おはなし  その6 




 その6 兄弟編


兄・涼介と恭子が、秘密を持っているなんて、知らない啓介。
あいまいなまま、秋になった。
今度いつ会えるか、わからない・・・

啓介は、タイヤ屋でタイヤを見ていた。

 中里「どこかで見たような車かと思ったら・・・やっぱり」

 啓介「何で、おまえがいるんだよ」

 中里「タイヤを見に来たんだ。文句あるか?」

中里は、啓介の走りのライバルである。
一戦を交えて、啓介の方が、わずかな差で勝ったのである。

 啓介「ない」

 中里「そういえば、おまえ。夏に女の子と○○デパートにいただろう?」

 啓介「女の子? ああ、恭子の事か」

 中里「2人で、飯食ってるとこ見たぞ」

 啓介「何でおまえが、○○デパートにいたんだよー」

 中里「俺だって、買い物くらいするさ。文句あるか?」

 啓介「ない」

 中里「いい雰囲気だったな。おまえの女か?」

 啓介「何で、おまえに言わなきゃいけないんだ?」

啓介は、機嫌が悪い。

 中里「かわいい子だったな。おまえには、もったいないな」

 啓介「俺の女だ。誰にも渡しゃしないぜ」

 中里「お~。相当彼女に惚れてんだな」

 啓介「どうだっていいだろう。帰る」

啓介は、家へ帰った。
気分が悪い上、イヤな奴と会ってしまった。
恭子・・・・どうしているだろうか。

 啓介「ただいま」

高橋家は、相変わらず静か。
おやじは、また学会か。おふくろは、買い物か。
アニキの車があったから、部屋にいるだろう。

 啓介「アニキ、入るぜ」

 涼介「ああ」

 啓介「さっきさ~。イヤなやつと会っちまったよ」

 涼介「イヤなやつ?」

 啓介「何だ?このダンボールは?」

啓介は、涼介の部屋にあったダンボールに気づいた。
あて先は、高橋涼介様。
差出人は・・・

 啓介「須藤秀香? 秀香って、アニキの彼女じゃないか?」

 涼介「ああ」

 啓介「何送ってきたんだ?」

 涼介「見てもいいぞ」

啓介は、もう開けてあるダンボールをのぞいた。
中里のことは、どうでもいい。
秀香が、何を送ってきたのだろうか。

 啓介「アニキのジャケットじゃないか。 シャツもある。本もある。
    彼女のとこにあったのじゃないか?」

 涼介「ああ」

 啓介「アニキ。彼女とけんかでもしたのか?」

 涼介「送ってきたってことは、ふられたってことだろう・・・」

 啓介「ええ~。何で? 何でだよ」

 涼介「・・・・こないだのお見合いのこと。秀香は当に知っていた。
    大学で情報が入ったんだろう。
    おまけに、おふくろが秀香に会いに行ったらしい」

 啓介「え?何でおふくろが、彼女んちまで行くんだ?」

 涼介「俺との交際を、終わりにしてくれと頼んだらしい。
    最初から、全部知っていたんだ。
    それを承知で、俺と付き合っていたらしい」

涼介は、哀しい目をしていた。
啓介は、兄に対して何も言えなかった。

 涼介「京一に、<秀香を悲しませるな>と言われていたのにな」

 啓介「京一って、須藤京一だろ? 何で須藤が、出てくるんだ?」

京一は、涼介の走りのライバルである。
2戦やったが、2戦とも涼介の勝利である。

 涼介「あいつの妹が、秀香なんだ」

 啓介「ええ~。 アニキ、それって最初から、知ってたのかよ?」

 涼介「あとで、知った。
    京一は、顔に似合わず、妹思いでな。
    何回も<妹を悲しませるようなことはするな>と言ってた」

こういう時は、何て言って慰めてやればいいんだ?
アニキが、ふられるなんてありえない。
最初から、結ばれない恋だと秀香はわかっていた。

 涼介「京一は、妹の事が心配でたまらなかったんだろうな。
    いつ、秀香が俺にふられるか、待っていたんだろうな」

 啓介「アニキ・・・・・」

 涼介「恭子から、聞かなかったのか?」

今度は、恭子の話になった。

 啓介「恭子が、どうした?」

涼介は、恭子にお見合いの事を秘密にしてくれ~秀香には言うな~と
恭子に口止めしていたことを、話した。

 涼介「悪かった」

 啓介「・・・・だから、あの日、恭子は、俺にも言えなくて」

啓介は、アニキの部屋を出て車に乗った。
行き先は、もちろん、恭子のところ。
恭子に会いたい。
恭子と、ちゃんと話したい。


埼玉。恭子の自宅。

 恭子「どうしたの?」

