君の幸を乞う ダイジェスト版


古くからこの地に住まう種族はエルフや龍のほかに、海底に住まうマーメイドや、地中深くに連なる洞窟をすみかとするドワーフなどがいた。
その中で尤も大きく世界に影響を及ぼしているのは、白く大きな翼を持ち、大空を自由に飛び交う天使だった。
御伽噺では、優しく全ての者に平等を与える神の使いとされていたが、この世界で天使といえば
全ての者に平等に死を与える存在でもあった。



雨が街に降り注いでいる。
人通りの少ない街に、小さな声が響く、猫の鳴き声にも聞こえるその声がなぜか
はっきりと赤子の声だと認識できた。街を歩くのは自分一人で。
他の者は家で静かに雨が上がるのを待っている。
多分、赤子の声は雨の音にかき消されているのだろう。誰も、その声に気付いた様子がなかった。



「お前の名前はハロルド・・・ハロルド・ガルバーニだよ」
金色の髪に青い瞳。誰もが異端視するその存在。
「天使なんて育てられるのか?」
「分からないけど、やってみるしかないだろ。拾った以上。拾った人間の責任がある」
恐れ、恐怖、苦しみ。
各々の中にうごめく感情。やり場のない心のはけ口。
「馬鹿」
どんあさげすみの言葉でもよかった、貴方がそこにいてくれるなら。



「ハロルド=ガルバーニです。以後お見知りおきを、貴方の世話をする者ですから」
女の子のような体格にやはりそれに近い表情。金色の長い髪が風邪になびいている。
「信じられん」
「ドクターストップ。怪我による出血と過労によりしばらくはベッドで生活。言ったでしょう?無理はするものではないと」
意識を失ったエルフを抱きかかえわずかにため息が漏れる。



「どうして、………どうして大人しくいさせてはくれないの。僕はただ静かに生活したいだけなのに」
白い羽を握り締め床にしゃがみ込む。ただ、静かに暮らしていたいと思うのに、誰も彼もそれを許してはくれない。いつだって道は一つしかないと無言で言われているようだった。



「返して、私のかわいいあの子を返して…………奪わないで」
侠気にかられ自分を見失う。
何もできない者と、何もしない者。心は遠く離れて存在を忘れてしまう。
「これは私我侭、贖罪の刻を待っているのは私なのだよ」
一人、眠れる妻に懺悔する者。いったいなにを懺悔しているというのか。そして、それは何に懺悔しているのか。



「すみません、でも………僕のことを分かっていても家族と読んでくれる人たちを今は失いたくないのです」
血のつながりよりも、たった一つの絆を信じて。



「お前は味方だよな?」
「あなたがそう思っている限りは」
誰が敵か味方か、そんなものは実際どうでもよかった。
それでもそこにこだわりを持つとするならば自分はきっと適になるだろう。
地上の生き物にとって天使が敵であるならば自分は彼らにとっては敵でしかない。



「…………Game Overかな?」
 ハルが立ち上がり目線をドゥカからはずすとそこには金色の髪を持ち、ボロボロの羽を広げる天使の姿があった。






本編へ・・・。


【TOP】 【Novel】





© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: