デート

dbluemoon

デート

さっき、親父と会ってきた。 
何年ぶりだろうか。 

待ち合わせ場所に親父はすでに立っていた・・・ 
「おす」とあたし 
「なんだおめえ・・・ずいぶん痩せたな」と親父。 

そして親父はあたしのこともお構いなしにもの凄いスピードで歩き出した。 

「相変わらずあんたの勝手は変わってないね・・ 
 人の歩調に合わせることを知りやしねえ・・」 

とあたしは心の中で毒づいた。 

親父行きつけと思われる(店主が親父に挨拶をしてた)大人な雰囲気のバーに行き 
あたしと親父は2時間半飲んで食べて話をした。 

母親のこと・兄貴のこと・あたしのこれからのこと・親父が経営する会社のこと・そして色々。 

親父が家を出て行ってから13年たったらしい。 
13年間の間であたしが親父に会ったのは今日で4回目らしい・・・親父がそう言っていた。 

親父の頭は白髪になっていたが、まあ、小奇麗な感じだった。 
親父いわく「俺は社長だからな・・金もあるし、もてるし、身なりはきちんとしないとな」と。 

親父に会う前からあたしは少しだけ緊張していた。 
男に会うのですら緊張なんてしたことのないあたしだが 
親父に会うことに対して、少しだけ緊張感を覚え勇気がいるのだ・・ 

バーの席に座った瞬間から酒を飲みまくりのあたし。 
(実は親父に会う前からすでに酒を飲んでいた。しらふで親父に会えないからな・・) 
飲んでなきゃやってらんね~って。 
親父も相当飲んでいたなあ。 

色々な話をした。 
きっと周りから見たら援助交際してる二人として映っただろうと思う。 

本当は家族全員で会う予定だったのが、親父が拒否したことにより「さし」で会うことになったのだ。 

何を話したのか今じゃあよく覚えていないが、 
彼がいったこの一言は今でも鮮明に覚えている。 

「自立しろ。尽くすんじゃなくてサポートする女になれ。あと10年もすればお前だって醜くなるだろ。その時に男が女を感じる女であるか、 
母親的な存在になってるのか・・そうであればいいんじゃねえか。一番悲しいのは醜くいくせに男にぶら下がることしかできなくて、尽くすことしか能がない女だ。」と。 

千恵子は親父と復縁することを望んでいるが、 
それはとても難しいことであるとあたしは感じた。 

「13年のブランクがあって、どうやってまた一緒に生活できる?10年?もう他人だよ」 
そういう親父に千恵子のことを色々話をしたがあいつの頑固な心には響かなかった気がする・・ 

親父は自分が築き上げた会社と自分が誰にも頼らず今まで生きてきたこと、 
そしてこの先年老いても汚くない自分自身でいることをあたしに話していた。 

それを聞きながらあたしは 
「こんな親父だけど・・あたしは彼を愛してるんだ」と思った。 

あたしの性格は親父譲りであるとみんなが口をそろえて言う。 

あいつを憎んだときもあった。 
あいつとは他人であると思っていたときもあった。 
そして今でもそう口にする。 

けれどあたしはあいつと血を分け合った親子であることを今日再認識し、それでよかったのだと思う。 

きっと両親が復縁することも、家族全員で飯を食べることもこの先ないだろう。 

昔からうちの家族はばらばらだった。 
そういう運命だからか? 
全員がB型だからか? 
それはわからないが・・・ 

「ばらばらだからこそみんな強いんじゃないか?」と親父が言った。 

親父との会話の中で何十回と出てきたこの言葉 
「自立」 

あたしもあいつには負けられないと思った。 
ちょっとハードルは高いが 
あの親父を超えてやりたいと痛感した。 
(本来これは息子が感じるんじゃないか??) 

酔いが回ってきてあたしも親父もなんだか面倒くさくなってきたので(酔うと全てが面倒になる性格も同じだった・・笑)さっさと店を出た。 

そしてあたしたちは 
「じゃあな」 
といって別れた。 

ただそれだけ。 

本当に久しぶりに会ったのに、 
「おう」と挨拶して 
「じゃあな」とお別れ。 

そんなあたしと親父はやっぱり普通でないのかもしれない・・・ 

その後、あたしの心は急に寂しくなった・・ 
そして思わず男友達に電話をかけて会う気が起きてしまったが、 
彼は仕事だった。 

その後も誰かに電話して遊ばなきゃ・・という気持ちになったが 
やっぱり止めて家に帰ることにした。 

親父とあった後は誰かに会いたくなる。 
それはあたしの心が弱るから。 

けれど、ここで馬鹿なことをしてはいけないと良心があたしに呼びかけた。 
だからあたしは今ここでこうしてこの日記を書いている。 


結婚の資金だといって親父はあたしに60万くれた。 
ありがとう。 

2時間半であたしは60万を稼いだわけだ。 
なんておいしい仕事だろう。 

あたしの心は今すこし弱っている。 
けれど、明日になればいつもと変わらないあたしに戻るだろう。 

まあ、感傷的になる日があったっていい。 

親父との関係はずっとこんな形であり続けるだろう。 
ばらばらでも何かでつながってるような気がした。 
それがどんな風につながっているのかは今ではまだわからないけれど。 

親父、あんたも元気で頑張れよ。 
これで会うのも最後だねなんてお互い言ったけれど、 
またいつか会えるって信じてるよ。


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