 啓介「アニキに、全部聞いた」

 恭子「え?」

 啓介「どうして俺に言ってくれなかったんだ?」

 恭子「ごめんなさい」

啓介が、恭子を抱きしめた。

 恭子「啓介さん。苦しいよ」

 啓介「もう、何があっても離さないから。おまえは、俺の女だ」

啓介が、もっと強く抱きしめた。
それから、恭子を自分の車に乗せて、朝まで一緒にいれる場所へ。
愛してる・・・


一方、涼介は、啓介の忘れていった煙草を吸っていた。
いいことが、ある時しか煙草を吸わない涼介だが。

涼介の荷物と一緒に、手紙も入っていた。
今までのお礼と、医大を休学して実家に戻るという報告。

あいつに、最高のプレゼントをしたんだろうなあ。
あいつが、幸せになってくれれば、俺は十分だ。

あの日。
俺は、秀香に呼び出されて・・・・

 ********************************


 秀香「忙しいのに、ごめんね」

 涼介「どうした?」

 秀香「今度、○○病院のお嬢さんと会うんだって?」

 涼介「何でおまえが、知っているんだ?」

 秀香「将来、結婚するんでしょ?」

 涼介「まだそこまでは・・・」

 秀香「隠さなくてもいいわ。全部、高橋家の事情を知ってるから」

 涼介「何でおまえが?」

 秀香「もう、私達、別れた方がいいかもしれない。
    でも、最後にほしいものがあるのよ」

 涼介「ほしいもの? 何だ?」

 秀香「あなたにしか、できないもの。涼にだけしか、プレゼントできないもの」

 涼介「俺にしか、プレゼントできないもの?」

 秀香「うん」

 涼介「何が、ほしい?」

 秀香「・・・・・・・・赤ちゃん」

 涼介「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

涼介は、どう返事を返そうか迷った。
簡単に答えが、出るはずがない。
時間をくれ~。考え直せ~。何をばかなことを言ってるんだ~。
どれも、最良の答えにはならない。

 涼介「後悔しないか?」

 秀香「うん」

 涼介「おまえの都合のいい日は?」

 秀香「今日」

 涼介「だから、わざわざ今日を選んで、俺を呼び出したんだな」

 秀香「うん」

 涼介「もう1度聞く。後悔しないか?」

秀香は、うなづいた。
涼介が、手に入らないのなら、せめて涼介の愛がほしい。

 涼介「わかった。 シャワー浴びて来い」

秀香は、シャワーへ。
涼介は、ベッドへ。

秀香が、バスタオルをまいて出てきた。

 涼介「俺は、秀香の望む赤ちゃんの父親にはなれないぞ。
    それでも、いいのか?」

 秀香「うん」

涼介との結婚は、できない。
それは、初めからわかっていた。
結婚ができないなら、せめて涼介の愛がほしい。

 涼介「秀香。愛してるよ」

 秀香「涼・・・涼・・・愛してる」

たくさんのキスを贈る。
たくさん愛を贈る。

 涼介「秀香。愛してる。いつまでも忘れない」

 秀香「涼。ありがとう。
    うまくいったら、医大を休学して実家に帰るわ」

 涼介「わかった」

何度もキスをした。
何度も、抱き合った。
お互いに、一生忘れないために。
幸せな時を、忘れないように。
愛してる・・・・

 ********************************


秀香が、実家へ帰ったということは、うまくいったんだな。
さすが、未来の産婦人科医だ。
俺にしか、贈ることのできないプレゼント。
秀香しか、受け取ることのできないプレゼント。
愛してる・・・・


 おはなし その6完

 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

 あとがき

 いつになるか、わからない・・・と言いながら、お子がお泊りに行ったので
 書いている。
 しかも夜。睡魔と闘いながら。

 その6は、ゲストで中里を出した。
 年齢=啓介と同じ21歳の設定。
 後半の涼介と秀香のシーンは、あとから書く予定だったけど
 つなげてしまった。
 1番難しかったのは、この涼×秀のラブシーンだった。

 眠いので、これにて失礼。

 7月27日

HOME

© Rakuten Group, Inc.

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: