母のお腹の中に弟がいることがわかったとき、私は幼稚園年長組だった。既に妹が生まれた時の体験があったので、私は気楽に構えていた。
だんだんお母さんのお腹が大きくなって行って、ある日お母さんが入院する。病院にお見舞いに行くと、そこにはお母さんと一緒に赤ちゃんが居て、1週間くらいで家に帰ってくる。
赤ちゃんはご飯を食卓で食べずにお母さんのおっぱいを飲み、トイレに行かずにおしめでおしっこもうんちもする。よく泣く。歌を歌ってあげたり、絵本を読んであげたり、くすぐってあげたり、抱っこしてあげると、にっこり笑ってかわいい。
そのうち、ご飯を食べるようになり、トイレに行くようになり、時には生意気なことを話すようになり、私のおもちゃをほしがったり、私の行くところについて行きたがったりするようになる。何でも私の真似をしたがることもある。
だから、今回もそんなものだと思っていた。男の子かどうかは、母について行った産院で見た超音波画像を見て、お医者さんは「へその緒が腰の辺りにまきついてしまって、生まれるまでわかりませんね」と言っていたので、また妹かもしれない。そんな程度の認識しかなかった。
しかし、はじめての運動会を誰の応援もなく済ませて産院に母の見舞いにでかけると、そこに待望の弟はいなかった。母が搾乳機でしぼった母乳を冷凍用の母乳パックにつめながら、悲しそうに「赤ちゃんは病気で大きな病院に救急車に乗って行っちゃったの」と言った。
かわいい弟に会えなかったのは寂しかったけれど、「赤ちゃんの病気、早くよくなるといいね」その時点では程度にしか考えていなかった。いや、考えられなかった。