海洋冒険小説の家

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(2)安土城に信長を狙う曲者が・・・

     (2)

 六兵衛が叫んだと同時に、
 「ワウッ」
 斬られたようなくぐもった声が聞こえた。それが、二つ三つ聞こえた。六兵衛は大きな裁ち鋏を二本ひっつかんで、飛んでゆき、影に投げつけた。影は引き返してきて、白い粉を投げつけた。助左衛門はぱっと身をかわしてよけたが、あたりは一瞬白くなり、北側の縁のあたりで、「ふっ」と、かき消すように姿が消えた。後には、信長を守って倒れた、三人の侍が血まみれの姿で残された。信長の殿で残された。信長の殿の怒気を含んだ下知が次々にとぶのが聞こえた。
 六兵衛が戻ってきて、
 「すばしっこい奴らや。鋏は二つとも、影の足にあたったから、動きは鈍くなったはずや。しかし、どこから現れて、どこへきえてんやろ?」
 使いの者がやってきて、二人を信長の前に連れて行った。
 「わしの城のなかで、醜態をみせてしもうた。ゆるせ。なにか、曲者の姿をみたか?」
 「影が三つ。六兵衛が、とっさに、棒と鋏をなげもうした。たしかに鋏は影に当たったようでござります」
 「それで、その影は何処に?」
 「それが、闇のなかに消えましてござります。不思議なことにござります」
 「蘭丸、影の消えた所を探せ」
 小姓衆が提灯や蝋燭を掲げて調べ始めた。血痕が、広縁に点々とついていて、曲がり角でぷっつり消えていた。ここから一番近い階段は、西王母の間の縁から四重め(三階)に上がる階段か、下に下りる階段である。全階にくまなく捜索隊が組織されて調べたが、なにも発見できなかった。助左衛門は、ファッションショーの準備にきて、この三重めの秘密に初めて気がついたのだが、会談があちこちについているのだ。東側だけではない。それも、小さな、隠すようについている。

 「九右衛門はおらぬか、それに竹(長谷河竹千世)と久太郎(堀久太郎)はどこじゃ?。五郎左衛門(丹羽長秀)!」
 安土の三奉行に安土城惣普請奉行を呼びつけた。
 「いかなる訳じゃ。これは。忍者(しのび)どもがやすやすとこの城の中を歩き廻っておる。傷を負っている者ですら見つけられぬとは、何故なのじゃ?」
 「はーっ」
 ただ、「はーっ」、と言うだけで何がどうなっているのか誰も説明できないのだった。とっさの事でもあり、事が起きて間もない。分かる訳がなかった。それに竹千代も久太郎もまだ二十代の若い奉行なので、とっさのことに対処しきれないようだった。菅屋九衛門が、
 「よくよく調べた上で、お知らせ申し上げ候につき、しばらくお待ちくだされたく願い上げ候」
 一同を代表する形でやっと返事をした。
 「うむ」
 信長も他に言い様がなかった。

 再度、捜索隊が出されて、隅から隅まで調べられたが、結局何も分からなかった。信長の眉間に青筋が立つのが、助左衛門の所からも見えた。これはなんとかしなければ、なんだか、こちらにも火の粉が降りかかりそうだ。
 「上様、いい智恵がござります」
 助左衛門が声をかけた。
                  (続く)






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