おはなし  その5 




 その5 お見合い編



 恭子「お見合い?」

恭子が、少し大きな声を上げた。

 啓介「しー。声がでかいんだよ。おまえは」

 恭子「ごめん」

今、啓介と恭子は、ホテルのロビーにいる。

 恭子「だけど、涼介さん。まだ医大生でしょ?」

 啓介「ああ、今すぐ結婚というわけじゃなくて、あと何年後かしたら
    結婚するらしいぜ。
    古い言葉で言うと、いいなづけ。
    悪く言えば、政略結婚かもしれない」

 恭子「政略結婚? 今でもそんなの、あるの?」

 啓介「理由がいまいち、わからないけど、高橋クリニックを大きくするための
    条件が、相手側のお嬢さんとの結婚らしいぜ」

涼介・啓介の父は、群馬にある病院の院長である。
その後継ぎが、長男である涼介なのだ。

 啓介「いろんな複雑な事情が、あるみたいなんだ。
    おまえも、いつか高橋家の人間になるかもしれないから、その時に
    わかるんじゃないか」

 恭子「え?」

今、すごい重大発言をした。啓介は。
いつか高橋家の人間になるかもしれない・・・・
これって、高橋恭子になるってこと?
もしかしたら、プロポーズ?
恭子は、少しドキドキしていた。

 啓介「相手がどんな人か、見てみたいからな」

啓介と恭子は、偵察に来ていた。
兄・涼介が将来、どんな相手と結婚するのか、弟としては気になる。
未来の義姉になるのだから・・・
1人で偵察するのは、何だからと、恭子を連れてきた。

恭子は、涼介の相手どころではない。
ドキドキが、おさまらない。

啓介の携帯が、なった。
相手は、ケンタだ。

 啓介「ケンタからだ。ちょっと行ってくる。すぐに戻ってくるから、アニキに
    気づかれるなよ」

そういうと、車で出て行ってしまった。
ケンタは、どうも私達の邪魔をする・・・
1人で、偵察というのも何かイヤだなあ。
秀香さんは、このお見合いのこと、知っているのかな。
涼介さんは、本当に親が決めた相手と将来、結婚してしまうのかな?

なんて、考えていると、涼介とお見合いの相手が、ロビーに来た。
親が出る幕は、終わったようだ。
ここからは、2人だけの時間ってことか。
恭子は、涼介の気づかれないように、様子を見ていた。

相手の女性は、おとなしめで、「純」と言う言葉にピッタシの人である。
涼介さんのネクタイ姿、初めて見た。
すごく似合っているなあ。

涼介と相手の女性は、2人でいるが、会話が成り立たないようだ。
もともと涼介の方も、おしゃべりではない。
恭子から見る相手の口は、ほとんど閉じている。
どうかすると、口が少し開く程度。
お見合いで緊張しているのか?

それにしても、早く啓介が帰ってこないかな・・・と待っている恭子。
お似合いではないが、涼介と相手を見ているのがつらい。
もし、秀香だったら、もっとつらい。

2人が、席を立った。
相手は、トイレに行ったようだ。

突然、恭子の前に涼介が来た。

 涼介「いつから、そこにいる?」

 恭子「お見合いが始めるくらいに」

 涼介「啓介は、どうした?」

 恭子「ケンタ君に、呼び出されて行きました」

 涼介「そうか。 俺がおまえに気づいたことは内緒だぞ。
    それから、秀香には何も言うなよ。
    あいつは、今日のことは知らないから」

 恭子「え? 秀香さんが、かわいそうです」

 涼介「秀香には言うな。・・・・未来のアニキに、にらまれたくはないだろう」

涼介は、恭子の席から離れた。
そして、トイレから出てきたお見合い相手と、ホテルから出た。
多分、家まで送って行くのだろう。

未来のアニキ・・・・
恭子は、またドキドキした。
どうしよう。
啓介にも、秀香さんにも内緒だなんて。
早く、啓介戻って来て。
ここに、1人でいたくない。

走って、啓介が戻ってきた。

 啓介「ごめん。アニキは?」

 恭子「帰ったよ」

 啓介「それで、相手はどんな人だった?」

 恭子「・・・・・すぐに外に出て行ったから、わからなかったわ」

恭子は、嘘をついた。
相手は、涼介と似合わない人かもしれない。
タイプとしては、啓介の嫌いなタイプかもしれない。

 啓介「そうか。どこか走りに行くか」

 恭子「帰る」

 啓介「え?」

 恭子「もう帰る」

 啓介「帰るったって、まだ4時前だぞ」

 恭子「今日は帰る」

 啓介「明日、休みなんだろ? 朝までまた一緒にいるだろう?」

 恭子「休みだけど・・・・」

 啓介「じゃ、いいだろう?」

 恭子「やっぱり、帰る」

 啓介「何でだよ~。どうした? 朝まで一緒にいるのがイヤなら、せめて
    夕飯だけでも、一緒に食おうぜ」

 恭子「ううん。帰りたい」

 啓介「どうしたんだよ。おまえ」

 恭子「何でもないよ」

 啓介「とりあえず、車に行こう」

啓介は、恭子を車に乗せた。
恭子は、涼介の言った事が、気になってしかたがなかった。
涼介との、秘密ごと。
啓介に、言えない。
もちろん、秀香にも言えない。
どうしよう。

