海洋冒険小説の家

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(11)万を超す人が毬技場に・・

   (11)
 毬技場外南側の左に赤、右に白の吹流しが空高く風にはためいている。その下は林になっていて、強い日差しをさえぎる絶好の日陰を作っていた。赤、白それぞれのチームの馬の群れが旗の下、手綱を柵にくくられて、それぞれ二十頭ばかり、少し興奮気味に体を動かしている。次郎丸はなんだか琵琶法師の謡う平氏と源氏の源平の戦の様子を目の当たりにするようで、胸がドキドキした。
       ◇
 助左衛門たちは床几に腰掛け、輪になって作戦会議中だった。しばらくして、それぞれの役割分担を決めて会議を終えた。
とにかく、みなが皆、先手(さきて、サッカーで言えば、ストライカー)の攻撃陣になりたがり、中備え(ミッドフィルダー)や後備え(あと備え、ディフェンス)の守りに回るのを、いやがるのだ。
 相手の毬門(注1)目指して杉の木で出来た径三寸の赤、白、黄に塗り分けられた毬子(たま、きゅうしとも)を打ち込むのは、なんともいえない程気持ちのいいものだし、決めれば、全毬技場から拍手と喝采があびせかけられ、いちやく英雄になれるのだ。
 だからこそポジションでもめるのだが、結局は助左衛門の独断と偏見で決まることになる。他に、実力と実績でぬきんでているものはいないし、結局は誰かが決定しなければならないのだから。とにかく、五回勝負の先に三勝した方の勝ちだから、最低三回は勝負できる。
 それで、一応、五回までやると仮定し、先手と中備え、後備えの守りを毎回入れ替えすることで、公平を期すことにした。
 今日の相手は京の公家たちだ。若い者でかためている。名前が、烏丸に今出川とか、四辻に五辻、四条、五条など、聞いているとなにかひ弱そうな感じがするが、戦国の世で鍛えられた彼らは、上品な顔のしたの肉体は筋骨たくましく、乗馬にすぐれ、弓、槍、に剣の使い手でもあった。
 応仁の乱以後、盗賊のはびこる京の町で、一族と財産を自らの力で守りぬいてきたのだ。地方の所領のほとんどを失って、今は堺の商人の交易業に投資して財をなしてきた。
 堺の町衆にとっては、スポンサーでもあり、パートナーでもあった。

 というわけで、公家衆対堺町衆の試合が十数年前から始まったというわけだ。毎年開かれるわけではないが、ここ数年は毎年開かれている。この試合のときは身分を忘れて双方が一緒になって応援合戦をし、肩をたたきあって健闘を誓い合うという和気あいあいの一日になるのだ。昨年は堺の商人チームが助左衛門たちの活躍で、からくも勝ちを収めて、公家チームを悔しがらせた。
 今回は去年の雪辱を果たすために燃えに燃えて、公家衆は堺に乗り込んできたのだった。
               (続く)
[注1=きゅうもん、ゴールのこと]



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