海洋冒険小説の家

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(6)安土宗論の勃発

     (6)

 二十五日の夕方、油屋の仁助が、南海屋に走りこみ、助左衛門の顔を見るなり、かすれた、精一杯の大声で叫んだ。
 「助左衛門、えらいことになったでぇー」
 「なんやねん、落ち着いて話せ」
 店の中でぜいぜい息を切らせて、苦しそうにしている。
 「水でも飲ませてやって」
 瀧が店の者に言うのが聞こえた。
 「奥の座敷で聞こうか、奥にいくで」
 瀧に眼で合図した。瀧も眼で返した。
 仁助を奥の六畳の間に連れて行き、瀧が水のはいった椀と菓子を盆に載せてすぐ顔を出した。仁助は水を一気に飲み干した。
 「それで?」
 「さっき、京の兄貴から使いが来て、安土の奉行衆より今日の早朝呼び出しが来たゆうて、巳の刻(午前十時ごろ)に、安土に出かけたゆうのや。それも、京の法華宗の本山全部に呼び出しがかかったらしい。なんや、いやな胸騒ぎがするゆうて、弟のわしちこに知らせてきた。なんか知ってることないか」
 油屋の仁助の兄は、京都の法華宗・頂妙寺の前住持・日光(注1)である。歳は五十少し前の、精悍な顔をした精力あふれる人である。堺には妙国寺を建て、後援者も多く、いる、京の法華宗のなかでも、指導的な役割を果たしている人である。
                     (続く)
[注1=にっこうのこうは、王偏に光、作字が間に合わないので「光」で間に合わせています]



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