車は、埼玉方面に向いている。
恭子は、だまっている。

 啓介「恭子、どうした?」

 恭子「何でもないよ」

 啓介「おまえ、おかしいぞ」

 恭子「大丈夫だよ」

弾まない会話。
夕食までのぎこちない会話。
適当に車で流して、2人は、夕食を済ませた。

 恭子「ごちそうさま。もう帰る」

 啓介「やっぱり、帰したくない」

 恭子「帰るから、家まで送って」

 啓介「帰したくない。 おまえ、変だぞ。俺と一緒にいたくないのか?
    俺のこと、好きじゃないのか?」

 恭子「好きだよ。大好きだよ」

 啓介「だったら・・・」

恭子は、どうしても啓介には言えなかった。

 啓介「アニキの彼女、お見合いのこと、知ってるのかな?」

恭子は、ドキッとした。
秀香には、秘密にしなければ。

 恭子「どうかな?」

恭子は、言葉を濁した。

 啓介「彼女、お見合いの事、知ったらショックだろうなあ」

 恭子「うん。だから、言わない方がいいよ」

 啓介「でも、いつか、ばれちまうんじゃないか」

 恭子「そうだけど。  もう私帰る」

 啓介「何で?」

車の窓から、ラブホテルの看板が見える。

 恭子「今日は、帰りたいの」

啓介は、看板の明かりとは、ちがう方向へ行った。

 啓介「できたら、朝まで一緒にいたいって言うのは、俺のわがままなのか?
    今度は、いつ会えるか、わからないし」

ひと気のないところで、車は止まった。
恭子は、早く家に帰りたかった。
涼介との秘密を、心にためておくのが苦しい。

 啓介「おまえ、さっきから、変だぞ」

 恭子「何でもないよ」

 啓介「いつものおまえらしくないぞ」

 恭子「そう?」

啓介が、自分のシートベルトをはずした。
恭子のシートベルトも。
啓介が、恭子を抱き寄せた。

 啓介「どうしたんだよ。何かあったのか?」

 恭子「何でもないよ」

 啓介「さっきから、笑わないし」

啓介が、恭子の顔を見た。
そして、優しくキスをした。

 啓介「俺には、話せない事なのか?」

 恭子「何でもないって」

啓介が、もう1度キスをした。

 啓介「やっぱり、帰したくない」

優しいキスから、深いキスに変わった。
離したくない・・・・
恭子と涼介の秘密を、何も知らない啓介。
抱き寄せて。
車の中は、狭い。

 恭子「啓介さん。もうやめて」

 啓介「後ろ、行こう。前よりいいかも」

 恭子「イヤ。もう帰る」

 啓介「今日は、大丈夫。ちゃんとするから」

 恭子「イヤ」

恭子は、首を振った。
啓介は、恭子にキスのシャワー。
嫌がる恭子。

 啓介「車の中でイヤなら、ホテル行く?」

恭子が、また首を振った。

 啓介「・・・・・・何なんだよ。今日のおまえは」

恭子の目から、涙が出てきた。

 啓介「そんなにイヤなのかよ」

恭子は、何も言えない。
涼介の気持ちも、わからないわけじゃない。
秀香に知られたくない、そう思っているにちがいない。
秀香を、悲しませたくないから。
啓介に、涼介とのことを言ったら、啓介は間違えなく、秀香に報告するだろう。

 啓介「帰るぞ」

車は、恭子の家に向かった。

 啓介「今度は、いつ会えるか、わかんないぞ」

 恭子「うん」

 啓介「それでも、おまえはいいのか?
    俺は、おまえのことが好きだ。好きで好きでたまらない。
    離したくない。 帰したくない」

恭子も、啓介と同じ気持ちだ。
でも、涼介との秘密を心にとめながら、啓介に抱かれたくはない。

 恭子「おやすみなさい」

啓介は、恭子におやすみのキスをした。

 啓介「おやすみ」

啓介は、群馬へ帰って行った。

どうしよう・・・
やっぱり、秘密はよくない。
啓介に言ってしまえば、よかったのか。
恭子の気持ちは、複雑。


 おはなし その5完

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 あとがき

 その5・・・・

 いつ書けるだろう。書かないかもしれないーーーーーーー
 と、書きながら、書かずにはいられなかった。

 珍しく、早寝の私が、夜書き上げたその5.
 涼介のお見合い編でした。

 啓介と恭子は、この後、どうなるんでしょうかね~。
 その6は、書く予定でいます。
 いつになるか、わからないけど・・・


 7月24日

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