愛の始まり、そして別れ PT.4

pinkmooncross

愛の始まり、そして別れ PT.4

私はあの暑いミシシッピに何かを置いてきてしまったのだ。

彼との幸せな生活・・それに向けられていた今までの私の期待は、孤独な夜とともに砕け散った。


彼が求める愛は、母親の愛情に似たものなんだろうと思う。

私は彼の母親的存在なのであろう。

普遍の愛・包容力のある愛・・

彼にそう思わせたのは、他の誰でもなく、この私なのだ。

そして私が勝手に変わってしまったのだ。

始めの頃、私は見返りなんて求めていなかった。

けれど、次第に欲張りになり、目に見えて、耳で聞いて、肌で感じることのできる愛を欲した。

時々ではなく、日々感じることのできる愛を。

「Give And Take」


日本に戻ってからというもの、私は他の男と寝ることで自分の中にできた穴を埋めようとしていた。

勿論その男には彼がいることは話してあったが、その男は次第に私を独り占めしたいと思い始めた。

私はその男に対して”愛してる”なんて感情は勿論なかったが、

彼の私への接し方は、疲れた私にはとても心地よかった。

彼はいつも私の側にいたがった。

今までは毎週クラブに行っていた男だったのに、私と2人きりで過ごすことをしたがったのだ。


彼は私に「愛してる」と告げた。

私は何も言わなかった。

だって私が愛する男は一人しかいないのだ。

彼は「それでもいい。俺は待っている」と言った。


私は自分が愛する男と、今側にいて私を心地よくさせてくれる男について考えた。

私は幸せになりたいのだ。

いつも側にいて欲しいのだ。

言葉で、ハートで、体で、愛して欲しいのだ。


愛情の表現が下手な男、強がりでプライドの高い女。

お互い目に見えない愛情で結ばれているのだ。

言葉をたくみに使えていればこんなことにはならなかったのに・・


何ヶ月かして、私の側で私を心地よくさせてくれる男は、私に決断を迫った。

その男は、私の愛する彼を知っている。

「奴と別れて欲しい。俺はあいつよりもお前を愛している。お前を寂しい思いになんて絶対にさせない。

だから別れて俺だけのものになってくれ。」


私は黙っていた。

分からなかったからだ。

私の欲しいもの・・私の幸せ・・

それは運ばれるのを待つのではなく、自ら手に入れるものなのだ。

私が手に入れたい幸せとは?

心の平穏なのだ。

そして私の手に繋がれたもう一つの手のぬくもりをいつも感じることなのだ。


そして私は決断を下した。

「It hurts too much to love you. I don't want any lonely nights・・・ I love you but i am not happy.. I'm leaving you」

私は彼の留守電にそう残した。

彼から連絡はなかった。


私は毎晩泣いた。

「今なら取り消せる・・愛する事が辛くても、孤独な夜が多くても、それでもいいと彼に伝えればいい・・」

けれど私にはできなかったのだ。


私を独占したその男は、言ったとおり、私を寂しくさせることはなかった。

いつも私の手は彼によって握られ、とても安らかな気持ちだった。


「これでいいのだ・・」


私は自分の携帯電話の電話番号、メールアドレスを変えた。

彼との連絡手段をなくすために。



その後、1年近くがたったある日

私の家に電話が鳴った。

「俺だよ・・・」

私の鼓動はとても速くなった。。

 「携帯も、メールアドレスも変えたんだな・・でも、自宅の番号は変わってなかった。 どうしてる?」

「元気だよ」

私の声はわずかに震えていた。

今にも涙が噴出してしまいそうだったのだ。

「ごめんな。 俺、お前が俺から去ってから、色々考えたんだ。 俺自身の問題を直視してみたよ。

お前を愛するその方法を間違えちまったんだって分かったんだ。

俺、暫く刑務所に入ってたんだ・・人、撃っちまった。」

「どうして?自分を守るために?」

「それもそうなんだけど、俺、どうでもよかったんだ。

お前のいない人生なんて意味がないからな・・・

けど、俺、思い出したんだ。 お前が俺にいつも言っていた言葉。

行動する前に考えろ、いいことか悪いことかって。お前はいつもそんな風に言っていたよな。

でも、俺あの頃よくわからなかったんだ。

俺、今真面目にやってるぜ。 任期が切れたらネイビー辞めて、消防士になるよ。すげーだろ。」

そして彼は泣き出した・・声を上げて泣いている。

「泣かないで・・・・」

私も我慢ができず泣き出してしまった。。

暫く二人で泣いた。

「聞いてくれよ。今から言うこと、忘れないで欲しい・・・

今、お前が誰と付き合っていようが、この先、もしもお前がそいつと結婚しちまっても、

できればして欲しくないけど・・・それでも構わない。

これだけは忘れないで欲しいんだ。 俺はお前を誰よりも愛している。 今までも、そしてこれからもずっと・・・」

「私も愛してるよ。ずっとね。」


私はその時、私と彼の関係にピリオドを打った気がした。



あれから数年・・私を独り占めにした男は、今私が付き合っている男である。


今でも時々彼から連絡がある。

彼は現在ネイビーを辞め、本当に消防士になった。


これからもずっと私が愛し続ける男。

私の体には彼の名前が刻まれている。


勿論今の男は消すことを望んでいるけれど・・・


彼との関係で私が学んだこと・・


プライドなんてとてもくだらないものである ということ

「言葉にしなくても伝わる」 そんなことは間違いである。分かりきったことでも、言葉にして伝えるべきなのだ ということ

素直に欲しいものを欲しいといわなければならない ということ


私の心の中には今でも彼が存在する。

そしてこれからもずっと愛し続けるのだ。


それでいいのかと人は言う。

それでいいんだよ。

だって私は今こんなにも素直に人を愛せるんだもん。


彼は永遠に私の心の中に存在していく。


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