。そんな俊平を見ながら、拓弥は静かに笑った。
「ばーか。冗談だよ、冗談」
「拓ちゃん、変な冗談はやめてよね」
あげはも笑っていたが、志乃だけは笑えなかった。
「本当に・・・何で知ってるんですか?」
「超能力、ってやつですかね」
その頃、夏華は一人で蒼介達とは別方向の道を歩いていた。
「あんな人達とは、一緒にいられない」
ふと視線を上げると、目の前には大きな人影のようなものが見える。夏華はその人影が敵だと確認すると、すぐに鎌を構えた。そして、自ら敵に向かって歩き出した。
「あんたなんか、怖くないのよ」
そう言うと、夏華は勢い良く走り出し、そしてあっという間に敵の心臓らへんに鎌を刺した。敵はしばらく苦しんでいたが、やがて力尽きたようにその場に倒れた。
「全然弱いじゃない」
敵に刺さった鎌を抜きながら、夏華は静かに笑った。
キョウは蒼介を引きずるように、歩いてるいとも、走っているともつかないスピードで進んでいた。コウがその後ろから二人を守るようにして歩いている。コウが後ろを振り返りながら言う。
「アイツら、追ってこねえな・・・キョウ、そー君どう?」
キョウはダメだ、というように首を横に振った。蒼介は相変わらず、虚ろな目をしている。蒼介は一体、どうしたというのだろうか。二人には全く見当もつかなかった。
さっきの場所からだいぶ来たところで、前を歩いていたキョウが思いがけないものを発見する。
「これって・・・」
「どうした、キョウ?」
キョウの横から覗いてみる。そこには見知らぬ顔が転がっていた。恐らく、これも敵だったのだろう。もう人形のように動かなくなった胸、心臓の辺りからは真っ赤な血が溢れていた。良く見ると、深く、抉られたような傷だった。銃で撃たれたのではないらしい。
「みんながやったのかな」
キョウが不思議そうに言った。コウはじっと傷口を見ている。
「この傷・・・銃じゃないな。かなり深く刺されたみたい。ナイフを待ってたのは、志乃ちゃんだっけか?」
「うん。でも、志乃ちゃんはみんなと一緒に反対に走っていったろ。違うんじゃないか」
「そっか。じゃあ、誰が・・・あ」
「え?」
「・・・夏華ちゃん」
「やっぱり戻ろうよお」
あげはが拓弥の袖を引っ張りながら言う。拓弥は相変わらず、うっとうしそうだ。あれからみんなの空気は、どことなくぎこちなかった。志乃と拓弥は何かをじっと考えていたし、俊平は黙り込んだまま、そんな空気に耐えられなくなったのがあげはだった。
「ね、志乃ちゃんも蒼介くんのこと心配でしょ」
あげはに振られてやっと現実に戻ってきた志乃。
「え、はい。そうですね、やっぱり戻りましょう」
志乃とあげはは元来た道を走り出した。拓弥も俊平も何も言わずに走り出す。拓弥が志乃に考えていたことを聞いた。
「それで、蒼介の話はどうなったんだよ?」
「・・・蒼介だけが開放されたのは、事件があった日から二日目でした。最初に会った弟は、それまでの弟ではありませんでした。青ざめて、いつも恐怖を写しているような目で、私を見てきました。正直、あの時はどうしようかと思いましたよ。それから、しばらくして心の傷もだんだんと癒え、夕貴さんのことは記憶の底に沈めるように忘れていきました。しかし、まだ、完全に消し去ることなんかできていないんです。きっと、この戦いであのことを思い出すかもしれない。そのことを考えもしなかった・・・ほんと、最低」
志乃は悔しそうに笑って言った。まだ、幼少のトラウマに震える蒼介を見つけることはできない。
「しかし、あいつ何処行ったんだろうな」
それまで黙っていた拓弥がぼそりと呟いた。
「あいつって?」
「だからぁ、夏華とかいうやつだよ・・・全く、自己中なヤツだな」
「あぁ・・・確かに」
「本当にどこ行っちゃったんでしょうねっ」
俊平は走りながら少しキョロキョロしたが、やはりどこにも人影は存在しなかった。
「・・・むやみに単独行動をとられると、こっちもちょっと迷惑ですね」
「でもあいつがどっかで勝手にやられるにしても、おれたちには関係ないね。単独行動起こしたあいつが悪いんだから」
そう言い放った拓弥と俊平を、志乃がいさめた。
「そういうこと言うのは良くないと思います・・・だって、あの子も一応、私たちの大事な仲間なんですから」
そのころ、コウ・キョウ・蒼介(気絶中)はまだ敵の死体を囲んで呆然としていた。
「本当にこれ、夏華ちゃんがやったのかな・・・?」
キョウがそう呟くと、コウが何かに気がついて、言った。
「でも、おい待てよ、そしたら敵って女の力でも倒せるほど弱いのか?」
「そうだったらマシンガンとかマジでいらねーじゃん。重いし、ただの荷物だろ」
「確かにー。弱いなら別にわざわざマシンガン使わなくてもいーじゃんね」
「・・・どうする?実は敵は不死身でしたーっとかいう裏ルールがあったら」
「ちょっとキョウ、怖いこと言うなって!」
「ん、まぁとりあえずここ離れようよ。もし今そー君目覚めちゃったら、これ見てまた気絶しちゃうと思うよ」
「そうだな・・・行こっか」
そうして二人はいまだ目覚めぬ蒼介を抱え、再び歩みだした。
すると、ひとつの人影が遠くから近づいてきていることに気づいた。
「おい、キョウ」
「何」
「あれ、夏華ちゃん・・・・・」
「ねえ、あっちに人がいるよ」
遠くの方を指差しながら、あげはが叫んだ。三人はあげはの指差す方に視線を向ける。
「きっと夏華ちゃんだよ」
志乃は目を凝らし、遠くに見える人影をじっと見た。だけど、あまりにも遠すぎてその人影が夏華とは確認することが出来ない。
「良かったですね、見つかって」
俊平とあげはは嬉しそうに微笑み合っていたが、拓弥だけは面倒臭そうに溜息を吐いていた。
「じゃ、行こっか」
そして四人は、その人影の方へ歩き出した。
「夏華ちゃん、こんな所で何してるの?」
「何って、敵殺しに決まってるでしょ」
キョウの問いかけに、夏華は面倒臭そうに答えた。
「でも、一人?みんなは?」
「知らない。どっかにいるでしょ」
夏華は溜息を吐きながら、蒼介の方に視線を移した。
「この人、どうしたの?」
「なんか・・・おかしくなっちゃったんだ」
「は?」
「戦ってたらさ、急に変になっちゃって」
「情けない人ね」
「ちょっと待ってください」
先頭を歩くあげはの腕を掴みながら志乃が叫んだ。
「どうしたの、志乃ちゃん」
「駄目です」
「え?」
「あっちに行っちゃ駄目ですよっ」
「何で?」
「だって、あれ・・・夏華ちゃんじゃない」
「じゃ、誰なんだよ」
「敵かもしれない・・・」
「さて、志乃ちゃん達を探しに行くか」
「ねえ」
「ん?」
「このゲームのルール、ちゃんと覚えてる?」
夏華は鎌を取り出しながら言った。その鎌からは、敵の血と思われるものが大量に付いている。
「覚えてるよ。120時間、敵から逃げ切ればいいんだろ」
「もっと大事なルールを忘れてるよ?」
夏華は静かに笑った。
「大事なルールって?」
「120時間敵から逃げ切って、逃げ切れた4人だけが元の世界に戻れるんでしょ」
夏華の持っている鎌を見て、二人の顔が一気に青ざめる。
「元の世界の帰れるのは4人だけなんだから、敵以外の人にも死んでもらわなきゃ、自分は帰れなくなっちゃうよね」
「そんな・・・仲間を殺せるわけねぇだろっ」
「じゃ、あなた達は誰も殺さなくていいよ」
「は?」
夏華はゆっくり鎌をキョウ達に向けた。
「って言うか、私が殺せなくしてあげるから」
キョウとコウは後ろに一歩引いた。夏華は鎌を三人に向け続ける。
「ちょっと、夏華ちゃん!やめようよ、仲間同士で」
コウはおどけてみせた。しかし、夏華は本気のようだ。目は静かな赤い炎を宿しているように、殺気を放つ。鎌は血を耐えず流している。思わずぞっとしてしまうような光景だ。
「コウ、ヤバイって。女の子相手に戦えねえよ」
「うん。おれたち、超ピンチじゃん」
夏華がじりじりと三人に歩み寄る。
「・・・私は帰るの。帰ってやり直すんだから・・・」
三人も後ろにゆっくりと引く。
「だから邪魔しないでっ!」
夏華が一気に間を詰めるために走り出した。鎌は蒼介を狙っているようだ。コウはバランスを崩し、うまく逃げることができない。刃が荘介の頭上に振り下ろされる。
「「蒼介!」」
ガンッ
・・・キョウが夏華を見た。すると、夏華は二人の前で右肩を抑えてうずくまっている。低いうなり声が聞こえ、肩からは真っ赤な血が濡れ落ち、制服は緋色の染みがべっとりとついている。
一瞬だった。夏華が刃を振り下ろす瞬間、銃口が夏華の右肩に向けられ、弾が肩を貫いた。
「そ-くん?」
コウは蒼介を見た。虚ろな目で夏華に銃を突きつけている蒼介。
「僕が守ってあげるからね、夕貴おねえちゃん。」
「敵かもしれない」
志乃はとっさにあげはを止めた。しかし、あげははそんな志乃を笑った。
「なんで?あれは夏華ちゃんだよ。きっと、あげは達のところに戻りにくいんだよ、一人で行っちゃったから」
そう言って、志乃の手を振りほどきあげはは夏華の方に走っていった。その時、拓弥があげはの腕を強く掴んで、あげはに怒鳴りつけた。
「おい、こいつの言うこと聞けって。夏華じゃないかもしれないっつってんだ。お前はおとなしくケガしたやつの治療してりゃいいんだよ」
「う、うん・・・ごめん」
あげはは悲しそうに従った。あげはは拓弥に絶対に逆らわない。拓弥は‘人を愛する’という感情が欠乏したように、明らかに自分を好いているこの少女を愛そうとしていない。あげはの扱いは他人以上に冷たいものである。
俊平が夏華の方を見た。そこには、もう誰もいない。
「あれ」
今のは何だったんだ-。空は、そろそろ程よい闇に包まれようとし、太陽の紅い残像が地平線の向こうに身を沈めかけている。
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
競馬全般
26-27指名馬出走・・・第14戦
(2026-10-04 07:20:41)
アニメ・特撮・ゲーム
「FX戦士くるみちゃん」第一話「FXっ…
(2026-10-04 21:19:24)
GUNの世界
コマンダー【ラブレス】カスタム / …
(2026-10-05 12:15:55)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: