Chieko

bluemoon

Chieko

あなたの元から去らなければいけない日が刻々と近づいてきている・・ 
お互いに素直になれず喧嘩ばかりしているけれど、 
本当は寂しくてどうしていいのか分からないんだって分かってる。 

10代の頃から水商売、昔はやくざの女 
そんな彼女が親父と知り合って兄貴とあたしを身ごもった。 
あたしが10代の頃も水商売、ほとんどアル中で、帰りはいつも朝だった。 
あなたのゲロの始末もあたしと兄貴でしていたっけ・・ 
トイレが詰まって大変だったことも今では笑い話。 

昔はよく警察にあたしを引き取りにきてくれたね。 
万引きしたときも「誰でも一回はあること」なんていいながら悲しげな顔をしてたっけ。 
学校にも毎回呼ばれていつも頭下げてたね。 
「お宅のお子さんはうちの娘に悪影響です」って誰かの母ちゃんに言われてたときも, 
「すみません」って頭下げてたっけ。 

いまじゃあ、酒もタバコもやめて、困った人を放って置けなくて、人のために走り回って・・ 
ずいぶん変わったね。 
親父とまた一緒にやっていきたいってその願いが叶うことをあたしは本当に心から願っているよ。 

今までたくさんあなたに迷惑をかけて、何度も心を踏みにじってきてしまったけれど、 
そんな娘でも見捨てずにいてくれてありがとう。 
あの頃、あなたが泣いてる姿を見てあたしは優しい言葉ひとつかけてあげることができなかった・・ 
本当にごめんね。 

あなたほどあたしの心の奥底を知っている人はほかにいないこともあなた自身知ってるはず。 
声を上げて泣くときもあなたの前でだけ、腹を立ててあたり散らすのもあなたの前でだけ。 
それほどにあたしはあなたに寄りかかってる。 
あなたに何かあったらと想像するだけであたしは怖くなって泣いてしまうよ。 

日本をたつ日のことは今は考えないでおこう。 
考えると泣いてしまうから・・ 
愛してると何回言っても伝えきれないことに焦ってるよ、あたし。 

彼女の幸せはあたしの幸せ。 
あたしの幸せは彼女の幸せ。 

あたしがいなくなっても老け込むなよ。 


残り少ない彼女との時間を大切にしたい。 
そして彼女の娘として生まれてきたことを幸福に思い、 
彼女が母親であることを誇りに思うことを最後の日に伝えられるかな・・


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